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脳科学と哲学の出会い 脳・生命・心 みんなのレビュー
- 中山 剛史 (編著), 坂上 雅道 (編著)
- 税込価格:4,400円(40pt)
- 出版社:玉川大学出版部
- 発行年月:2008.2
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紙の本
出会って間もないよそよそしさがまだ感じられる。
2009/07/07 16:42
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
玉川大学の「全人的人間科学プログラム」というプロジェクト(2002より)の成果をまとめたもの。脳・生命・心といったテーマを、脳神経の研究者、哲学者、心理学者などが共同で取り組む姿勢を示したプロジェクトであったようである。
全体の印象は、意識や心を扱う文系・理系双方の人たちが「合コン」を企画して集まったはいいが、まだギクシャクしている、というところであろうか。幹事さんはある程度「やる気」はあるのだけれど、参加者はまだ相手の様子がわからないのでよそよそしい。わからないので、とりあえず自己紹介(自分の研究紹介)をするだけの文章、あんまり期待してませんが参加だけしました、と言うような文章もある。この出会い、親密な会話にはまだまだ程遠い状態に思われた。
それぞれの研究成果紹介は10ページ程度。最後に対談が掲載されている。
研究成果紹介の文章は、科学的な成果、哲学的な視点、宗教など広範・多彩であるが、ある程度専門知識がないとけっこう難しい。理系、文系双方がお互いにとって難しいのではないだろうか。専門の違う相手に理解をしてもらうのならもう少し平易な文章であってもよいのでは?と思う文章が多かった。
(一応理系であろうと思うのでそう感じるだけかもしれないが)フッサールは、ハイデガーは、と提案者の個人名で話が進むのが哲学系文章には多い。いまだ「定説」になっていない部分の話だからそうなるのか、そういう個人的な違いをあくまでも尊重するからなのか。そのあたりが「普遍」を扱う理系には理解が苦手な部分ではないかな、などと感じた。逆に理系の「科学論文的」文章は文章で、特殊でわかりにくいところもあるだろう。この本の限りでは数式は出てこないが、まずはお互いどこら辺が理解の妨げになっているのか、から感想を言い合ってみてもいいのかもしれない。
前書きにもあるとおり、現状や、集まった研究者たちが何を考えているかは、最終章の対談を読むのがわかりやすいと思う。
どちらかというと、「脳で説明できるところまではしてみましょう」という理系側は、文系側に「どうですか」と仲良くしたいのだが、文系の側は「お互いをまず知らなくてはいけませんね」と、よく言って慎重、「人文的な全体の見方まではできないでしょう」と冷ややかなところもあるようだ。
文系の発言の中に「物的世界に還元されてしまうと、人文的な語り方、知のあり方を否定することになってくる。」「人文学的な知のあり方は経験の全体像を描こうとする、それは決して消去できない」というようなのがあるのは、少々残念な感をもった。こんなことぐらいで否定されるようなものしかないのですか、逆に理系の出した結果をもっと高所から「これが足りない」とか「こういう見方もできる、必要」と導く発言をすればよいのではないですか、と言いたくなった。
脳の機能の解明が進み、「意識」「自己」「自由」などと言った領域の認識が変わっていくことはもう確実だろう。しかし、「心が大事」「自由が大事」と考えてきたのが人間であるのも事実である。そのように考えて進んできたことの意味はなくならない。新しい知識を手にした人間がこれからそれをどう扱って「生きていくか」、哲学の分野の方々に、そのあたりをしっかりとつなぎなおして行かなくてはいけないのだと思う。
対談の中でも出てきたのだが、新しい知識が出てくると必ず予想外の影響が危惧されるのは、それこそ地動説からはじめ、進化論や核融合、分子生物学などで繰り返されてきたことでもある。技術の進歩、メディアの変化もあり、「知」が先行して巷で一人歩きする危険性は以前にも増しているのは確かだろう。まだ始まったばかりのこの「合コン」、是非上手くいって欲しいもの、である。
いや、「上手くいって欲しい」と思うことから私はすでに「理系サイド」にいる、ということか?
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