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クアトロ・ラガッツィ 天正少年使節と世界帝国 下 みんなのレビュー

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みんなのレビュー39件

みんなの評価4.5

評価内訳

  • 星 5 (24件)
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39 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

美術史家が残した、美術史の領分を超えた、けれど彼女にとって書かなければならなかった本

2009/05/16 21:40

8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:本を読むひと - この投稿者のレビュー一覧を見る

 この本を読了し、もう一度プロローグ(もちろん本文庫上巻)を読み返すと、そのなかの《私はずいぶん旅をしてきた。でもこれでほんとうに私がやりたかったこと、知りたかったことが書けた。》という言葉を、著者の心から出たものだと実感する。
 ここには、ある歴史が描かれているが、その筆致は通常の歴史書から遠い。というより普通の歴史書は、著者がここまで歴史上の人物に入り込んだり、その世界を生きたりはしない。そのため、ここまで読むものに、ある時空間にひたらせ、さまざまなことを考えさせることをしない。
 ひるがえって歴史上の人物を描く物語や小説は、読むものをそのなかに引き込み、生きさせるが、どこかそこには嘘くささがつきまとい、後でなんとなく騙されているように思ったりする。作家の空想につきあわされただけという気持ちでげんなりすることも多い。
 『クアトロ・ラガッツィ』は無味乾燥な歴史書でもなければ、荒唐無稽な物語でもない。そこには歴史上の実在した人物が多数登場し、歴史の壮大なパノラマが繰り広げられるが、著者は時の権力者たちの描写に片寄りがちの叙述を否定し、考えられるかぎりの資料をもとに埋もれた人々の生と死にその視線を届かせようとする。
 私はこれを読みながら、半世紀近い昔、高校に入ってすぐ、図書館に並べられた山岡荘八の『徳川家康』を次々と読んでいたことを思い出した。
 その内容をあらためて確認したいとも思わないが、そこに描かれている時空間が、『クアトロ・ラガッツィ』のそれとほぼ同じであることは見当がつく。当然、信長や秀吉、そしてキリシタンのことにもふれられていたろう。
 その記憶の、なんとなくの恥ずかしさには、やがてすぐに「卒業」したとしても当時サラリーマンに人気のあったという『徳川家康』を読んだことだけでなく、そんな本が図書館にあったことも含まれる。そこは工業高校だった。
 確か若桑みどりは戦後間もないころ、美術の勉強などに熱心な都立高校に通っていた。そして芸大に入り、20代なかばにイタリアに留学することは、この本のプロローグに書かれている。
 彼女は最初にシスティナ礼拝堂に行ったとき、ミケランジェロの天井画に圧倒され、床に横たわってずっと眺めていたということだが(これもどこかで読んだ)、先日テレビで放映されたヴァチカンの観光客の賑わいでは、それどころではないなと思った。
 行こうと思えばお金の許すかぎりだが、今ではどこにでも行くことができる。けれど床に横たわってミケランジェロの天井画をいつまでも眺めることはできそうにない。
 さて「プロローグ」には、留学のためヨーロッパに向かった船に蓮實重彦などが同乗していたことが記されている。
 若桑みどりと蓮實重彦を単純に比較すると、後者には、『クアトロ・ラガッツィ』のごとき剛速球的な本がないことに気づく。やはり彼自身の言葉を使えば、何か「照れ」のようなものが、こうした徹底した本を彼に書かせないのかと、ふと思う。
 著作家としての若桑みどりの強さの一つは女性であることだろう。大著『象徴としての女性像』はフェミニズムから見た壮大で精緻な美術史といえるが、著者が女性でなければ叶わなかったろう。これは『クアトロ・ラガッツィ』のプロローグに描かれた、自分と同じアジアの「女性」黄青霞とのエピソードが指し示すものの総決算である。私はかつてこの本を読んで圧倒されたことを告白しておく。
 ところが『クアトロ・ラガッツィ』は、その『象徴としての女性像』さえもが著者にとっては馴れた美術史の世界の仕事に過ぎないと思わせる。
 私が今までこの本を読まなかったのは美術との関連が薄いと思ったからだが、著者にとって専門である美術史の領分を超えた世界を描かざるをえなかった必然的な契機というものが、この本のそこかしこから感じとれた。
 この本はその骨格において、西洋美術を研究する私とは何か、という自身の根本の問題に真正面から向き合って、揺るがない。多くの著者たちが、そのような各々の根本問題に向き合うことがないまま、あるいは向き合ったとしても解決などできないまま著作活動を終結させているだろうことを思えば、若桑みどりはこの仕事の過程と達成において、非常な充実感を味わえただろうと推量せざるをえない。
 迫害されるキリシタンの描写など、残された資料の言葉はきれいごとに過ぎないのでは、と思ったりもしたが、著者は原典の引用に不用意な現代的な注釈をつけずに、読むものの想像力にゆだねる。また必要と思われるところでは、率直すぎるほどに著者の肉声をのぞかせて、歴史書の味気なさを救う。そのバランスが悪くない。
 異国の壮麗さを実見した「四人の少年(クアトロ・ラガッツィ)」のその後にふれた巻末、「棄教 ミゲル」の最後のセンテンスを読んで、不意に目頭が熱くなった。自在に書いているようでいて透徹しているなあ、と感心しながら。

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紙の本

歴史+α

2020/06/28 20:21

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ちぃ - この投稿者のレビュー一覧を見る

上巻の最後の方でようやく出航した天正遣欧少年使節団。彼らの欧州での生活や活動が大きく取り上げられるのが下巻と思って読み始めたのだけれど、その期待は下巻の早い段階で彼らが帰国してしまうことで裏切られる。
それでも、その裏切られた思いはしっかり充足させられてしまうのが、この大作のすごいところ。宣教師たちが時の権力者(信長、秀頼、家康)に如何に対するかという外の問題に加えて、衰退の道を辿り始めたスペインやポルトガルからの宣教師とイタリア宣教師との確執という内の問題。楠木建は自身の専門である「戦略」という切り口で本書を読んだそうだが、それに限らず、この大作が多彩な切り口で楽しめることは間違いない。
『カトリック布教史から見た日本』とでも題したい下巻の終盤は、少年たちに寄せる著者の母性とも言える思い入れが徐々に熱を帯びてきて、その熱さについつい押されてしまう。この熱さも読みどころのひとつであり、本書を単なる歴史書で終わらせていない要因でもある。

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紙の本

興味深い

2019/12/04 20:16

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る

天正少年使節というのはかなり面白い題材だと思うのですが、少年達のその後など初めて読みました。とても興味深く読みました。

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紙の本

きちんとまとまった少年使節の本としてはこれが現状ベスト。

2013/09/09 17:16

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:わびすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る

しかし中浦ジュリアン以外は日本にたどり着けなかったり、棄教したりと最後は意外と残酷な結末。著者はそれを淡々と過不足無く描いてくれていて好感をもてます。

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2009/09/29 23:11

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2005/09/10 00:22

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2010/09/25 22:49

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2011/03/02 09:20

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2012/04/22 12:18

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2012/03/26 04:46

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2012/06/17 11:43

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2012/12/01 23:38

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2013/02/14 23:08

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2013/03/08 18:44

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2013/08/11 18:03

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