紙の本
心眼と克己のルネサンス
2010/10/30 19:32
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kc1027 - この投稿者のレビュー一覧を見る
巻末の対談が秀逸なこの文庫本には、問いが満ちている。
タイトルからして魅力的なこの書は、ルネサンスとは自らの生き方を
疑ってみることから始まることを鮮やかに提示してくれる。
蒙が啓かれる感覚というのは、こういう書物を読むことによって
鍛えられるのであって、『ルネサンスとは何であったのか』という問いは、
まさにルネサンスを生むための源泉でもあり得る。
ではなぜルネサンスを問うのか?
それは、中世キリスト教的価値観に行き詰ったヨーロッパ人と
近代西欧的価値観に行き詰った現代人は似たような状況にあり、
中世ヨーロッパ人が古代ローマ時代に立ち返ろうとしたように、
現代人も近代の入り口であるルネサンス期に立ち返るのはごくごく
自然なことだと著書は語る。至極合理的で、スマートだ。
ルネサンスの本質は、見たい、知りたい、理解したいという人間の
精神運動の爆発であって、様々な造形美術が花開いたのは「創作する」
という行為が理解への一番の近道であったから。更に言えば、
理解というのは、ものごとを「心眼」で見通し、惰性でものごとを
済まそうという己に打ち勝つ「克己」によってこそ獲得できるもの。
この何とも日本的とも言うべきルネサンス論は、塩野七生氏が
ルネサンスとその起源である古代ローマに関しての創作を通して
深く長く考え続け表現し続けたから書くことが出来たもので、
もしこれから新たなルネサンスが花開くのだとすれば、日本では
その体現者として塩野氏自身が歴史に残ることになるのだと思う。
人が生きられる最上の人生のようなものがあるならば、
自由な精神が爆発するような生涯がその1つではないかと思うが、
果たして日本にはかつてそんな自由な精神が爆発するような時代は
あったのだろうか? もしないとすれば、わたしたちのこれからは
世界をもっともっと知ろうとする精神の在り方に、かかっている。
投稿元:
レビューを見る
フィレンツェに始まり、ローマを経て、ヴェネツィアへと、舞台を移しつつ、自由について考える文章。
そしてルネサンスは歴史的事象と考えるよりも心のあり方ととらえる、著者の自由さこそルネサンスらしい。
文庫のために加えられた対談で、80年代、90年代と日本の歴史学会から無視され続けたことが明かされている。今でも日本のいろんな学会が排他的で、ある分野のあるテーマは某先生の専門とみんなでたこつぼを作っているように思う。そんなことでは本当に知るべきものには至らないと思う。
投稿元:
レビューを見る
42
ハードカバーでは読んだことがあったんけど
文庫でも読もうと買いました。
どこから切ってもおもしろい一冊
投稿元:
レビューを見る
塩野七生さんの文章はやばい!!!!
まず、文体が豪奢。ローマやルネサンスといった、古代・中世の歴史を扱うにふさわしい重さと華やかさがある。
それでいて、一文一文が短く、簡潔で明瞭。だから非常に読みやすいし、読感がカラッとして爽やか。毅然とした強さも感じる。
また、何より魅力的なのは、作家のどこか挑発的な眼差しだ。読者は日本人のわけだが、「イタリアっていうのはこんなすごい所なのよ。カエサルもチェーザレ・ボルジアもこんなすごい男たちなのよ。(それに比べて、日本も日本の男たちも、なんとまあ、ちっちゃなこと!おほほほほ〜)」というメッセージというか、隠しきれない本音が暗に(時に明確に)滲み出ていると思う。特にエッセイでは。
相変わらず物事を「なあなあ」で済ませるのが好きな日本で暮している日本の政界人や財界人は、だから、塩野さんの刺激的な挑発に参ってしまうのだろう。塩野さんすごいっ!!
で、この「ルネサンスとは何であったのか」ですが、ぶっちゃけまだ読み終わってません。だって、いま国1の勉強で忙しいんだもん。早く腰を落ちつけて塩野ワールドを堪能したいです。
投稿元:
レビューを見る
言葉としては日本人なら誰でも知っている「ルネッサンス」。ではそれは一体何だったのか?を問答形式できちんと論考していく本です。
塩野七生氏の本は初めて読みましたが、透徹した視点と深い理解が感じられました。
投稿元:
レビューを見る
塩野七生の本は初めて読みました。芸術とか歴史について小難しく書いてあるんじゃないかと敬遠してきたけど、友人に進められて読んでみたらイメージとは全然違いました! この本で知った様々な芸術家や時代の背景をもとに作品を見てみたいなぁ ためになった上に楽しく読めた久々のヒット本でした☆
投稿元:
レビューを見る
ルネサンスがいかに奇跡に満ち溢れた時代だったか、なぜそのような状況が現れたのかを問答方式で分かりやすく述べています。ほんと、すごかったんだなあ、と。
投稿元:
レビューを見る
時代が行き詰ったとき、人は古代を振り返る。古代ギリシャ・ローマを振り返ったルネサンスしかり、実権を天皇に戻した明治維新しかり。では、現代はいつに立ち戻ればよいのだろう?
投稿元:
レビューを見る
2008/09/01
イタリアに行くからには,ちょっとは知っておかないと.
宗教が幅を大きく効かせている時代ですね.
投稿元:
レビューを見る
繰り返し読んでますが、全く飽きません。もうこれは魔力としか(笑)
とびとびに多分全部読んだはずが、飛び飛びなんで、また読み返してはの繰り返し。
イタリアの歴史が大好きな人にはゼッタイお勧め。
ヴェネツィア、フィレンツェ好きな人なら見逃せないですよね。
投稿元:
レビューを見る
タイトル通りルネサンスとは何であったのかを対話篇形式で解き明かしていく。
舞台はルネサンスの発生したフィレンツェから始まり、ルネサンス最後の引き受け手であるヴェネツィアで終わる。
塩野七生が好きなら読んで損は無い内容だと言える。
投稿元:
レビューを見る
引用
「創造すると行為が理解の本道である。ダンテも考えているだけでは不十分で、それを口であろうとペンであろうと画質であろうとノミであろうと、表現して初めて知識ないし理解になる」
「人間ならば誰しも現実の全てがみえるわけではない。多くの人は見たいと欲する現実しか見ていない」 ユリウス・カエサル
「強烈な批判精神は強烈な好奇心と表裏の関係にある」
「人間は個性が強いほどその人の好みがはっきりと出る」
内容
理系のボクでも楽しく読めた。ルネサンスの入門書としてはいいかと。次はもう少しダークな視点からルネサンスの歴史と背景を見てみたいな
投稿元:
レビューを見る
エッセーに近いかも。
毎度のことながら、視点が独特。12世紀ルネサンスは知っていたが、聖フランチェスコを起点の一つとするのは、何というか著者らしい。
対話形式は好みが分かれるところ。個人的には合わなかった。内容が良いだけに残念。
(2009/7/1読了)
投稿元:
レビューを見る
16世紀宗教革命、17世紀科学革命に続くルネサンスに生きた人たちを肌で感じる。
ある時代に支配的であった考えがそうでなくなる時期にはどのようなことを考える人が多いのかナドナド、
平易な日本語で書いてあって、非常に読みやすく勉強になる。
投稿元:
レビューを見る
この人の本は「チェーザレ・ボルシア」に続き二冊目だが、塩野七生は天才だと思った。
司馬遼太郎にしろこの人にしろ、歴史をこれだけ面白く、好奇心を擽りながら伝えることが出来るというのは本当に偉大だ。
聖フランチェスコやフリードリッヒ二世、コシモ・ディ・メディチ・・・時代の変わり目に活躍した人々の生き様を、この人の著作からもっともっと知りたいと思った。