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「新編日本古典文学全集」の前身である「日本古典文学全集」をもとに、軽装版として編まれたのが「完訳 日本の古典」で、『枕草子』は上下二巻で収録されていた。これらはすべて小学館から出されている。
その「完訳 日本の古典『枕草子』」ベースにして、一巻にまとめて再刊したものが、笠間書院刊の『枕草子―能因本 (原文&現代語訳シリーズ)』。「日本古典文学全集『枕草子』」の後継版ともいえる。いま出版されている『枕草子』の多くは「三巻本」を底本にしているので、学習院大学蔵「能因本」を底本とするこの本は貴重な存在といえる。
内容は、『枕草子』の本文と注釈を本の前半ページに置き、後半には現代語訳、解説、参考資料として年表・関係系図・校訂付記・三巻本系統諸本逸文・栞(月報より)などが付いている。ソフトカバーの本としては、充実した作りだといえる。
これで値段がもう少し安ければありがたいのだが、版元が代わっているのと需要の点から考えれば、けっして高いとは言えないのかもしれない。版を改めずに新刊として売り出す国文学系の出版社もある中で、良書を出し続けておられる笠間書院さんの本でもあるし、やはり適正な価格なのだろう。