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ドキュメンタリーかと思わせるような細かな描写で埋め尽くされた頁。ガウスとフンボルトという哲学的に相容れそうに無い立ち位置の二人の巨人を巡る物語。その隠された歴史を想像するという、いわゆる歴史小説として読んでもこの本は面白いのかも知れない。しかし、科学信仰を表明する者として否応なしに感じてしまうのは、ガウスやフンボルトの語る言葉の重みだろう。そして同時に天才というものについても、また、思いが巡る。
もちろんガウスのような天才の頭脳の中でどんな思いが生起していたかなど、恐らく誰にも理解できないであろうが、例えばモーツァルトの独白を音楽に精通した者が思い描くのと単なる音楽好きが想像する際にに生じるような違いから受ける感慨が、その想像を通して伝わってくる。ケールマンのこの小説からは、科学に対する、更に突き詰めれば真理に対する様々な思いが、二人の巨人の言葉として満ちている。
老いた二人の出会いから始まるこの空想科学小説は、時と場所を移しながら二人の人生のスケッチを描いていく。その実、真に描かれているのは二人の歴史的事実様のエピソードではなく、ケールマンの科学信仰に対するクレドのようなもの、あるいは事実(事実はあくまで事実であって真理ではない)に向き合う態度である。矮小化されてしまうことを承知で言うならば、真理への不到達、と、にも係わらず積み重ねていく努力、というようなことなのかも知れないと思う。ガウスの天才性を辛うじて感じることのできる教育的背景を持つ者にとって、あるいは科学や技術という領域に生きる者にとって、二人の巨人の心中で変化していく自分自身に対する未来予測そしてその予測に対する確信度の変化は、余りにも生々しく響くのである。
断片的に進行する二人の人生はやがて物語の出発点であった時点に至り、それを越え、やがて二人が自分自身の人生に対してなす術を持てなくなる時へと向かっていく。そこで、語られる天才達の言葉。凡人から見れば遥かに真理の間際にまで近づけたであろうと思う二人にも、自分の今いる場所から真理へ至る道のりが依然として永遠とも思えるほどの距離である、という現実。そのことに思いが至ると、凡人たる読者は冷水を浴びせ掛けられたかのような思いをするのみなのである。
この事実に向き合う態度、そして執拗に注ぎ込まれるディテール。あるいはゼーバルトの小説を彷彿とさせるものがケールマンのこの小説には、ある。これは独逸的知性とでも呼べばよいようなものなのだろうか。正規分布に魅せられてしまった経験を記憶として持つモノにとって、この小説はまさに科学の書である。
それにしても、フンボルトの成した類の仕事を生業としつつ、心の奥底ではガウスの成した数学に憧れを抱く自分にとって、フンボルトに訪れた悲哀の方がより身に迫ってしまうのは、仕方の無いことと知りつつ、身震いのする思いである。
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二人の偏執狂的な偉人の姿に大笑い。フンボルトの制服好きやガウスの空気読まなさ加減、二人に共通する正確さに対するこだわりの強さや高慢でかつ自信たっぷりなところなど、ドイツ人だなーと思う。極端に似ている点と違う点がある。一人は世界中を旅をし、一人は引きこもり。交渉上手と交渉ベタ。女嫌いと女好き。なんて似ていて、違う二人なんだろう。
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タイトルに惹かれて読みましたが正解でした(*´艸`)
ものすごく面白かった! という本ではなかったけれど、世界にハマって読めました。幸せ~~(*´∀`)
数学者、物理学者、天文学者のガウスと探検家、博物学者、地理学者のフンボルト、二人の人物の伝記でした。
読む前は、どっちも名前聞いたことあるかも? フンボルトはペンギンだよね! くらいの知識しかなかったんですが、二人とも偉大な人物でした。
頑固で、変わりもので、こんな人近くにいたら苦労するだろうなー、という・・・w
そんなわけで、ガウスの息子であるオイゲンやフンボルトのパートナーだったボンプランに同情してみたり。
その他の人物もそれぞれ個性的にどっしりした存在感があって、特にフンボルト兄には強い魅力がありました(怖いんだけど・・・)。
ガウスが気球に乗って星を観測する場面やフンボルトとボンプランが命がけで当時最高峰と考えられていた山に登って幻に悩まされつつ測量を行う場面は特に神秘的な感じでドキドキしました。
こうやって人類は知識を創造してきたんだなーというか。
この本は、二人の人生が交互に語られながら進んで行くのですが、一カ所、フンボルトとガウスが間違って表記されていてそれがちょっとだけ残念でしたー(第10章「首都」 提督が投石からガウスを・・・っていう部分) 。誤植かな。
・・・・・・こういうのが気になっちゃうのって神経質だと思うけどw
以下は、作中にあったフォルスターの言葉。なんかカッコイイ。
旅行をしたがる者もいる。そして、その誰もが後悔するのだよ。
なぜですか?
けっして戻って来れないからだ。
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異なる世界を旅するガウスとフンボルト。そしてタイトルの「世界の測量」
新しい発見に希望があった時代、と言われるとそうなのかもしれないが、きっと新しさというものにも新しさが訪れてるんだろう。
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二人の晩年を描いている部分に、はかなさを感じずにはいられなかった。いつの時代も新しい発見というものはより新しい発見により色褪せてしまう。年老いていくとともに、若い時にはできていたことができなくなってしまうことへのもどかしさが募る。いつまでも天才でいることを望む周囲とのギャップ。天才と呼ばれる人の中に普通の人が垣間見えた気がする。
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割と楽しく読めた。
フンボルトとガウスの物語が
各章で交互に展開していき、
最後に交錯し合っていく。
両者はどちらも
世界の真実を知ろうとしていたが、
方法が全く対照的であった。
フンボルトはガウスを
「あの哀れな人物は全く世界を見聞したことがないのだ」
と思っていたし、
ガウスは
「わざわざジャングルの中で悪戦苦闘しなくても、
真実を知ることはできるのだ」
と考えていた。
それでも二人には何かしら通ずるものがあった。
それは、
世界の真理への信念と情熱と探究心である。
彼らが生きた時代は、
未知なる世界に挑む人間の知性を信じて疑わぬ時代だったのだ。
しかし科学の進歩とともに、
様々な問題を抱え込んでいる今、
私たちは無条件に肯定してきた、
人間の知性や文明を考え直さざるをえない時代にいる。
改めて、「世界の測量」が何を意味していたのか、
考えなくてはならないと感じた。
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強い意志を持つものが、歴史に名を残す。
そして彼等の個性も激しく強い。
いち測量士として、伊能忠敬と並んで、ルーツとして尊敬、特にフンボルト。
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第1章 旅
第2章 海
第3章 教師
第4章 洞窟
第5章 数
第6章 河
第7章 星
第8章 山
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文学・ドイツ・小説 NDC943
推薦理由:
18~19世紀という時代に大きな業績を挙げた数学者ガウスと地理学者フンボルトの波乱万丈の生涯を描く小説である。知の探究に生涯をかけた二人の人生とその時代背景が大変興味深い。
内容の紹介、感想など:
これは、数学者・天文学者・物理学者であるカール・フリードリヒ・ガウスと地理学者・博物学者・探検家であるアレクサンダー・フォン・フンボルトという、18~19世紀に偉業を成し遂げた二人のドイツ人の生きざまを描いた小説である。本書に数式は出てこず、もちろん測量技術の教科書ではない。
この作品は、既に名声を挙げていた二人がベルリンの会議で出会う場面から始まるが、次の章からは、ガウスとフンボルトそれぞれの幼年期からの生涯を1章ずつ交互に描いていく。貧しい生まれのガウスの人生と、貴族の家に生まれ経済的に恵まれていたフンボルトの人生は無関係に思えるが、「知への欲望」と「世界を理解したいという願望」を抱き、世界の測量に取り組んだという共通点により、二人の人生に接点ができる。しかし、何事もよく思考し、高度な数式を駆使して答えを出す頭脳派ガウスと、とにかく自分の足で歩き回り、現場で観測し、標本を収集し、毒物までも自分の体で試してみる行動派フンボルトでは知の探究に対する姿勢が全く違い、そのことでやりあう場面も面白い。この作品は二人の波乱に満ちた生涯を描いた冒険小説であり、彼らの言葉は往々にして哲学的である。虚実織り交ぜながら描かれ、交錯する二人の人生の物語には、思わず引き込まれ、一気に読んでしまう面白さがある。本書は、ドイツで130週以上にわたりベストセラー・リストに載り、45か国で翻訳出版されるという国際的に人気を得た小説である。後世に名を残す偉業を遂げた二人の非凡な生涯と、意外に人間的な側面を楽しめる一冊である。
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ドイツでベストセラーというのがとってもよくわかる 面白い本でした。どこまでホントでどこから嘘なのか ドキドキしますね。
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[ 内容 ]
知の歴史に偉大な足跡を残した天才、ガウスとフンボルトを主人公とした哲学的冒険小説。
[ 目次 ]
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
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フンボルトの業績が分かりやすかった以外は、なぜドイツでベストセラーになったのか理解できなかった。グローバルに活躍したフンボルトを偉大と感じたためであろうか。
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小説で、こんなに読み返したのは初めてかもしれない。
主人公をガウスとフンボルトの二人とし、交互に話が進んでいくが、とりあえず二人とも行動が破天荒で、読んでいて飽きない。
冒頭ガウスが馬車の中で退屈し、息子のオイゲンから寄越された本を読み、こいつは頭がおかしいと、一言感想を言って馬車の外に投げ捨てる場面は、訳者の翻訳のうまさもあってか、一気に世界に引き込まれる。
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冒頭、傲慢かつガサツなガウスの口の悪さに一気に引き込まれてしまったけど、フンボルトパートが地味過ぎる〜。探究心溢れる偉大な学者なのは分かるけど。。。むしろチラ見せされる、フンボルト兄との確執が興味深かった。
全体的なノリは、ユルスナールの「黒の過程」だけど、残念ながらガウスとフンボルトの二人掛かりでも、ゼノンの半分も魅力的でない。
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丸善静岡店で平積みされているのを見かけて。十九世紀冒険ものであるが、それなら私はやっぱりヴェルヌのほうが好き。こちらは現実に忠実な分だけ夢を感じさせる部分が薄いのかも。