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紙の本
仇討ちが縁の始まり
2010/09/28 17:42
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る
ほんとうにいけすかない野郎だよ、
市川金之丞っていうお侍はさ、
碁将棋指南から鉢植えまで内職にしているのはいいとして、
賭け碁で暮らしてる浪人に値の高い橘の鉢を貸して、
浪人が碁に勝った後で、貸した金をめぐっていさかいになって相手を斬っちまった。
そこまでは相手もまあお互い様だろうさ。
だけど、斬った相手の血を浴びた橘の白い実が赤く染まって変化したと売り出して、
そのうえ、殺した相手の娘にまで、おとっつぁんには二十両の借金がある、身売りするかそれとも、
野郎の妾になって返せ、と来た日にゃ、とんだ鬼畜生だとあきれたもんだ。
斬られた浪人の娘は、しほっていう名の、白酒で有名な豊島屋の看板娘、十六だよ。
おっかさんはとっくに亡くなっていて、おとっつぁんも亡くなって、とうとうひとりで暮らし始めた、けなげな娘なのさ。
しほちゃんをあんないけすかない野郎の妾だとか、女郎にするなんざ、とんでもない、ってんで、
むじな長屋で育った三人、
金座裏の親分の手先の亮吉、
船宿綱定の船頭の彦四郎、
日本橋の呉服屋松坂屋の手代政次が、
知恵を絞った。
いやさ、知恵を絞って図面を描いたのは、小さいときから目から鼻に抜ける利口者だった政次だ。
「こいつは殺しじゃねえ、ご公儀も認める仇討ちだ。ただ、お役所に届けないだけのことだ」
政次の指図で、
なりはでかいが気が小さくて泣き虫で、だけど泳ぎと舟と川のことなら何でも知っている彦四郎と、
なりが小さくて気軽尻軽の亮吉とが、
しほの仇の周りをかぎまわり、はしこく立ち回って、罠に嵌める。
政次の手助けで止めを刺した、しほ。
この話がもし瓦版に載れば、江戸っ子はやんやの大喝采さ。
だけど、政次はもう松坂屋に戻れまい、亮吉も手先をやめねばなるまい。
「それが世間ってもんだ!」
と叱りつける、金座裏の親分、宗五郎。
若い連中の詰めの甘いところは、宗五郎親分の手下がうまく後始末をつけてくれた。
だけど、政次たちの罠のとばっちりで、やくざの子分がひとり、死んでいる。
しほも、親の仇とはいえ、人、一人を、手にかけている。
おまえたちはその痛みを背負ってこれから生きていくんだ。
と、宗五郎親分。
親分の情と厳しさとに、泣き出す、しほ、亮吉、彦四郎。
政次だけは、歯を食い縛って泣かなかった。
これが、話の始まり。
ここから先、宗五郎親分と、政次、しほ、亮吉、彦四郎たちは、切っても切れない縁が、どんどん、深まっていく。
大きなお店の主人になりたい、と心に決めて、飾り職人の父親の後を継がないで松坂屋の奉公人になった政次。
呉服屋の最年少の手代となり、いずれは、大番頭になり、暖簾分けもあるだろうと、松坂屋の主人からも認められていた。
だが、政次は、ただの呉服屋になるにしては、あまりにも頭が切れすぎる、度胸がありすぎる、
しかも、意外とからだの動きも水際立って、刀を振るう侍を相手にしても、ひるまない。
十代続いた金座裏の親分夫婦には、こどもがない。後継ぎがいない。
政次を養子にしたら……という考えが、親分の頭にひらめいた。
親分の女房おみつは、手先どもむさくるしい男ばっかりが寝起きしている所帯で、
うちにもしほのようなかわいい娘がいたらいいのに、と思っている。
政次は、そんなことも知らず、ときには、そっと、しほに、簪を贈ったり、
しほも、亮吉とも彦四郎とも仲が良いが、こと、政次のこととなると、むきになったり。
親の仇討ちがきっかけで、人には言えない秘密が、金座裏の親分との間にできてしまった、政次としほ。
ふたりの人生は、これから、どう、動くのか?
むじな長屋で育った三人組の友情は、これからもあらゆる事件を解決するたびに深まっていくようだ。
そして、まだまだ働き盛り、男盛りの宗五郎親分の、さすがの知恵あり腕あり度胸ありの、胸のすく江戸っ子気質の大活躍。
鎌倉河岸には、豊島屋の主人清蔵や、船宿綱定のおかみおふじなど、いきな人々が行き交い、そして、四季折々のできごとも風情があって、政次、亮吉、彦四郎、しほたち四人の成長を、ゆっくりと見守って行くのが楽しみである。
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