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切羽へ みんなのレビュー

139(2008上半期)直木賞 受賞作品

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みんなのレビュー151件

みんなの評価3.1

評価内訳

149 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

切羽へ行った、おんな。

2008/08/19 23:41

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ばー - この投稿者のレビュー一覧を見る

 分からない、と私は思った。

 第139回直木賞受賞の今作、『切羽へ』は、ある島での男女の恋愛を描いた作品。ちなみに、ご存知かとも思われるが、作者井上荒野は、同じく小説家である井上光晴の娘。

 東京に近い島で、学校の養護教諭として務めているセイは、夫で画家の陽介と静かで幸福な毎日を送っている。そんなある日、本土、東京から新任教師の石和が島にやって来る。夫がありながら、徐々に石和を気になる存在として認め始めるセイ。失っていく時間、失っていく日々、そして、失っていく人たち。ゆれる心と、喪失を描いた一作。

 恋愛小説、と私は書いた。だが、私にとって、どうしてもこの作品が恋愛小説には思えない。小説の帯には恋愛小説と書かれているし、小説の流れからしても、恋愛小説と呼んでしまった方が適切なのかもしれない。だが、この小説の中の静謐な感情(のようなもの)の流れを恋愛と呼ぶには、余りにも脆すぎるように私は感じる。そもそもこの本の中で描かれる、セイの女としての心の揺らぎは恋愛と呼べるものだろうか。

 もしかしたらこれが大人の恋愛と呼ぶものなんでしょうか?だとしたら私のような若僧にとっては、とってもムズカシイ。分からない。

 この小説を分かる為にも(分かるために読む、というのもなんだか違う気がちょっぴりするが、まあとにかく)、他の点から迫ってみようと思う。

 それは、「別れ」という「喪失」だ。

 『切羽へ』で重点が置かれているのは、恋愛のような人と人との触れ合いではなく、むしろ人との別れの方であると私は感じる。
 卒業生との別れ、島を離れる人との別れ、しずかおばあさんとの別れ、「本土さん」との別れ、そして、石和との別れ。
 このような直接的な別れの他にも、間接的な別れ、つまりは、月江との仲違い、夫との心のすれ違い、など、様々な別れが描かれている。
 物語全体は、「石和」という一本の道の上に、これらの様々な別れが次々と挟み込まれている構成である。とても静かで抽象的だ。そして、その中心に立つセイは、常に深い喪失感に囚われている。
 両親はなく、生まれ故郷の島にも半分「よそもの」として関わるセイ。夫との生活を「サナトリウム」と例えた彼女の心境には、常に定まらなく、それでいて、どこか生温かい奇妙な安心感があったのだろう。
 彼女にとって、完全によそ者である石和との交感は、そんなあやふやな状態を切り裂く風のようなものであったのではないのか。石和と出会ってからセイは、段々と夫とのすれ違いを重ねるようになる。それ以前は、夫との間に何の不安もないように書かれていたのに、いきなり調子が変わる。直接的な描写は無いにも関わらず、以前から夫に対して不満を持っていたように私たちを作者は誘導している。私たちは、石和という風の出現によって、ちょっとしたいびつさ、奇形さを、それまでのセイと夫との生活の中に見てしまう。
 切羽、つまり「それ以上先へは進めない場所」に彼女は迷い込んだのではない。誘われたのでもない。彼女本人が進んで行ったのだと思う。様々な別れを体感しながらも、それ以上先を目指すこと、切羽を目指すことで、母がかつて見つけたように、セイもマリア像に変わるものを見つけたかったのだろう。これは決意だろうか。それだとしたら、何に対しての決意だろうか。
 
 幾つもの別れ、そして石和との交感を経た後の彼女が授かった一つの命は、切羽まで行った女の証明でもあり、そう考えると、この小説はますます恋愛小説ではなく、ある種の成長譚、はたまた女の変身譚なのではないか、と、ぼんやりと私は思った。

 

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紙の本

島の暮らし。

2010/11/25 06:07

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:オレンジマリー - この投稿者のレビュー一覧を見る

 第139回直木賞受賞作。これまで読んだ、直木賞受賞作は興味深く、面白かったので本書を友人が貸してくれると言って差し出してきた時にはすごく嬉しく、またわくわくしました。一体、どんなストーリーなのだろう、初めて触れる作家さんだな、といった感じに心が弾んでいました。
 まず始めに、島の雰囲気、暮らし、景色、方言、郷土料理などが細かく表現されていて驚きました。特殊な魚の呼び名、料理名には当然馴染みも無く、読んでいるうちになんとなく南国の、九州辺りの島ではないかなと思ったりもして。従兄弟が話す方言に似通うところもあったからかもしれない。
 本書の帯に書かれていた文章には、切羽の意味がこめられていました。『「切羽」とはそれ以上先へは進めない場所。宿命の出会いに揺れる女と男を、緻密に描ききった哀感溢れる恋愛小説』とあります。だから、恋愛小説なんだ、久しぶりだなという思いもあったし、そのつもりでページを捲っていくと、主人公の女性は既婚なので、まさか不倫の話なのかなと思いました。
 どちらかというと、宿命の出会いに揺れる女と男という表現はそぐわない気がした。というか、どの二人?という疑問も湧いてきたほどです。それくらいそっけなく、ちょこちょこと主人公の親しい女友達のちょっかいがあり、物語は終幕へと向かっていったので面食らった。何かを遠まわしに、言わんとしているのか分からないけれども、何も構えずに書籍と向き合う私には理解できなかった。少なくとも、これまで恋愛小説と定義されてきた書籍とは違うカテゴリーに属しているようでもある。
 馴染みが全く無い小島の雰囲気や郷土料理の表現には拍手を送りたい気持ちです。けれど、ストーリー的には曖昧だったので星は3つです。もっと、ストーリーに合ったキャッチコピーを考えた方が一般の読書家さんたちには馴染むだろうし、期待も裏切らないと率直に思いました。

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紙の本

大人の恋愛小説、なのかな・・・

2008/08/31 12:08

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:なこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

文学賞受賞作品だからって、万人ウケするものではないんですよね。
そのあたりを失念して本の帯に惹かれて買ってしまったけれど、
正直私には消化不良。。。帯の文句が良くも悪くも作為的な気がする。
どろどろ不倫・純愛ものか?!と思って手にとる人もいるだろうし、逆に
そういうのは・・・と敬遠する人には違うの?!じゃあ、と今度は手に
とるようになるってことがありそう。

いえ、読んでいて文章の流れはとても心地良いもので、すらすらと
読み進んでしまい、作家の技術というものに感嘆させられました。
主人公セイの友人・月江と愛人の「本土さん」や、セイが世話する
老女・しずかさんが死の直前に見る夢といった描き方が生々しくて、
セイの抑制された感情との対比が見事になされていたと思います。
セイとセイがどうしようもなく惹かれてしまう新任教師・石和以外
の部分は淡々としていながらも、それなりに読み応えがありましたよ。

でも帯にあるように惹かれ合う二人というわりに、あまりにも
あっさりしたせいか、セイが石和のことを気になっているのは
わかるけど、石和はどう思ってるんだ?というのが最後まで
私には伝わってこなかった・・・。石和って一体どういう人間なのかが
謎のまま。まあ読者の解釈にゆだねるってことなんですね。

作者は理由もなく惹かれることがあるっていうのを描きたかった
みたいですが、私にはあまりにも石和の人物像が輪郭すら感じられ
なかったので、この二人の恋愛というものに共感できなくて残念。
謎解きのエッセンスと思われるものがちりばめられながら、それは
そこだけで終わっていて特に後につながるようなものではなく・・・。
私の読み方が、こうなるのかな?こうなってほしいというエンタメ的な
ものを求める姿勢だから消化不良だったんでしょう。私には同じ直木賞
でも、村山由佳さんの「星々の船」みたいに渾身の力で書き上げました!
という力強さとボリュームを明確に感じられる作品が好みです。
そう、結局自分にとっていい小説って、自分の今現在の心の状態と
リンクするとか、作家さんの価値観に共感してしまうという好みで
決まってくるところがありますよねぇ。

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2008/07/08 11:35

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2008/07/26 06:44

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2008/07/26 18:22

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2008/07/27 15:30

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2008/08/03 20:39

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2008/08/07 15:56

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2008/08/06 13:57

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2008/08/09 00:11

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2008/08/09 20:00

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2008/08/16 09:59

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