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紙の本

そそっかしくて可笑しくて、それでいて哀しいお話。

2010/10/12 21:49

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る

『ひげのある男たち』に続く著者の初期を代表するシリーズ第二弾。

初出は1960年――今からちょうど半世紀前。2008年に創元推理文庫から刊行された本書は既に絶版となっている模様。おそらく創元社で版を重ねることは一度もなかったのだろう。

『ひげのある男たち』のユーモラスな雰囲気がとても気に入って本書も手にとってみた。同じく創元推理文庫から刊行されている第三弾の『仲のいい死体』も購入しようとしたのだけれど、こちらは手に入らず終いだった。いい意味で昭和のかほりのするシリーズなので、またどこかの出版社から復刊されることを切に願う。

今回も『ひげのある男たち』に負けず劣らずユーモラスな仕上がりとなっている。が、哀しいお話であった。しかし、かといって涙が出るほど悲しいというわけではない。

本書の締めくくりに次の一文がある。


 そそっかしいために殺された被害者、そそっかしいためにふたりの男を殺し、そそっかしいために自殺した犯人、こうして長い長い眠りについた三人、そしてそそっかしいために捜査を誤った刑事たち、事件はこのように終わったが、生きている者のそそっかしさは直りそうもない。


そう。殺人事件の原因は「そそっかしさ」だった。それがとても哀しい。何か一つ、どこかで確認作業をしていれば事件は起こらなかったのだ。

この「そそっかしさ」は実に人間らしいとも言える。そしてその「人間らしさ」が哀しいのだ。

あぁやっぱりいいな、このテイスト。ほんと、どこかの出版社が復刊してくれないかしらん??ていうか、版があるんだからもう一度くらい重版してくれればいいのに…創元社さん、と思わずにいられない。

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2009/01/29 20:46

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2013/03/02 16:50

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2023/09/25 20:55

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