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議論好きなインド人 対話と異端の歴史が紡ぐ多文化世界 みんなのレビュー
- アマルティア・セン (著), 佐藤 宏 (訳), 粟屋 利江 (訳)
- 税込価格:4,180円(38pt)
- 出版社:明石書店
- 発行年月:2008.7
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紙の本
知的刺激にあふれた一冊
2009/10/23 01:43
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MESSY - この投稿者のレビュー一覧を見る
偶然です。明石書店さんから出ている本を2冊続けて紹介することになったのは。私は決して明石書店さんの回し者ではありません。
「日ごろの乱読で触れ合った書物のうち、特に他の人にも読んでもらいたいと感じたのを取り上げる」のがここでの私の基本的な方針で、例外として「ごく稀にこれだけは読まない方が得だと感じた本についても、警告を込めて取り上げる」ことにしています。
この前者の方の方針に、本当にたまたま明石書店さんの本が2冊、連続ではまってしまったのです。まあ、前回が12年前に出たミャンマーに関する本で、今回は昨年出たインドに関する本なので、南アジアへの関心の高まりの反映ではあるのですが・・・
さて、本書はアジア人で初めてノーベル経済学賞を受賞したセン博士による、一般向けの読み物です。訳者の解説によれば、インド史の専門家からは「薄っぺら」で「皮相」な書物だとの手厳しい批判も出ているそうですが、門外漢の私にとっては実に知的刺激にあふれた一冊でした。読み進むうちに、次のような意欲と思いが湧いてくるのです。
1)インド史をもっと学びたい
2)タゴールの詩集を読まなきゃ
3)カーリダーサも読みたい
4)サタジット・レイの映画はどうしたら観れるのか?学生のときはあん なに機会があったのに、見逃したのが悔やまれる
5)ラーマーヤナ読んでねー(本棚にあるのに!)
6)マハーバーラタ読みたい
7)イスラムの歴史をちゃんと学ばないと
8)やっぱりロールズ読まんといかんか・・・・・
要するに、著者が惜しげもなく披露する知的蓄積に圧倒されかかっているわけですが、それにしても読者をこれほどやる気にさせる本は少ない。早速手元にあったロールズの「公正としての正義 再説」を読み返しています(ただ、こっちは難しすぎて思うようにいきせんが)。
もっとも、この本の最もすばらしいところは別にあります。それは著者の真摯な姿勢、人生にも社会にも世界にも正面から向き合い、少しでもよりよい状況への改善を目指す姿勢を感じ取れることにあります。対話、あるいは対話を基礎とする自由と民主主義への熱い共感、その裏返しであるヒンズー至上主義への静かな闘志、こういった点こそ私が本書に五つ星をつけた最大の理由です。著者はノーベル経済学賞をとったことできわめて有名になりましたが、先ごろ亡くなった加藤周一の石川淳の芥川賞受賞に関する言い回しを借りるなら「セン博士にとっての名誉というよりノーベル経済学賞にとっての名誉」だと思いました(特にマンデルとショールズの受賞や最近の金融危機でこの賞の評価下がっただけに)。
長くなったので、最後に本書の中の大好きな一節を引用して終わります。
「沈黙は社会正義の強力な敵である」
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