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わたしを離さないで

わたしを離さないで みんなのレビュー

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みんなのレビュー720件

みんなの評価4.1

評価内訳

高い評価の役に立ったレビュー

44人中、41人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2008/10/22 03:33

へこたれていたあの時にこそ

投稿者:田川ミメイ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 2006年に出版されたとき、大きな話題を呼んだこの本。そのほとんどが賛辞だったけれど、書評やネットで物語の概要を知るにつれ、あたしはなんだかすっかり怖じ気づいてしまった。ちょうど心身共にへこたれていた頃で、こういう重い内容の本はもっと元気な時に読むべきだろう、と、勝手に決めつけ、それでもこの著者には何かしら惹かれるものがあったので、先に「女たちの遠い夏」を読んでみたりした(この作品もとてもよかった)。が、この夏「わたしを離さないで」が文庫化されたと知り、それを機にようやくこの本を読んだのだった。

 物語は、キャシーという31歳の「介護人」の回想から始まっていく。子ども時代を過ごした「へールシャム」での思い出。そう、この小説のほとんどは、イギリスのヘールシャムの私立学校時代のことに費やされており、キャシー、ルース、トミーという、二人の少女と一人の少年の共に過ごした日々がゆっくりと丁寧に描かれている。

 ごく親しい友人でありながら(だからこそ)、つまらない言い争いをしてみたり、それを修復しようとして相手の機嫌をとったり、自分だけはあなたの味方だということを誇示してみたり。他の人には言えない悩みをひそかに打ち明けたり、胸の中にしまっていた不安をぶちまけてみたり。三人の関係も交わされる感情も、誰にも覚えがあるようなもので、特別驚くようなものではない。小さなエピソードを積み重ねるようにして語られるその部分だけとってみれば、青春小説にも思えるし、宿舎付きの学校という閉鎖的な世界の中で繰り広げられる学園小説のようでもある。

 が、もちろん、それが全てではない。
 冒頭の語りの中に出てくる、「介護人」や「提供者」という言葉。それを読んだときに感じた違和感や疑問に対する答えを、語り手であるキャシーはなかなか明かそうとしない。そのせいで読んでいる間中、隠されている何かの存在を強く感じる。キャシー達の子どもらしい姿に懐かしい痛みを感じ、共感すればするほど、そこに忍びよる大きな影を気にせずにはいられない。

 その影が正体を露わにするのは、物語も終盤になってからだ。とは言え、その遙か前からおおよその察しはついてしまう。彼女たちが生まれながらに背負っているその影は、現実的に考えれば「そんなことがあって良いのか」と憤りを覚えるようなもので、普通なら自暴自棄になってもおかしくない。それなのに当の子どもたちは、意外にもすんなりとその運命を受け入れてしまっている。不思議なのは、読み手であるこちらも、たしかにそういうものかもしれない、と思ってしまうことだ。

 人は親や環境を選んで生まれてくるわけではない。極端なことをいえば、森の中に放りだされた少女が狼を親として育つこともあるように、子どもというのは、生まれたときに置かれた環境を受け入れて育っていく。そこが閉ざされた世界の中であるならよけいに、そこでの常識に従うしかない。自分の身を守るためにも。

「へールシャム」の「先生」達は、ここが特別な「閉ざされた世界」であること、「外の世界」はこことは少し違うということを、少しずつ、それとなく子ども達に伝えていく。さりげなく行なわれるその「教育」のおかげで、生徒達はいつのまにか自分が特異な存在であることを自覚するようになる。まるで知らない単語をひとつ覚えるのと同じように、自然に受け入れていく。小説には、その部分が緻密に根気よく描かれている。そのせいで、当然感じるはずの憤りがうやむやになってく。子ども達と共に馴され、憤るよりもその先に待つものばかりが気になって、やがては、彼女達の人生を「見届けたい」とさえ思うようになる。

 もしかしたら、これは実話を元に書かれた小説なのだろうか。読みながら何度かそう思った。そんな訳はないし、そんなことがあってはならないと思うのだが、でもここに描かれているのは、今の時代、そしてこれから先、きっと人類が直面するであろう問題でもある。が、著者はそんな警告ばかりを訴えているわけではない。この本は、ある定めの元に生まれた子どもたちの人生を、キャシーという女性の目を通して描いた静かな小説である。何を思い、何を感じとるかは、ひとえに読み手に委ねられている。

 生まれたときから、最終地点を決められている人生。だからといってキャシーは、全てを諦めて放りだしたりはしない。どんな人生であっても、そこには友がいて愛があり歓びもある。自分なりの自分らしい人生を生きていける。読み終えたとき、胸の中に浮かんでいたのは、背筋をまっすぐに伸ばして歩いていくキャシーの後ろ姿だった。この小説を、元気な時じゃないと読めそうにない、と、脇にどけてしまったことを残念に思う。へこたれていたあの時にこそ、静かで強いキャシーに出会うべきだったのかもしれない。



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http://mimei.info/

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低い評価の役に立ったレビュー

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2016/02/03 12:21

設定に無理がありすぎて…

投稿者:Otto - この投稿者のレビュー一覧を見る

日系米国作家カズオ・イシグロ氏の代表作で大変評判の良い
作品だそうですが、あまりにも設定に無理があって、作品世界
に入れませんでした。

臓器移植のためのクローン人間を公に育成することがまかり
通る世界観にはあまりにも無理があります。しかもクローン
人間には生殖能力がない、というご都合主義の非科学的な
設定まであります。

時代設定も遠い未来ならまだしも音楽媒体にカセットテープが
使われているような近未来とも現在ともつかぬ時制の中での
物語ですから余計現実味がありません。

このようなノイズが気になってしまったので、作品が本当に訴え
たかったであろうことまでは辿り着けませんでした。

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720 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

あとを引く読後感

2015/02/01 16:46

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ぶろっこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

この『わたしを離さないで』という本は、キャシーという名の女性がヘールシャムという寄宿制の学校で暮らした子供時代を振り返るところから始まる。
一見どこにでもあるようなありふれた子供時代。癇癪持ちの友人、楽しみだった図画工作、隠れて好きな歌を聴いたあのとき。思春期のぎこちない恋。そして、思い出の品を探す旅。セピア色で彩られた彼女の思い出は、限りなく読者をノスタルジアの世界へと誘う。
しかし、これはただ淡々とキャシーの子供時代を綴っていく物語ではない。次第に明らかになる彼女らの運命。読み始めたときには想像だにしなかったその結末に、読者は驚くことになるだろう。何を隠そう、私自身もこの本を読み終わってからしばらく何も考えることができなくなってしまった一人だ。
私が今まで読んだ本のなかで最も心揺さぶられた一冊。

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紙の本

覚えていない幸せ

2015/02/08 21:03

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:豆絞り - この投稿者のレビュー一覧を見る

どうしてこんなに細かく覚えているのだろう。
キャシーの語りを読みながら思った。匂いも感触も、その時の息遣いさえ覚えているかのような細やかな描写。きっと、幸せで楽しかった思い出なのだろうと思った。
でも、途中でその印象は一変する。私が幼いころをキャシーのように覚えていないのは幸せだったからだと気が付く。この幸せがずっと続くものだと信じで疑わなかったからこそ、その一瞬一瞬を覚えておく必要がなかったのだと。
キャシー、トミー、ルースが過ごした時間の中で、変化していく関係も見事に描かれていた。環境が変われば人との関係も変化する。離れたかと思えば、何かの拍子でまた近づいたり、平行線のままの場合もある。それは一つひとつの行動の言葉の態度の積み重ねなのだと教えてくれる。

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紙の本

切なさをこえてこそ

2015/09/04 16:35

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:しろくま - この投稿者のレビュー一覧を見る

作者はこの小説で何を言いたいのか。ひとことで言い表すことは難しいですが、読書中も読後はさらに頭を抱えてしまいました。丁寧な心理描写や極めて慎重に物語を展開している点など、なぜこういう書き方をしたのか。
 なるほど作者自身はあらゆる可能性に触手を伸ばし、物語を紡いだのでしょう。あるいは読者に考えるきっかけを与えたかったのかもしれません(その意味でわたしもしっかり作者のフックにひっかかってしまっていますが…)。しかし、そうであれば、ああいう小説の書き方をすることに戸惑いを感じてしまいます。切ないという気持ちより、何か居心地の悪さ、気持ち悪さを抱えてしまいました。爽やかにすぎる。作品の読み方も含めて、読者に多くの宿題を与えてくれる作品、労作であることに違いはありません。

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紙の本

謎が少しずつ明かされる

2015/10/01 16:58

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:わん - この投稿者のレビュー一覧を見る

主人公が介護人になったときの、「できることはすべてやったという思いがあれば、物事の判断にさほどバランスを欠くことはありません。」という言葉が印象的だった。主人公やトニーが真実を知りたがるのに共感を覚える。p.161「キャシーにはガッツがある。口に出したら必ずやりとおす」

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紙の本

とてもせつないです

2015/09/29 23:43

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:タヌキネコ - この投稿者のレビュー一覧を見る

この物語は「自分の運命は自ら切り開く。何としても!」ということを語りたいのではないのだとわかっていても、感情移入のうえに身をよじってしまいます。悔しくもなります。設定はいささか非現実的と思いますが、「あるシステムとそのくびき」ということでは、実際の日常の中にもひっそりと相似形のものがあるのか?。だからこの物語に感情をゆすぶられるのかとも思います。またそういったこととは関係なく、子供時代の回想がとても生き生きとしていて魅力的です。

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紙の本

せつない

2015/10/13 23:24

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:はみぃ - この投稿者のレビュー一覧を見る

文体の美しさが物語の歪さを引き立てる素晴らしい文章でした。
胸の奥に小さなしこりをまるでつぼみのように残してくれ、自分がいかに全力で生きるのか、深く考える機会を与えてくれる良い本との出会いだったと思います。
大人向けの本に思えますが苦悩を抱える若い世代にこそ読んでほしい。
自分の境遇、自分の成り立ち、自分の役割を再認識するきっかけになるとおもいます。

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紙の本

最高

2015/10/15 20:12

5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ジョン - この投稿者のレビュー一覧を見る

とにかく最高です!

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紙の本

いい作品

2015/11/29 20:42

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kazuo - この投稿者のレビュー一覧を見る

いい作品であることは間違いないのですが、どこがいいのかを説明するのがとても難しい。読んでみてとしかいえない。

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紙の本

衝撃的なSFです

2016/01/06 00:29

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:栗太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る

物語は介護人キャシーが子供時代を過ごしたイギリスのヘールシャムという土地の寄宿学校の海藻から始まる。子供時代、青春時代、青年になってからのありふれた日常瀬克の出来事が主人公により淡々と語られていく。ただし読者がなんとなく気になる「提供者」、「介護人」、「外の世界」という不自然な言葉だ。物語の終盤から一気にその謎が解き明かされていくという展開。これまでに読んだことがない切ないSFです。

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紙の本

設定に無理がありすぎて…

2016/02/03 12:21

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Otto - この投稿者のレビュー一覧を見る

日系米国作家カズオ・イシグロ氏の代表作で大変評判の良い
作品だそうですが、あまりにも設定に無理があって、作品世界
に入れませんでした。

臓器移植のためのクローン人間を公に育成することがまかり
通る世界観にはあまりにも無理があります。しかもクローン
人間には生殖能力がない、というご都合主義の非科学的な
設定まであります。

時代設定も遠い未来ならまだしも音楽媒体にカセットテープが
使われているような近未来とも現在ともつかぬ時制の中での
物語ですから余計現実味がありません。

このようなノイズが気になってしまったので、作品が本当に訴え
たかったであろうことまでは辿り着けませんでした。

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紙の本

哀しい小説です

2016/02/12 15:47

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ME - この投稿者のレビュー一覧を見る

カズオイシグロは初めて読みましたが、その小説のなかでも最も評価が高いと言われています。
当然翻訳もすばらしいと思います。
やさしい、淡々とした語り口のなかにも恐ろしく、哀しい主人公がいます。
定められた自分の運命に逆らうことなく、懸命に生きる主人公を書きたかったのだろうと思いました。ひょっとしたら事実ではないかとさえ、思ってしまうほどの小説です。

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紙の本

あくまでも個人的感想

2016/02/12 18:13

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:papanpa - この投稿者のレビュー一覧を見る

だから怒らないでね。
重いとか、哀しいとかいう以前に、文章がつまらなすぎて・・・。
何とか頑張って 1/3 は読んだけどギブアップ。
私には合わなかった。ごめんなさい。あとは、あなたが読んで判断してね。

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紙の本

切ない 切な過ぎる

2016/02/14 00:49

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:gulliver - この投稿者のレビュー一覧を見る

もし現実に この物語と同様なエピソードが実在していたら? と,想像しただけで涙が溢れ出てしまいました

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紙の本

運命

2016/02/19 01:03

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:プリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る

読み始めはあまりよく分からず読んでいました。読み進めるにつれて作品の中に引き込まれていきました。読み終えたあとの気持ちはどのように表現したらいいか分かりませんが、読みごたえのある作品でした。

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紙の本

暗く切ない物語

2016/02/27 17:48

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yujiyuji - この投稿者のレビュー一覧を見る

衝撃的な内容で、出版当時に読んではいましたが、ドラマが始まると知り、読みなおしました。やはり素晴らしい作品はどんな時代・年齢になって読んでも素晴らしいです。この本の世界観をドラマで表現するには、よほど丁寧に撮影していかないと難しいですね。個人的には原作の方が100倍よかったです。

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