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紙の本
やがて悲しき直木賞
2008/09/02 21:58
15人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぼこにゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
芥川賞・直木賞の発表を聞いても心が躍らなくなった。大仰な設定、思い込みの激しいヒロイックなキャラ、定石通りの筋運びという、デジャヴに満ちたマンガみたいな小説が増え続け、高く評価されるはどうにも辛い。
で、直木賞に人生を狂わされた東野圭吾。久々に読んでみて内容の薄さに改めて驚く。この程度のネタは以前のこの人ならキレよく短編にまとめていたはずなのに、初めて候補になったあたりからやけに通俗的になってしまった。柄にもないメロドラマ路線を迷走したり、同じ型紙から単行本を二冊書いてみたり。
本書は純愛モノと言われているらしいのだけれど、人物造形がディック・ブルーナくらいのシンプルさなんで、この長さで読ませるには難がある。そもそも「無償の愛」なんてとうに死語であって、昨今ではこういう行いはせいぜい「無害なストーカー行為」か「女性の人格を過小視した独善主義」と取られるのが健全な成り行き。せめて男女が逆ならまだ救いようがある気もするんだが。でなきゃいっそ軽くブラックユーモア仕立てにするとかな。あと、ここぞという時ヤニワに号泣するという手で乏しい感情表現の帳尻を合わそうとするのはこの人の癖か?それに多分生まれて初めてだと思うが(恥ずかしながら)、私は読んでる途中でトリックが分かってしまった。なんたる体たらくか。評価として星を三つつけたのは、こうした凡庸さに対する皮肉と受け取って頂きたい。
大体この人は昔から、愛とは一方的な滅私奉公だと考えているフシがあるんだが、このご時世にそういう恋愛のスタイルを世に問うとはあまりにもセンスが古すぎる。実際は度を越した厚意の押し付けなんて今時重いだけだし。ま、今回の場合作者は「愛」ではなく「献身」と呼んでいるのでこれは言いがかりかも知れないが。彼がまだちゃんとした作家だった頃の「魔球」など、情愛方面に関しほぼ最低限の言及しかしていないのだが(単に興味が無かっただけかと思うが)、黙して語らず、という姿勢が一見無機質で独尊主義の登場人物にシブい立体感と奥行きを与えていた。硬く無愛想な殻の内に秘められた真珠のごとき正義、というギャップのあるキャラクターを、あの頃のこの人は憎いほどクールに書いていたものだ。
そもそもトリックは書いても入り組んだ人間関係は描かない(描けない?)、という金属臭の強さが東野圭吾の持ち味なのであって、推理小説の性質上それはたいした欠陥ではなく好ましい潔さですらあったのだ。情に訴えたりキャラ頼みではなくプロットだけで読ませる、という気骨は今や見る影もない。紋切り型の登場人物がスゴロクみたいにてくてく進むだけ。分かりやすい、読みやすい、まあハズレはない。おみくじでいうと小吉。
そりゃ私だって質の高いミステリをコンスタントに書いてくれなどと無茶は言わないつもりだが、これが賞に踊らされた結果なら本当に悲しい。
若者の活字離れが進んでいる、と言われ続けているけれど、私には、本の作り手達こそ重症の活字離れを呈しているように思われてならないのだ。いい作家にはじっくりといい作品を書いて欲しいし、それなりの環境を整えてじっと待つ、というのも編集の仕事なのじゃないか?ジャンクフードみたいな本ばかり量産して土壌を荒らすのはいい加減にしてもらいたい。
紙の本
こんな時代だから、ここまでピュアな愛情があっても良い!とは、思うけど・・・。
2008/10/21 19:44
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
天才的数学者石神が、隣の部屋に引っ越してきた親子の母親、靖子に恋心を抱く。靖子はある日突然やってきた前夫に迫られ、咄嗟に娘と共に殺してしまう。それを知った石神は、天才的頭脳を使ってトリックを組み上げ警察の目を欺くのだが・・・。
直木賞受賞作に加えて映画も大ヒット中という本作品。期待度120%で突入したのだけれど・・・。うーん、まず天才数学者という設定に、何かピンと来ない。天才数学者モノというと、小川洋子さんの「博士の愛した数式」と森博嗣さんの四季シリーズを思い出す。前者は素数などを使って、とかく冷たく感じがちな数字に温かみや可愛らしささえ感じさせてくれたし、四季シリーズは逆にあくまでパズルチックにかっちりとした美しさを感じさせてくれた。だが本作品に、天才数学者の天才数学者たるゆえん、をあまり感じない。唯一それっぽかったのは、靖子の犯行をズバリ言い当てたあたりくらいだろうか。確かに数学の問題らしきものが散見されはするけれど、「リーマン予想の反証を試みる」と言われても素人には良く分からないし、「人に解けない問題を作るのと、それを解くのとではどちらが難しいか」なんて、数学の問題とさえ思えない。それがまたトリックを解くカギになってたりするので、うーんと首を捻ってしまう。
確かにミスディレクション的どんでん返しは見事!と言いたいけれど、途中である矛盾に気がついてしまうと、そこを追求しきれない警察捜査のおかしさが気になってしかたない。また死体の身元をそんな簡単に隠蔽したりうんぬんかんぬん、出来たりはしないと思う。ラストはそれなりに、ある純愛の切ない成就を感じたけれど、とある分岐点から、完全にそのラストが分かってしまったのも残念。
こんな時代だからこそ、こんなピュアな純愛物を投げかけてみるのは悪くないと思うけど、何だか感動もしないしスカっともしないしやられた感も無かった。東野ファンとして、氏の傑作の一つには、数える事は出来ないかなと。
紙の本
もちろん原作ありきだが
2024/02/27 18:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栄本勇人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本のレビューとしてふさわしくないかもしれないが、映画版がより素晴らしい。小説だけ読んでいる人はもったいない。是非観て!
紙の本
人間ドラマ
2023/06/21 19:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みみりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
湯川学が主人公のガリレオシリーズの長編。
探偵ものとしても面白いのですが、
何といっても人間ドラマとして秀逸。
石神の靖子に対する想いと自己犠牲を伴ったアリバイ工作。
そして湯川と石神の友情。
ガリレオシリーズの中でも一番切なくて好き。
紙の本
容疑者Xの献身
2015/09/30 11:10
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投稿者:しらふ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリーというよりも友情・純愛の物語として読みました。石神の不器用さと結末が切なすぎてため息が出てしまいました。