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野球の国のアリス みんなのレビュー

  • 北村 薫 (著)
  • 税込価格:2,20020pt
  • 出版社:講談社
  • 発行年月:2008.8
  • 発送可能日:購入できません

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みんなのレビュー66件

みんなの評価3.6

評価内訳

64 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

ミステリーランド中のベスト作品。特に元歌の使い方が実に上手で、こういうレベルの児童書であれば大歓迎です。出版ペースが落ちたシリーズに喝!

2008/12/20 21:04

9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

理論社のミステリーYA!の快調な出版ペースを見ながら、出だしは派手だったミステリーランドもこの頃はジリ貧だな、なんて思う今日この頃ですが、この本の出版案内を見たときは、正直、狂喜しました。ミステリランド巻末の今後の出版予定者(あれで終わりなんでしょうねえ、全何巻と書いていないのでよく分かりません)の中で最も注目していたのが京極夏彦と北村薫だったのです。

ちょっと脱線ですが、ミステリーランドの第一回配本からだいぶ時間が経ちました。ミステリ業界の中でも新しい才能が芽吹いたりしています。たとえば桜庭一樹は作家として地歩を固めましたし、伊坂幸太郎は今の社会の「監視」というものに着目しながら見事に化けています。西尾維新は快調に作品を書き、舞城王太郎も大作をものしました。こういう人たちをシリーズに取り込むことはしないんでしょうか?

閑話休題。これぞアリス、といいたくなるようなソフトな雰囲気がたまらなく魅力的な装画・挿絵は、謡口早苗、装丁は祖父江慎+安藤智良(cozfish)、シリーズ造本設計は阿部聡、シリーズ企画は宇山日出臣、とあります。装丁とシリーズ造本設計の役割はなんとなくわかりますが、シリーズ企画というのは何でしょう?こんなところに名前が記載される宇山さんは講談社の方?

そういえば誰かの本で読んだ記憶が。と自分のメモを検索すると西澤保彦『ソフトタッチ・オペレーション 神麻嗣子の超能力事件簿』、篠田節子『転生』、小柳粒男『くうそうノンフィク日和』にお名前が。この世界では超有名な編集者だったんですね。今をときめく舞城、西尾、森などもお世話になっている。もしかすれば桜庭一樹だってその可能性がある。

2006年にお亡くなりになったそうですが、ミステリーランドが最後のお仕事だったんでしょうか。というわけで、ミステリーランド14回配本にあたるこの本で著者の北村は巻頭に

献辞
     ――宇山日出臣氏に

と記しています。こんなに多くの人に慕われるなんて、私もお会いしたかった・・・

まず印象は「爽やか」ということ。それと『アリス』をうまく野球に溶け込ませたな、ということでしょうか。そういう意味で、「大変だ、大変だ。遅れちまう、遅れちまうぞっ!」という言葉で、アリスを不思議な世界に導くことになる宇佐木さんが現れる場面は印象的です。

ほかに私がいいな、と思ったのは安西くん。それと兵頭くん。兵頭くんはともかくとして、安西くんのような少年は、話の軸になりにくいのですが、「野球の国」という世界を作ることで彼が別人になる、それで難問を解決しました。ただし、こちらの世界の地味なままの彼をもっと評価しないと、結局は明るいスポーツ少年だけが正しい、みたいなことで終ってしまうと思います。

そういう意味で、私が評価しないのは五堂俊介です。安西くんも兵頭くんも名前が書かれることはないのに、なぜ彼だけが?なんて思います。造形的にも最も平凡。要するにもてる天才スラッガー。このまま高校野球でも騒がれ、増長するという世によくいるタイプ。私が野球を嫌いなのは、こういった男子なんです。彼の存在だけが不快です。

とはいえ、主人公はあくまでアリスです。彼女は12歳、中学に進学することで好きだった野球をやめなければならなくなっています。そこらのことを北村はこう小説の中で書いています。

 女子部員のいる野球部も、中学によってはたまにある。でも、この地区では前例がない。アリスのおかあさんだって、頭から《入れないもの》と決め込んでいる。それが、この辺りの常識なんだ。
 少年野球のコーチに聞いてみたことがある。同じような質問を何度かされていたらしい。コーチはアリスの中学の実情について教えてくれた。
「たてまえとしては入れる。でもこのあたりじゃ前例がないし、更衣室などの準備もない。色々と問題点がある上、技術向上の妨げになる――っていうんだ。」
「要するに、足手まといになるから、来ないでくれってことですか!」
「まあ、そうだな。」

男女平等なんていうのは表向き、実際はこうなんでしょう。私が野球の世界を、軍隊と同じく毛嫌いするのは、その根底にある性差別と非人間性、そして暴力なんですが、それがここにある!です。とはいえ、そういうネガティヴな部分も描きながら、全体として気持ちがいいのは、北村自身にそういう閉ざされた世界に対する反発と、野球に対する深い愛があるからなんでしょう。

内容は出版社の案内で代えるので、最後にすることにして、登場人物紹介。

わたし:語り手で、小説家です。北村の分身というよりはもっとナヨナヨした感じがします。

アリス:主人公で、今は少年野球チーム「ジャガーズ」の頼れるピッチャーです。4月から中学に進学すれば、女性を受け入れるクラブが無くなるため、野球をやめるつもりでいます。

宇佐木さん:三月に少年野球のことを取材に、アリスたちのところにきた新聞記者です。冒頭に「大変だ、大変だ。遅れちまう、遅れちまうぞっ!」という言葉で、アリスを不思議な世界に導くことになるあたり、私はキャロルの話より、ディズニーアニメの一シーンを思い浮かべました。

五堂俊介:アリスと同い年の少年。隣町のロビンスの4番打者で、センターを守り、周囲から天才と呼ばれる。アリスに向かってセクハラ発言をする、私にとっては最もいやな奴。

兵頭君:アリスと同じチームのキャッチャーで、小学校1年のときから彼女の球を受けている頼れる女房役。動じることがなく、寡黙。包容力があり、私なら絶対に彼を恋人にする。本当の大物です。

安西君:アリスと同級生で、読書好きの真面目ないい少年。学校の先生の息子で、アリスとは小学校に上がる前からのつきあい。アリスは彼のことが嫌いじゃない、っていうかちょっと惹かれている。単なるガリ勉ではないところがいい。

最後が出版社のHPの内容紹介。

やるしかない!アリスはそう思ったんだ……。

野球が大好きな少女アリス。彼女は、ただ野球を見て応援するだけではなく、少年野球チーム「ジャガーズ」の頼れるピッチャー、つまりエースだった。桜の花が満開となったある日のこと。半年前、野球の物語を書くために「ジャガーズ」を取材しに来た小説家が、アリスに偶然再会する。アリスは小学校卒業と同時に野球をやめてしまったようだ。しかしアリスは、顔を輝かせながら、不思議な話を語りはじめた。「昨日までわたし、おかしなところで投げていたんですよ。」……。

PS 児童書で造本が一見しっかりしているのですが、堅牢という感じはありません。それで2000円。大人の私だって買うのを躊躇います。1300円くらいでないと、子どもには手が出ないんじゃないでしょうか。

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紙の本

小中学生諸君、心のやわらかいうちにぜひこの本を手にとってみてください。

2008/09/23 18:58

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る


 野球少女のアリスは鏡の向こうへと迷い込む。そこは何もかもが左右逆の世界。そして中学野球にも少女が参加できる世界だった。彼女の学校は全国一の弱小チーム。アリスの参加で全国一の強豪校との試合に臨むことになるのだが…。

 北村薫の新作と聞いただけで迷うことなく手にしましたが、これは小中学生向きに書かれたファンタジー小説でした。すべての漢字にルビが振られ、おそらく小学3年生くらいから十分に楽しめるでしょう。

 北村薫はベッキーさんシリーズ『瑠璃の天』で時代を過去に移しかえつつも現代に対する疑問に直球をぶつける取り組みをしていました。
 この『野球の国のアリス』は、浮世離れした世界を舞台に、やはり同じく現代社会のうさんくささを斬り出そうとしているようです。

 「世の中の仕組みっていうのは、なかなか動かせない。参加を拒否すると、もう社会に対する反逆者扱いです。」(163頁)
 「世の中の流れは大きすぎるから、動き出したら一人でどうにかするのは難しい。」(278頁)

 こうした言葉から浮かび上がるのは、人間が主体的に生きることの大切さと難しさです。傷つくことを恐れるがあまり、他人と意見をたがえることを回避する日々。そこに安寧はあるかもしれないけれど、その安寧の中に本当の自分はいない。そのことを北村はかなり直截な表現で私たちに提示してみせます。

 アリスに投げつけられた誹謗の言葉に五堂が憤りを感じて反論をする場面は、中学生の言動としては成熟しすぎていて、北村の筆は少々書き込みすぎではないかと思わないでもありませんが、振り返ると小説の冒頭に「最近の若い子にはね、悲しい時は悲しい、嬉しい時は嬉しい、と書かないと通じにくいんだよ」(10頁)という言葉がありました。
 このことからも、この小説は最近の若い子のために、親切すぎるくらいに分かりやすく編まれた物語であるということが分かります。

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紙の本

ルイス・キャロル、北村薫のいつもの時間をめぐる話、野球小説、そして子供たちに・・・

2009/01/08 22:04

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yama-a - この投稿者のレビュー一覧を見る

 文中ほとんどの漢字にルビが振ってある──これはそういう本である。つまり、あまり漢字を知らない年代の(あるいは学力の)子供たちを(も)読者として想定している。「近頃の若い奴はダメだ」という主張に対して、「そんなことはない」という立場に立って、そのことを証明するために、まずこの小説を読ませようとしている。読んでもらえないと始まらない。だから親切に読み仮名が振ってあるのである。
 というような作者の"素"の想いが「はじめに」に書いてある。フィクションの冒頭に添えるにはあまりに素面すぎないかと思えるような書きっぷりである。この部分だけエッセイになってしまっている。
 「いつの時代も、人間は人間です。考える力、ものごとの裏にあることを感じる力はそんなに変わらないでしょう。ただ、現代のほうが、おとなが甘くなっている。子供が考える前、感じる前に、答えをさしだしてしまう」(10ページ)などと、この辺りは、総ルビを振ってでも読んでもらおうと思った子供たちにではなく、うっかりその親たちに向かって書いている。で、その後、子供たちに向きなおって「なんだか、わけがわからない、変わった世界のお話です。直球で勝負して来るような物語ではないかもしれません」(12ページ)と書いて「はじめに」を締めている。
 タイトルから明らかなように、これはルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』を踏まえている。残念ながら僕は読んでいないのだが、あまりに有名な作品なので、部分的にはいろいろ知っている。だから、読んでいて、「ああ、この部分はルイス・キャロルのアリスをこんな風にアレンジしたのか」などと気づく部分もある。上記の2作をちゃんと読んでいればもっともっと踏まえたりもじったりしているところが分かって面白いだろうなあと思う。しかし、北村薫は読者が初めからそんなことまで分かるとはとりあえず期待していない。多分、全部読んだ後「なんか似たようなタイトルの外国小説があるらしいけど、関係あるのかな?」と気づいた読者だけが「≪はてな?≫と思って、調べて」(11ページ)くれたらそれで良いと考えているのである。
 とりあえずはこんな話である:野球少女のアリスがある日、時計屋の壁にかかっていた大きな鏡を抜けて「向こう側の世界」に行ってしまう。そこでは自分の知っている人たちが「こちら側」と非常によく似ているけど微妙にずれている環境で暮らしている。基本的に右と左が逆で裏返しの世界なのだが、野球においても負けたチームが残って一番弱いチームを決めるトーナメントがあったりする。選手にとってそんな野球は重荷でしかない。アリスと新聞記者の宇佐木さんが協力して、そんな野球を変えようとする──そんなお話である。
 北村薫という作家は『スキップ』『ターン』『リセット』の3部作を見ても判るように、過ぎ去って行く時間というものに対する哀惜の念と言うか、成長したり老いたりして行く人間に対する愛おしさと言うか、そういうものを書かせると非常に巧い作家である。ここでもそのトーンは全面展開されている。
 そして、この小説は何よりも「野球小説」である。野球に材を得た青春小説などではない。例えば米国で言えばW・P・キンセラの一連の作品や、フィリップ・ロスの『素晴らしいアメリカ野球』、文春文庫の『12人の指名打者』に収められた12編の短編小説などと並べても不相応ではないような、野球に対する愛が溢れた小説である。
 そして、同時にこれは読者に対する愛が溢れた小説でもある。
 野球が好きなら是非読んでみれば良いと思う。胸があったかくなる小説だよ。

by yama-a 賢い言葉のWeb

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紙の本

読み手によって、その時の気持ちによって

2008/09/15 23:37

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:リッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る

北村さんの新刊、講談社の“かつて子どもだったあなたと少年少女のための”ミステリーランド・シリーズからの一冊“Alice’s adventures in the baseball land”。

やっぱり北村さんは良いなぁ。
美しい日本語、ルイス・キャロルに通じるような言葉遊び。
<<ウサギ>>さん、ニヤニヤ笑う<<猫>>、<<大変だ、大変だ!首をちょん切られちまう!>>、ウサギさんとの<<お茶会>>、<<赤の女王様>>などなど、『不思議の国のアリス』や『鏡の国のアリス』からの小道具で楽しませてくれると共に、
子どもたちに、<<はてな>>を感じることができる心(=“ミステリ”の心、ですよね)、より多くの幸せをキャッチするための心を育むような、暗喩に満ちた上質な物語に仕上がっています。
ある人は、“アリスの冒険”を楽しむかもしれない。またある人は、“野球の面白さ”を受け取るかもしれない。はたまた、“友情”を感じるかもしれない。“別れ”かもしれない、“成長”かもしれない、“再会”かもしれない。

読み手によって、その時の気持ちによって、いろんな味わいで楽しめるとても素敵な一冊でした。

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2008/09/01 11:20

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2008/09/08 20:47

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2008/09/29 00:00

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2008/10/12 16:36

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2008/10/25 15:42

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2008/12/31 12:20

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2009/03/23 11:37

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2009/03/05 15:15

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