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タイトルそのままの、とても明快でわかりやすい仏像解説本。
仏像は、背景や名前、役割、伝えようとすることを読みとるのは、ビギナーにとっては結構大変なことですが、簡潔に紹介されているため、覚えやすいです。
国内の50体の有名な仏像が紹介されているのも親切。
どこかで写真を見たことがあるものばかりですが、はっきりとわかっていないと、薄ぼんやりとした印象しか抱けません。
写真のほかに、そっくりの仏像カラーイラストも載せ、見るポイントを紹介しています。
なかなか全身アップの写真はないため、じっくり全体像を見られるし、詳細でポイントを押さえた解説により、仏像に親しみを覚えられます。
東寺の不動明王像は日本最古なんだそうです。
かつて誰も見たことのなかった憤怒の形相は人々に大変な衝撃を与えただろうと書かれていますが、まさにその通りですね。
私も初めて見た時には、鬼か閻魔かと思い、とても如来の別の顔だとは納得できませんでした。
仏像の配置組み合わせも、図とともに説明されていました。
「釈迦三尊像」は、釈迦如来を中央に、右に文殊菩薩・左に普賢菩薩。
「薬師三尊像」は、薬師如来+日光菩薩・月光菩薩。
「阿弥陀三尊像」は、阿弥陀如来+観音菩薩・勢至菩薩。
覚えづらいですが、その主要像がいくつか紹介されていたので、徐々に区別がついてきました。
四天王の多聞天が毘沙門天でもあると知りました。七福神のメンバーにも加わって、ほかの天王よりも大忙しですね。
仏像の解説本は、ほかにも読んできましたが、仏像の作り方が掲載されていたのははじめてでした。
金銅仏は、粘土の芯に蜜ロウをつけて作った原型を粘土で包み、窯で焼いて、解けたロウのところに銅を流し込むとのこと。
手間がかかりますが、出来上がりの見栄えはすばらしいです。
乾漆像は、興福寺展で見ました。手間がかかり、保存も大変そうです。
木の一本造で仏像を彫るのは、憧れを感じます。
現存する日本の仏像の9割以上は木彫像なんだそうです。
戦時中、武器にされた仏像様が、たくさんあったためでしょう。
奈良や鎌倉の大仏様がつぶされなくてよかったです。
観音様の名前はたくさんありますが、中でも不空羂索観音は覚えづらいと思っていました。
不空と羂索で、つぶさに人の悩みをもらさず受け止める、という意味なんだそうです。
目黒の五百羅漢を作成した松雲元慶は、仏師から京都・黄檗寺の僧侶となった異例の経歴の持ち主とのこと。
どちらの職業も、信心の深さなくしては続けられそうにありません。
この本で紹介された50体の仏像すべてに、お会してみたくなりました。