紙の本
ライトではない、コアな伝奇が今蘇る!
2008/11/12 00:50
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:御於紗馬 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第15回日本ホラー大賞 長編賞受賞作です。
非常にショッキングな描写が目を引きますが、単なる衝動的なバイオレンスではなく、民話的なイコンが散りばめられた物語に仕上がっています。
何より清美が良い。
河童との約束で利一が差し出す、「非国民」の妹。兄が恋人を連れて軍を抜けたため、憲兵より拷問を受け、薬物『髑髏』(このネーミングセンス!)を投じられ、精神を病んでいます。
拷問の様子、『髑髏』による幻覚は偏狂的な描写があてがわれています。そして薬物の副作用で記憶から失せた兄の秘密。否、真実というべきか。その謎は次第に明らかになるのですが、ホントに、「清美」とはよく名付けたものです。
何より河童が良い。
純朴で、欲望に忠実(特に下半身的な意味で)、痛みを受けても次の瞬間にケロリとしている。 人の知らぬ知識を持ち、人間の倫理・思考の埒外に居る、そんな異形の生き物が真に生き生きと描写されています。
「今のが毒猫の毒ぢからだっ」なんてセリフ素敵すぎます。
第壱章→第弐章→第参章と、次第に上がっていく異界的なテンションも見事です。特に雷太の存在は、よくよく考えてみれば彼自身が 「身代わりっ子」ではないか? 落雷で身籠ったから雷太?
そんな空想すら頭をよぎります。途中、彼は尋常ならざる状態に陥りますが、普通に考えれば人間ではあり得ないのです。
よくよく考えると、漂浪者のベカやんは勿論、雷太も清美も、登場人物は皆アウトサイダーなんですよね。清美の兄をつけ狙う憲兵だって、権力を笠に着ては居るものの、決して表の人間ではない。利一と祐二も、雷太に殺意を覚え、それを実行に移した時点で、人の道から外れているわけで。
そんな周辺者達だから、河童やキチタロウ、毒猫など、本当に人間外の存在と縁してしまう。 そして人外の報いを受けてしまう。 直接的ではないものの、因果報応的な作品だと感じました。非常に因習深き人の業が色濃く描き出されています。
作者の二作目に早くも期待しております。
仕込みに仕込まれた陰惨な世界に再びどっぷり浸りたいものです。
紙の本
何かとんでもないものを読んでしまった気がする。
2024/02/06 17:25
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:L療法 - この投稿者のレビュー一覧を見る
角川主催第十五回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作品。
ホラーかと問われたら違うかもしれない。
作者によれば、実際に見た悪夢を膨らませたものであり、物語は不条理で、グロテスクきわまる。
印象としては、三流エロ劇画であり、見世物小屋であり、荒俣宏が述べるように、残酷演劇=グラン・ギニョールである。
サディステックな暴力性と、汚らしさが、不快感を高める。
人様に勧められる内容ではないが、こんなものは読んだことがない気がする。強いていえば、ガロ系の不条理短編が長編化されたようなもの。
作品世界で恐怖は覚えないのだが、こんなもの書き連ねる作者に、恐怖や不安を覚える。
これはカルト作ではないのか。
完成度は高くない、もっと盛り上がる構成にすることは簡単だったろう、しかし謎のドライブ感がある。
ほんと、なんだこれ。
三島が小説は書き進めるものだと書いていましたが、これはまさに書き進めたのだろう。(受賞作を手直し)
何が粘膜人間なのかわかりませんが、粘膜シリーズとして続編がいくつか出てる。
紹介文読む限り、続きではないっぽい。
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ホラー大賞長編部門を受賞だそうです。
とても残酷でおっかない。スプラッタ。
読後感はとてもとてもよろしくなかったです。
でも、読み始めると止まらなかったので、星は4つ。
殺戮も、他の場面の雰囲気もとにかく不気味。
「いてて」って言いながら読みました。
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人にはお薦めしにくく、家族にはあまり読んでもらいたくはないですが、ひとつの人間像として浮かび上がってくる欲望の方向が物語全体を構成しているので小説として稀有な存在だと思いました。
欲望というものの奥深さ、また夢が織り成す論理についても考えさせられる、ある意味の人間理解をアプローチしているような気がします。
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こりゃ大賞じゃないわ・・・
ホラー大賞は、長編賞や短編賞で冒険するなぁ。
グロ描写のオンパレード、でも不快感はそんなになかった。スイートリトベイビーを髣髴させる感じ。
やっぱホラー大賞は、最近小粒ですな。
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中学生の兄弟は、体が大きくて暴力的な義弟の殺害を計画するが・・・
う〜ん。まぁホラーなんですが、ストーリーがちょっと・・・・中途半端な印象。
で結局あれはどうなったの?みたいな消化不良。
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極悪暴漢な弟(小学生)を中学生の長男と次男が殺そうとする話。
グロテスクホラー。
業界用語を使う河童には笑ってしまいました。
ホラーと笑いは紙一重。
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第15回日本ホラー大賞長編賞の受賞作だそうです。
ドロドロでエグいスプラッター・ホラーらしいですが
個人的にはそう? って感じでした。
もちろん凄惨で陰湿で、救いようないとは思いましたが
表面的な見え方であって、過去にもっと怖くて
陰湿な小説いっぱいあったような気が...。
こういう設定のストーリーで何でもアリな世界感なのに
中途半端な印象だけが残る残念さ。
ラストとかアレではいかんでしょうー。
途中の伏線もほとんどやっつけ処理だし...。
結局、スプラッター表現がクローズアップされるのかしらね。
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グロテスクな描写が少し行きすぎている気がして☆4つにしようか悩んだけど、そういうのを差し引いても傑作だと思うので☆5つにしちゃいました。
凄惨な描写が多いけど、全体的にユーモアが漂っている。寓話な感じ。寓話は残酷なものだしね。
次にどういう作品を読ませてくれるのか、非常に楽しみ。
ただ、エログロはもう少し抑え気味でお願いしたいです。
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第15回の日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。
前回紹介した『生き屏風』のように、その心象が描写される以上、物語の中で物の怪は人間と同価値となる。そして同様に、そこに人間性が欠如がしているなら、人間もまた物の怪と等しい存在となる。この作品で描かれるのは、そんなタガが外れた人間と物の怪の物語だ。彼らが他者を殺害する時、そこには人としての躊躇も葛藤も罪悪感もない。ただ、障害物を排除したというだけの挙動。しかもそこには解体の悦びと暴力への陶酔が見られる。それが衝動的な破壊の轟音ではなく、どこか透明なメロディに乗せて描かれることが、より一層不気味さを感じさせる。著作物と作者の人間性は本来分けて考えられるべきものだが、正直、あまりこの作者と積極的に友達にはなりたくないなと思わせる作品だった。ホラー小説にとって、それが讃辞にあたるのか非難にあたるのかは私にはよくわからないが。
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第15回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作
なんで買ったんだろう(笑)
スプラッタ振りは筒井以上。SF+SM官能小説。
文章が上手いので 2hくらいで読みきる。
「悪夢」を起きたとき覚えていられたらこんな感じ。。かも。
で、粘膜人間ってダレ?
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身長195cm体重105kgという小学生の雷太。父親さえも腕力でねじ伏せる義弟に怯える義兄利一と祐二はその暴力が身に及び事を恐れ、義弟を殺害することを決意する。
力ではかなわない義弟を殺すために二人は、村の外れに住み奇怪な容貌を持つという河童に頼ろうとするのだが・・・
作者自身がグロテスク・スプラッターホラーというとおりの作品。
日本ホラー小説大賞長編賞を取っており文章力が評価されてはいるが、私としては林真理子さんと同様に「作者はかなり危険なところに近づいている気がする。パソコンを打ちながら、このシーンに酔っているのではないか」という評に同意。酔ったままストーリーが中途半端になってしまった印象もある。
滑稽さが漂うグロテスクなホラーというのは嫌いなジャンルではないけど、この作品に関してはどうも馴染めなかった。。。
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2009/10/16 Amazonより届く
2010/1/7~1/9
次作の「粘膜蜥蜴」の評判を聞いて買ってみた初飴村作品。第15回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。継母の連れ子である巨体の弟雷太を殺そうとした、利一と祐太の兄弟。自分たちでは殺害できないので、近くの沼にすむカッパ3兄弟に殺害を依頼する。果たしてその結末は?
のっけからもの凄い世界に連れて行かれる。内容もエロ・グロ的なものであるが(私は別に嫌ではないが、中には目を背けたくなる人も多いかも)、不思議と引きこまれる文章と展開。最後どうなったのか、結末が非常に気になるなぁ。
「粘膜蜥蜴」を読むのが楽しみになってきた。
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第15回日本ホラー小説大賞受賞作。
とにかく描写がグロテスク。
そして、展開が壮絶。
展開が極端で、エンタメとしてしっかり楽しませてくれる。
ただ、読後感が何とも・・・。
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グロテスク・スプラッター・ホラー。
著者自らがそう語るように、この話はとてもグロテスク。
粘膜、と題名にも含まれているように、ぬらぬらしている、粘り気があり汚臭がある、剥き出しの性欲があり目を背けたくなるような拷問があり。
第弐章は拷問の描写がされているが、それがもう、リアルに、そして見事なまでに生々しい。
兄が徴兵の義務から逃亡したせいで、非国民とされた少女。
彼女の拷問場面では「どくろ」と呼ばれる拷問用幻覚剤が登場し、それによって生命喪失の恐怖を疑似体験させられる。
これまた残虐、グロテスク。生命喪失の恐怖の疑似体験を疑似体験しているような錯覚まで起きてしまう。
それでも読み進めてしまうからには、やっぱり自分はこういう作品が好きなんだなあ、と再認識させられ。
新人ながら著者の筆力が評価されるのも当然の様に納得し。
その残虐な描写を差し引いても、物語自体とても楽しめた。
第弐章で拷問を受ける少女、清美の隠していた「秘密」、その内容に騙され。自分の単純な脳では予想も出来なかったな、ミステリー要素が含まれていてこれまた嬉しい。
ラストは中途半端な感じがしないでもなかったけど、余韻があると言ってしまえばそれで納まる感じで。
結構壷に嵌るお話でしたが、流石に読み返したくはない、かな
ジッ太・ズッ太/モモ太 利一・祐二 /雷太
著者はあえてそれぞれが対応した名前にしたのかな、もしかしてモモ太は雷太と同様にジッ太・ズッ太の義兄なのかな。