紙の本
うまいけれど新鮮さがありません
2008/12/07 17:14
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸時代寛政の頃、向嶋の種苗屋「なずな屋」を
舞台にした連作短編集。
男ぶりのいい新次は花卉の腕もいい。
その女房は子どもに手習いを教えていた身寄りのない女おりん。
この二人を中心に、新次のかつての奉公先のお嬢様・理世、
近所に隠居している六兵衛などを絡めて描きます。
「花競べ」などで理世と密かに競わせ
その裏で二人の男と女になりきれない、
そんな恋にもならない想いなどを浮かび上がらせたり
花魁と六兵衛の変わり者の孫辰之助の恋など、読ませます。
ただ去年のこの新人賞受賞作の『花合わせ』や
今年の松本清張賞『一朝の夢』とダブります。
特に『一朝の夢』とは、ある老人の正体が老中であったり
花の物珍しさを競い合ったりと、どこか似てしまっています。
しかも『一朝の夢』は長編小説のとしてのプロットが
がっしりとしていて、この連作短編が見劣りしてしまう。
文章や筆運びがうまいだけに、それ以上のパワーを感じないのも残念。
理世やその母親の、乱暴な口のきき方も気になります。
特に母親のぞんざいさはお嬢様としてはどうなんでしょう。
苦労知らずの嫌味な女にしてもよかったかもしれません。
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2009はじめて☆5かも。
文章もゾクゾクするよ。『水で洗い上げたような月夜である。・・』
『実さえ花さえ、その葉さえ、今生を限りと生きてこそ美しい』
誰が主人公だったのか、わからなくてもいいといえる。
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江戸・向嶋で種苗屋を営む若夫婦、新次とおりんは、人の心を和ませる草木に丹精をこらす日々を送っている。二枚目だが色事が苦手な新次と、恋よりも稽古事に打ち込んで生きてきたおりんに、愛の試練が待ち受ける。第3回小説現代長編新人賞奨励賞受賞作。
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内容(「BOOK」データベースより)
江戸・向嶋で種苗屋を営む若夫婦、新次とおりんは、人の心を和ませる草木に丹精をこらす日々を送っている。二枚目だが色事が苦手な新次と、恋よりも稽古事に打ち込んで生きてきたおりんに、愛の試練が待ち受ける。第3回小説現代長編新人賞奨励賞受賞作。
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植木職人とその妻が営む「種苗屋」を舞台にした江戸物。草花を愛で、育てる職人の心意気や、花を巡って通い合う人の情が読んでいてじんわりと心に沁みてきた。江戸時代の園芸事情などが詳しく描かれていてそれもまた興味深い。これがデビュー作だそうだが、期待の新人さんが現れたものだ。ということで★1つご祝儀に(笑)「実さえ花さえ、その葉さえ、今生を限りと生きてこそ美しい」ぜひ見習いたいものである。
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花師の新次と女房おりんの営むなずな屋という向島にある植木屋を舞台にした話し。
新次が修行した霧島屋が実在したかは私は判らないが霧島ツツジを流行らせた伊藤家は染井に実在していた。
そんな虚実要り混ぜ楽しいお話しになっていた。
桜の季節に読むには良い本だ。
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確かに江戸時代の種苗屋を舞台とした連作ですが、人物の心の動きの方が中心なのかなと思います。いわゆる時代物を期待するとちょっとちがうかも。
いろいろな部分にテーマ性があってちょっと考えさせられる本ではあります。
主人公が今でいうイケメン、昔しのんだ女性が美女という点がちょっと安易で必然性がないかも。それとも読み取れなかっただけでしょうか。
終章は4章の後日談ですが、話のスジより花の話がなるほどと思いました。
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2008年第三回小説現代新人賞の奨励賞受賞作。
江戸の花屋の夫婦の、江戸らしい人情味、職人気質溢れる、読後感のいい時代もの。
話の展開が上手で、新人とは思えない。(十年コピーライターをしていたらしい)
私的には毒がほしいけれど…。
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「実さえ花さえ、その葉さえ、今生を限りと生きてこそ美しい」
読み終えてしばらくしてから現世に戻ってきた感じです。
本を開いているあいだ私は江戸にいた。引き込まれた。
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花師を中心とした人間関係の物語。伊藤伊兵衛など花に縁のある名も見られ、花好きには尚のこと面白い。後半は話がトントンと進み、あっさりと終ってしまったのが物足りない感じであった。
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育種の腕を磨いた花師の新次とおりんの夫婦が営む小さな植木屋、なずな屋。
小さいながらも、その腕と努力で、次から次へと降りかかる苦難を乗り越えていく姿は心地いい。
ただ、ちょっと綺麗すぎるかな…とは思いました。
染井吉野を調べると、染井村の植木屋が売り出した、としかわからなかったんだけれど、朝井さんの手にかかるとかくも綺麗な物語になってしまうのかと…。
でも、やはり花に関する話はすごく面白くて、へえ〜と思いながら読みました。
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植物を主体とした物語であるため仕方がないと思うのだが
一作品での中の時間の流れが速い。
(春先の話をしていた次の段落では夏の終わりになっていたり)
人の心の動きや行動が唐突すぎたり、伏線になるかと思われたものがあっさり解決されたりと、人が書けている、とは言い難い。
最近読んだ本が立て続けに≪美形(男前)≫が出てきて、またかい、と思った。
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すかたんはなんとも気持ちの良い楽しい小説だったが、本作も同様、職人気質のまっすぐな人達の話は読んでて気持ちいい
すかたんは予定調和的なハッピーエンドだったけど、本作はピリッと辛くてほろりとさせて、すかたん以上の出来だと思う
連作短編的だけど、つながりにやや傷があり、完成度は高くないようにも感じたけど、とにかく小説としての魅力にあふれてます
朝井まかてさん、いいなあ
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まかてさんの本は、時代小説にしてはテンポがあって読みやすい。また、善悪もはっきりしている。そこが良さでもあり、もうちょっと曖昧な感じも読みたいなと思った。それを品よく補っているのが、豊富な情報量だろうと思う。今回もくどさを見せず、生き生きと江戸の園芸事情がわかってくる。
ただ、話があちこちに飛んでしまって、もやもやした感じも残った。最初のほうに出てきた新次と理世、おりんの気持ちが強く残っただけに、ちょっと置いてけぼりにされた感じもあった。おりんの立場に立って読んでいたので忸怩たる思いもあるけど、人生、知らなかったり忘れることも大事。これでよかったのかな?
子供への思い、花比べなど、それぞれを章を切り取るととても素晴らしいと思う。でも、通して読むと、急ぎ過ぎている感じがあってちょっと残念だった。
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恋歌で朝井まかてさんを知り、次に読んだのがこちら。
1話でちょうど1時間のドラマにできそうな感じ。
情景がありありと浮かんできて楽しい!
また、六兵衛やお袖さんなど、魅力的な人物が登場する。
花が散るときのような切なさがラストにはあり、ほろりとくるものがある。
ただ、恋歌よりは全体的に軽いタッチで、読みやすいので、サクサク読みたいときにオススメ♪
実際に文章には色はないけれども、彼女の作品には独特の色使いが感じられて、とても好きな作家さんになった。
全ての本を読みたい!と思った作家さんとの出会いは本当に久しぶり。
秋の夜長に読破したいなぁ〜