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信頼のおける政治評論家・森田実氏の著作。氏がこうした著作を行っているとは思いもよらなかった。骨子としては、「港湾整備は日本の国策上、世界経済における日本の生存においても、極めて重要。しかし、日本は他のアジア新興国の港湾から立ち後れている。1990年代からの公共事業抑制、とりわけ港湾整備の抑制政策が影響している。日本が今後世界経済にとって、重要な役割を果たすのならば、港湾や空港の整備は必要不可欠」としている。
氏の論は、最近の公共事業抑制策に与しない。国際競争力をつけるため、必要な公共投資は行うべきであり、それによって税収アップを図るという、所謂上げ潮論である。
身近なところでは、苫小牧港などの記述もあり。これからの北海道の可能性についても触れていた。内容は我が意を得たりという感じである。
印象的な箇所は複数あるが、「中部国際空港建設の折りの漁業補償について、必要なのは漁業関係者との信頼関係であり、お金が第一ではない」も印象的。大型貨物船が接岸できるよう、大深度浚渫も必要。大規模港湾の整備が急務と感じる。
その他、現在の若者の努力不足、将来の日本の行く末等、憂うところは沢山あるが、だからこそ、自分も何かの役割を果たさねばと、気分を一新した。
一つだけ違和感。中国との友好、緊密化を説くのはいいが、あまりに中国に迎合しすぎているのではないか。中国の強かさについて、もう少し研究する必要があると感じた。
以下目次を記す。
まえがき 1
1 なぜ港湾・空港を整備するのか 1
港湾の魅力にひかれて 2
港には神がいる。「港神」という神が・・・・ 4
日本は世界で代表的な海運・港湾国 5
大海洋時代の到来 6
わがふるさとは港町 8
海に未来あり 11
海と港湾の有効な活用で未来を切り開く 13
国土の健康保持は政府の責任 14
誤った構造改革は止めなければならない 16
修正資本主義の復活が必要 18
2 日本の三大主要港湾の現状と課題 日本の産業経済の国際競争力強化を目指して 21
首都圏4000万人の生活と経済を支える東京港 22
東日本の経済・産業を支える京浜港 36
製造業中心の中部地方の産業を支える名古屋港 45
復活する国際港・神戸港 53
3 人類と港 港の原点としての島の港 65
港は島民のライフライン 66
甦った三宅島空港 71
美しき島・大島(東京都)79
大島町の藤井町長のビジョン 81
波浮港を行く 85
大島の祖・源為朝 88
4 北方経済圏を支える北海道の港湾 91
北海道民の生活と経済を担う苫小牧港 92
北方経済圏と北海道の未来を創造する港湾 116
釧路港・漁港の魅力と可能性 123
天然の良港・室蘭港 131
5 地方経済を支える個性ある港湾都市 釜石港・清水港・博多港 137
釜石港−魅力に満ちた東北の港湾都市 138
静岡県と中部地方の経済を支える美しき天然の良港−清水港 150
日中新時代を拓く博多港 161
6 中国の上海港・洋山深水港、勧告の釜山港に見るアジア大港湾時代 173
大港湾時代の到来 174
中国の躍進を支える上海港 177
韓国経済を支える釜山港 188
7 世界のなかにおける日本の空港 193
日本の空港を取り巻く環境変化 194
世界へ羽ばたく羽田空港 202
関西復活の切り札、国際空港「関空」 214
名古屋・中部新時代を切り拓いたセントレア 231
8国民のための公共事業は必要である 245
貿易・海洋国として生きるための必要条件としての港湾・空港の整備 246
あとがき−平和的貿易・海洋国への道 257