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紙の本
途方もなく多様な国インドを理解したい人は読んで損はない本格派の書
2009/03/31 19:17
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
インドは多くの旅行者にとって魅惑的な国である。「神秘の国」というイメージが浸透しているからだ。バックパッカーの旅行記でも、何といってもインド編が面白い。
ところが、このところのIT産業の成功に見られるように、そのイメージは「将来の経済大国」にシフトしつつある。ただ、08年11月にムンバイで同時多発テロが起きた。単純に経済大国への道を辿っているのではなさそうだ。
そうして、この大部な書物を手に取った。インドには、明るい未来と解決困難な因習が共存しており、簡単な理解を許さない国である。本書には、そのことが、これでもかと描写されている。
英語が共通言語である利点を活かし、米国からIT産業のコールセンター業務やソフトウェア開発を受注して発展しているのは間違いのない事実である。
その一方で、世界でも最貧困層に属する人々を、農村部に何億人と抱えてもいる。途上国にありがちな、行政機構の腐敗もすさまじい。賄賂なくして何ごとも前に進まない。それゆえ、役人は肥え太る。著者は多くのインド人に何の仕事に就きたいかと繰り返し尋ねるが、決まって「役人」という答えが返ってくる。
また、政治の熱い国でもある。インドではいつもどこかで選挙戦が繰り広げられている。そして、利害は錯綜しており、歴代の首相が何人も暗殺され、命を落としている。ヒンドゥー至上主義などの極端な手法には戦慄を覚えさせられる。
彼らが敵視するムスリム(イスラム教徒)も人口の14%を占めているので、かなりの存在感がある。パキスタン国境に近い州はムスリムが優勢である。
北部と南部でも政治の事情は大きく異なる。キリスト教徒だっている。こうした人たちは、低カーストの身分から抜け出すべく改宗しているが、それでうまくいっているわけではないところに悲哀がある。
宗教的弾圧ほど、むごたらしいものはない。あまりに陰惨な殺され方には、言葉を失ってしまった。
カシミール領有をめぐるインドとパキスタンの対立は、両国が通常の武力衝突でも核兵器が使われかねない心配を世界にもたらしている。もっとも、政治指導者レベルではせめぎ合いが絶えないが、クリケットの試合でパキスタンを訪れたインドからの応援団が、パキスタンの民衆から、心からのもてなしを受けて感激する場面がある。事はさほど単純ではない。
インドという国は、簡単には記述できない。上に書いたことにしても、この国のいくつかの断面でしかない。断面が多すぎて書き切れない。
その難作業をやり遂げたのが、本書である。それにしても、欧米のジャーナリストは大部な著作を書くのが好きである。日本人ならもう少しコンパクトにまとめそうなところである。
正直なところ、とてもヘビーな書物であり、読みくたびれてしまった。それだけに、インドの実情をあますことろなく理解したい人には好適な仕上がりだろう。読みくたびれさせたのは、著者の旺盛な取材の結果だけではなく、インドという国の成り立ちそのものかも知れないのだが・・・。
いずれにせよ、たくさんのことを勉強させられた本である。
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