紙の本
巧みに忍び寄る嘘情報(カウンターナレッジ)の問題点を明らかにし、それに対抗するにはどうすれば良いかを提案する本。そう書くと面白くなさそうだが、嘘情報の中身と、それが何故間違っているかを明らかにする過程はなかなかに面白い。何故こんな与太話に騙されるのかと思う点もあるけれども。
2011/04/21 23:16
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Skywriter - この投稿者のレビュー一覧を見る
インターネットの発達による情報発信の容易化は、皮肉なことにウソの情報を蔓延させることに繋がってしまっている。
それが示されるのは、例えばID説。聖書にある、神が世界を創造したという御伽噺に科学っぽい装いを凝らしたもの(ID説が科学ではないのは、それが検証不可能な点にある)であるが、こうした妄説は通常なら広がる経路を持たないのに、インターネットのおかげで世に蔓延してしまっている、と著者は指摘する。
ID説だけではない。薬は薄めれば薄めるほど効果が高まるというホメオパシー(水が薬を記憶するそうな)もそう。
ホメオパシーを嘘だと思いたくない方は、ちょっと実験してみて欲しい。まず、お酒を用意します。1滴取って、それを水を張った風呂に入れる。そこから更に1滴取ってグラスに入れ、水で割って飲む。もし水がアルコールの性質を記憶しているなら、酔っ払うはず。水が記憶しないなら、酔っ払わないであろう。
こんな簡単な思考実験をしただけで、ホメオパシーが大嘘なのは分かることだ。それなのに、この19世紀に派生したオカルトの遺物は、今でも信者を獲得しているというから呆れる。
IDやホメオパシーを笑って済ますわけにはいかない。他にも、コロンブスがアメリカを発見するより前に中国人がアメリカに辿り着いてたとか、ダ・ヴィンチ・コードはかなりのところ本当のことを書いているだとかいった、一顧だにする価値の無い嘘情報(カウンターナレッジ)が世には蔓延してしまっているのだ。
本書は、こうしたカウンターナレッジがなぜ本当ではないのかを示すと同時に、それがどのような害を及ぼすのかについて解説している。
イギリスの話が多いので、日本人にとっては余り身近に感じられない話も少なくないとは思う。それでも、カウンターナレッジをどう見分け、どう対処していくのかを学ぶには良いのではないか。
最終章で、カウンターナレッジに対する処方箋を一つ挙げている。それは、カウンターナレッジがネットで蔓延するからこその対抗策なのではあろうが、希望の持てるものだと感じられた。その方法は、是非本書を読んで確かめて欲しい。
それにしても、解説に大槻教授、っていうのは如何なものか。氏はアポロは月に行っていないという陰謀論に与していて、月に行ったという膨大な証拠を無視している。進化論を認めないID信者とどう違うのか。というわけで解説の説得力は絶無なのが本書の唯一の欠点。日本の科学者だって、こうしたオカルトに対して反対意見を述べていて、かつマトモな人だっているんだから、氏を引っ張り出してきて欲しくないと思う。
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カウンターナレッジっていってるけどこの本自体がオカルトちっく。。。
真実は理屈と現実の中間にある
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「カウンター・ナレッジ」という造語で、依然世にはびこるトンデモ話を斬っている。「ダヴィンチ・コード」なども取り上げられ、ここ数年の傾向(主に米英のみ)をつかむには良い。ただ、頭のいい人に見られがちな、わかりきったことをわかりやすく説明しようというやさしさに欠けるきらいがある。巻末にボンと参考文献を羅列するのではなく、そこから必要な図表などを抜粋するくらいの親切さが欲しい。ここ数年のホットなトンデモ本と、それに対抗する真っ当な学術書のレファ本としても良い。
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書評「TOP POINT」で気になって、本屋さんでパラパラ読み。
う~ん、痛快です。
インターネットの普及は、
危険な「カウンターナレッジ」(=ニセ情報)の蔓延をもたらした。
・・・刺激的でしょ?(笑)
最近の、ビジネス書ブームとか、ムック本・図解本の拡大にも言えますが、
本を読む人=知識階級じゃないですよね。
材料集め(インプット)はそろそろ終わりにして、自分で料理(思考)しないとねー。
まー、お客さんが本を買わずにレベルが低いと、それを対象に、ノウハウ的な
薄っぺら本を出さなくちゃいけないんでしょうね。出版業界も商売ですからねぇ。
最近は、雑誌とかブログ+αみたいな内容のハードカバーもありますから、
出版会社のブランドも何もあったもんじゃありませんね。
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20110425
◎9.11は米国政府が仕組んだ陰謀だ。その狙いは中東で戦争を起こすことである
◎エイズ・ウイルスはアフリカ人を根絶やしにするためにCIAの研究所で開発された
◎サプリメントをたっぷり摂取すればガンを予防できるしエイズ治療薬より効果がある
◎キリストは生き延びて結婚し子孫がメロヴィング朝を興したが、教会はこれを隠している
本書は上記に挙げたような「陰謀説」「疑似物理学」「代替医療学」などを「反知識(カウンターナレッジ)」と名付け、これが科学に基づく知識(ナレッジ)の正当性を脅かし、巨大な産業として人々から金を吸い上げ、時として健康までも脅かすものとして警告している。具体的な章と概要は以下の通り。
1)知識(ナレッジ)と反知識(カウンターナレッジ)――世間を席巻するデマ情報
・「9.11陰謀説」……米国における「ルース・チェンジ」の影響
・知的正統派に認められない信念の歴史……神秘主義、フリーメーソン、スピリチュアリズム、神智学
・閉鎖的なカルト環境からマス・マーケットへの反知識の進出
・非正統派知識の特徴 方法論の欠如、蓋然性への無理解 他
・知識人への影響
2)新しい創造論(クリエイショニズム)とイスラム圏――進化を続けるアンチ進化論
・「キッズ4トゥルース」…新しいアンチ進化論、ID(知的設計論)
・創造論のパッケージ化とマーケティング
・「天地創造博物館」、CreationWiki
・イスラム教徒へのIDの浸透 Islamonline.net
・イギリスの学校での問題――生物の授業で進化論を教えられない?
・トルコ、インドネシア、パキスタン、エジプト ダーウィニズムの駆逐
3)『ダ・ヴィンチ・コード』と『1421』――息を吹き返した疑似歴史学
・疑似歴史書が書店の歴史学コーナーに並ぶ時代
・『1421――中国が新大陸を発見した年』『レンヌ=ル=シャトーの謎』『ダ・ヴィンチ・コード』
・超伝播論 カルトと疑似考古学 『神々の指紋』
・政治運動としてのアフリカ中心主義
4)サプリ、デトックス、ホメオパシー――危険な代替医療の落とし穴
・補完代替医療(CAM)――いんちき医療の表看板
・鍼治療、アロマテラピー:プラシーボ以上の効果は未だ証明されず
・中国医学、カイロプラクティック、副交感神経セラピー(CST):科学的根拠なし
・デトックス(解毒)ダイエット:根拠なし、危険性高
・ホメオパシー(同種療法):科学的根拠がないにも関わらずイギリスでは健康保健の対象
・リフレクソロジー:いわゆるツボ療法だが根拠なし
・CAMが与える「もっともらしさの構造」
・イギリス王室がホメオパシーを支持しているため、ホメオパシー療法に保険適用、一部大学にホメオパシー学位設置
・また別のいんちき療法――「栄養セラピスト」の登場。
・CAMは危険か? 「効く人もいる」 栄養学やアロマセラピーなど本人にとっては無害なものも→長期的な視点に戻れば、やはり危険性などは指摘すべき ワクチンとデマ
5)巨大デマ産業の登場――『ザ・シークレット』のインチキ企業家たち
・『お金持ちになるための科学』?
・『6週間で超健康になる』『がんにノーと言え』…ごく一部の例外を除き、ガンで亡くなった人はガンにノーと言わなかったからそうなったわけではない。コントロール可能なものとそうでないものとの区別
・資格や肩書の怪しさ 研究機関などが学位を与えてしまうことへの懸念
6)デマと生きていくには――決してなくならない反知識
・なぜデマは生まれ、流行るか
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大筋では著者の意見に賛成だが、小はアロマテラピーから大は9.11陰謀説までを俎板に載せようとしため、その分、具体的な反証なしに疑似科学/疑似歴史と切り捨ててしまっている部分が多々みられる。もうすこしポイントを絞って疑似科学の実態と反証について論を展開してほしかった。それと「宗教の教義は、その性質上、実証できないから、どんな不合理な内容でもデマと決めつけることはできない」と冒頭で断っているのがどうもしっくりこない。むしろ「神は妄想である」と自著のタイトルで言いきったドーキンス博士に科学者としての矜持を感じる
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陰謀論、代替医療、こうしたcounter-knowledgeが拡散する原因の一つに、専門家が見て見ぬふりをすること、あるいはpolitically correctnessを気にするために正面切って批判ができにくいことが指摘されている。放射能をめぐるこの1年の日本の状況はまさにそう。
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911のアメリカ陰謀説、ダヴィンチ・コード、神々の指紋、インテリジェンス・デザインなどなど、人の世には論拠のハッキリしない言説が、論拠のハッキリした言説として罷り通っている。それはなぜかということを追った本。日本で言えば、例えば『水からの伝言』や『スピリチュアル』、さらには血液型による性格傾向などがこれにあたるだろう。さらには、僕らが当然のものと思っていることがらでも、かなり怪しい内容があったりするから注意が必要だ。
仮説から真実にすり替わるには、幾つかのロジックが必要で、例えば「伝言ゲーム」が一般的だったりする。例えば、「911はアメリカの陰謀ではなかった」という文面が、人々の間を通ることによって「911はアメリカの陰謀だった。なぜなら~」に変わる。しかも、「なぜなら~」の部分に、論拠となる言説が加わるから真実性も帯びる。しかし、僕らは普通に生活していて目にする情報以上のことを能動的に調べようとはしないから、「●●という本にそう書かれている」と言われたとき、「そうなのか~」とは思っても「じゃあそれを読んでみよう」とはなかなか思わないので、真偽を確認することもなく真偽を判断してしまう。さらに、それで利益を得ようという人間が意図的に嘘をばらまいたりもする。
こういう検証というのは、国家や(もっと中立性の高い)ジャーナリズムや調査機関が率先してするべきことなのだが、国家は自分の都合のいいことを歪曲する可能性があるし、ジャーナリズムは面白いことを求めて歪曲するからたちが悪い。中国人がコロンブスに先駆けてアメリカ大陸に到達していた話なんて、中国政府があわよくばこれを政治イシュー化しようとする意図が感じられてどうにもこうにもだ。
今のところ何となく「そうだ」と思われていることが、蓋を開けてみれば大違いだったということは沢山あるだろうし、真実を重点に置くことで、虚偽の力を弱めることにも繋がると思うのだが、そういうことに価値を置いている人というのはあまりいない。
でも、ダマされないぞと思っても、私の認識もすでにダマされているかもしれないし、そうなると哲学的な問題に近くなってくるのかも。とりあえず「本当かな?」というスタンスと、論拠がハッキリしているものと、していないものの違いが分かるようになるのが大事かなと。
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[ 内容 ]
いかにも事実らしく見せかけているが、実は根拠がないでたらめ、がせねた。
反証をあげたり、その主張を裏づける証拠の欠如を示すことで嘘だと証明できるが、多くの人が信じている。
デマを流して儲けている奴らがいる。
政治家もTVも出版社も信じられない。
[ 目次 ]
1 知識と反知識―世界を席巻するデマ情報
2 新しい創造論とイスラム圏―進化を続けるアンチ進化論
3 『ダ・ヴィンチ・コード』と『1421』―息を吹き返した疑似歴史学
4 サプリ、デトックス、ホメオパシー―危険な代替医療の落とし穴
5 巨大デマ産業の登場―『ザ・シークレット』のインチキ起業家たち
6 デマと生きていくには―決してなくならない反知識
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