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今の日本で『飢え、飢える』という経験をするような人間がいるのか?という思いがありましたが、自分自身でそういう経験をした今だからこそ作者の言っていることがわかるような気がします。
この本はバブルのときに書かれたものなんだけれども、作者は『火垂るの墓』で描かれたとおりの飢え・餓えを経験している。握り飯ひとつを奪い合って親と子が殺し合いのいさかいをする。そんなことがあってはいけない。という切実な内容です。この本のタイトルの元ネタとなったのは、コメのテレビCMのために作ったキャッチコピーからきているのだそうです。
いわく
「農業は文化である。農業を棄てることは文化を棄てること。文化なき国が栄えたためしはない」
このことを野坂先生は徹頭徹にわたって繰り返し、この本の中で言い続けております。思えば戦後の日本はアメリカの政策なのかどうなのか私には定かじゃございませんが。『食べる』ということと、『食べ物』を作るということがずっとないがしろにされ続けてきたわけで。その付けが先進国ではほぼ最低水準の食料自給率を更新しているわけです。
バブル期の日本はまだお金があったから
『食糧は海外から金を払って輸入してくればいい』
なんてことを声高にいう人が大勢いましたけれど、今の不況にあえぐ日本が同じことができるかというのははなはだ疑問なわけで、今、餓死者が出るほど貧困と格差が広がるこの日本で、もう一度この人の言葉に耳を傾ける必要があるのではないのでしょうか?