年齢は財産 みんなのレビュー

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投稿者：CAM　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

　自分などは人生において愚かな失敗ばかりを繰り返してきたし、安心立命というような境地とは遠い後悔の多い毎日を送っているから、「年齢は財産」などという考えには必ずしも同感できない。「年齢を重ねるということは、すばらしいこと」とも思えない。自分も含めて、老人の醜さを感じることの方が多い。

しかるに、本書は「年齢は財産」というテーマの下にまとめられたものであるから、私のような愚かな老人とは異なる境地に達した方々の考えを集めたものである。しかしながら、日本ペンクラブ編ということもあり、同感できるか否かは別にして、水準の高いエッセイが収録されている。

阿刀田 高氏（1935年生れ）のものを紹介しておきたい。

＞50歳になったとき、これからの10年間を展望して、
「いよいよ50代か。老年の仲間入りだな」
　と考えたが、実際に1年が過ぎ、3年が経ち・・・　私の50代はほとんど老いを感じることがなかった。40代とそう変わらなかった。
そして、いよいよ60歳になったとき、
「60代か。今度はほんまものだぞ」
　と老齢を考えたが、これもそれほど繁く老いを実感することがなかった。
　かくて70歳を迎え、
「あははは、人間て、そう年を取るものじゃないんだな」
　と、これまでの体験を省みて楽観したが、親しい先輩から
「あははは、今度は今までとちがうんだ。それに70代だなんて、十年をまとめて考えちゃ駄目だな。70代は70代前半と後半がある。80代は3つに分かれて前期、中期、後期だ。90代は多分毎年ちがう」
　と諭され、
―――どうもそうらしい―――
と感じている今日この頃なのであります。

＞二十代は言うに及ばず、四十代くらいまで、人は生れてきた条件で生きている。その度合いが大きい。端的に言えば親である。どういう親から生れたか、どういう育てられ方をしたか・・・・・。　親だけの責任ではないけれど、よい頭、よい容姿、よい体・・・どの点で、どのくらい恵まれたか、さらによい環境で育てられたかどうか、裕福であったかどうか、若い時代はこれらについてプラス条件を享受していればこそ、しあわせな人生を歩んでいるケースが多い。その反対もある。
　もちろん人生行路はこればかりに左右されるわけではないし、また逆にいくつになってもこれらの条件の影響はつきまとうけれど、やはり60歳を過ぎる頃から、
―――俺自身がどう考え、どう生きてきたか―――
　それが反映されてくる。