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大学のゼミに参加するようになった自閉症のたかし君と,学生として大学にきていた手にけがのあるみつこさんの話を中心として論は進んでいきます。この両者の話は,以前読んだ,同著者の『「私」とは何か』(講談社,1999年発行)にも取りあげられていますが,本書の方が二人の子どもの成長の過程が詳しく取りあげられていて,分かりやすいです(本書の元になった本は,1997年発行ですから,読む順が逆ですね)。
障害を文化と考えて付き合うことの可能性が,しっかり見えてきたような気がします。
本書を読み進めるうちに,昨今の特別支援教育の流れは,間違っているのではないかと思ってきました。ほんのわずかな障害でさえも「その子にあった教育をするため」という大義名分の下で分けられてしまい,障害のある子だけが,ない子に近づくように仕向けられているような気がします。
「ほころびは,なにも訓練や治療によって彼の側から埋める必要はないのです。彼の生きるかたちのまま,私たちは自分たちの生きるかたちをそこに絡ませ,交歓の世界をつくりあげることができるのですから。」(本書123ぺ)
本来なら,障害を持った子も持たない子も,同じ空間を共有しながら,どっちとも学んでいく。障害をもっている子たちとの交流を,異文化の交流として捉え直していくことで,障害者とともに歩む道が見つかるのだと思います。