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紙の本
権力闘争に明け暮れる支配者になりたい者たちを描く。
2011/09/29 19:04
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
太平記 吉沢和夫 童心社
太平記には、後醍醐天皇が中心となり、足利尊氏、新田義貞、楠正成らが協力して、鎌倉幕府の北条高時を倒し、されど、仲たがいして、尊氏が新田や楠を滅ぼし、南北朝の室町時代を形成するに至った経過が書かれています。1321年の夏から始まり、1358年尊氏没までの記述となります。700年ぐらい前の出来事です。史実どおりとは思えませんが、おおむね事実に沿ってはいるのでしょう。
以前NHKの大河ドラマを見ました。その後、鎌倉を始めてとして、舞台となった京都や奈良の地を訪れたことがあります。奈良の吉野では、後醍醐天皇のお墓を見学しました。お墓はあまりに現代的な形だったのでがっかりしました。くし団子のような三角、丸、四角が重なって緑の苔むしたお墓を想像していました。
人は権力闘争に明け暮れます。一部の人間がいい思いをするための戦いです。「民のため」は本音とは思えません。戦いの記述は壮絶で、映画「レッド・クリフ」を思い起こします。
楠正成の悲劇は現代でもあります。支配者は、本物を知る助言者の意見を聴き入れません。形式を整えることに終始します。足利尊氏は安定した国家を樹立することができなかった。支配者層の内紛をよそ目に、民はしたたかに生きていくしかない。
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