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紙の本
杜甫。トホホホ。
2009/02/22 15:40
11人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:和田浦海岸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
漢文の前では、途方に暮れる私です。
けれども、日本漢字能力検定協会が、公益法人では認められない多額の利益をあげている昨今。漢文・漢詩などに興味をお持ちの方は根強くいらっしゃるのじゃないかとも思ってみるのです。それにしても、私は漢詩が分からずにトホホホホ・・・ってな感じです。うん。それでも、2007年で漢字検定受験者数が272万人という裾野。ならば、漢詩からの橋渡しがあってもよさそうなものです。そこで、この新刊「杜甫」をとりあげてみようと思います。まずは、私のこの新刊の感想はですね。絵画鑑賞のようにして、漢詩鑑賞というのもできるのだ。という手ごたえを感じたのでした。
たとえば、だいぶ以前で申しわけないのですが、マチス展というのを見に行ったことがあります。そこには、マチスの初期から晩年まで年代順にならんで展示しておりました。その時にですね。500円という別料金で携帯の音声ガイドというのがあった。ただ絵画の前に佇んで眺めているのと違って、イヤホンで時代背景を聴きながら、絵画を年代順に見て回れたのです。観光地のガイドさんがついて名所を案内されてゆくような、あんな感じ。けれども、音声ガイドは、絵に見入って聞き逃したら、一人でもって、同じ箇所を聞き返すこともできる。それにイヤホンで他人の迷惑にもならずに静かなものです。
漢詩鑑賞にも、そのような音声ガイドがつけば、きっと楽しめますよね。
じつは、この本NHKラジオ第二放送『古典講読』の時間に、全26回にわたって放送されたものなのだそうです。ラジオでの漢詩朗読こそ聴けないのですが、ガイドの宇野直人氏と声優・江原正士氏による会話体の進行は、美術館で絵画の間を歩いているようなテンポで杜甫の漢詩の間をすすむことができます。
まあ、私にしてからが、杜甫といえば「春望(しゅんぼう)」の
国破れて山河あり
城春にして草木深し
時に感じては花にも涙をそそぎ
別れを恨んでは鳥にも心を驚かす
・・・・・
ぐらいしか思い浮かばないのですが、この本はじつに全450ページ。
とても、ガイドなしには、つきあえない厚さです。
さて、漢詩「春望」は杜甫が安禄山軍に捕まって長安で軟禁され。そんな中で作られた詩なのでした。ガイド宇野氏の説明には、こうあります。「46歳の春の作です。前年8月に軟禁生活に入りましたので、年を越して二年目になります。杜甫としては社会のことも気になる、疎開先の家族のことも気になる、そういうもろもろの悩みをぶつけた詩です。」(p115)
このようにして、杜甫の年齢と、その頃の漢詩とを配置して、杜甫の人となりを語りながら、漢詩にわけいってゆきます。漢詩を読むのも自由。人となりを読み出すのも楽しめます。ここでは、杜甫の人となりを引用していきましょう。
まずは、興味深いこの箇所。
「杜甫は二十歳前後から十年ほど、途中、科挙に落第したりしながらあちこち修業の旅をしていました。それが一段落した三十歳前後の時、一族の本拠地洛陽に戻ります。そこで結婚して新居を建て、新しい生活を始めるのですが、まだ就職が決まっていません。」(p32)
「官職を求めて三十五歳で都長安に出て来た杜甫ですが、試験を受けたり、有名人に面会したりしてもなかなかうまくゆきません。」(p66)
「結婚して洛陽に住んでいた杜甫は、男の子三人、女の子二人をもうけ・・天宝十三年(754)、長安の南に新しい家を建てて引っ越しました。しかしまだ官職は得られず、生活は苦しいうえ、この時期、長安近辺はやたら飢餓があったんです。日照りや洪水、秋の長雨などに見舞われて、物資が足りなくなり、食べ物の値段が上がりました。そこで杜甫はつてを頼って奥さんと子どもたちを長安の東北に食糧疎開させます。幸い、奥さんの親戚がそちらで長官を勤めていたので、官舎を借りることができたようです。そしていったん杜甫は一人で長安に戻り、就職活動を続け、翌年十月、やっと官職を得ることができました。科挙は落第したのですが、推薦で・・・。」(p84~85)
このあとに、安禄山の乱に巻き込まれる。
これがまあ、この本の四分の一まででして、
これから、波瀾万丈の杜甫の旅がつづくことになります。
では、杜甫と漢詩に興味がもてるようでしたなら、
おあとは、読んでのお楽しみということにいたしましょう。
紙の本
詩人を人生と共に振り返ってみる。
2011/02/08 01:37
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
李白とともに平凡社からセットで出された「杜甫」です。
正確な刊行順はわからないのですが、読む順番としては、
「李白」から先に読んで正解だったみたいです。
本書内には、李白と比較してという表現が沢山あり李白から読んだ私としては、
ちょっとにんまり。
スタイルは、李白と全く同じで、書かれた順番、つまり詩人の人生追体験し
その人生での出来事と共に詩作を振り返る形で紹介されています。
女性を愛し、酒を愛し、人を殺めたことまであるという豪快な李白に比べて、
杜甫は、やっぱりどこをとってもマジメ。詩に関してもそのマジメな人柄がにじみ出ています。
兎に角、定形詩なんですが、それでも、きちん構成が出来上がっています。
最初に情景を詠み、その後、感情を詠む。スタイルがあまり変化しません。
教科書に出てくるようなやつがやっぱりすごいのですが、
李白も詠んでいたのですが、反戦歌(ならぬ詩)がすごい、当時から知識人は天下国家のため
施政を批判するみたいな風潮があったそうですが、痛烈です。
そして、李白よりちょっと年下の杜甫、安史の乱にモロに巻き込まれています。
で、李白以上にマジメで家族思いの杜甫は、乱に巻き込まれて、反対勢力に軟禁されたのちに
家族のもとにぶらっと何の連絡もなしに帰ってくるのですが、そのときを詠んだ詩がすごかったです。
あまりにも不期に帰ってきたため、お互いに暫く、ショックのあまりわからないんですね。
で、激的な再会!!。と。
ほんとに、しみじみ、いい本ですね、、。もっと漢詩まじめに勉強しとけば、よかった、、。
前にも、書きましたが、これ、NHKのラジオ番組を活字に起こしたものです。
こういう本は、もっと出して欲しいです。
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