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みんなのレビュー2件

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評価内訳

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紙の本

最後に出ている「近現代日本の装幀十選」、そのうちの一冊が我が家にあるんです。しかも、絵を描いているのが、あの「画家宣言」をした横尾忠則、で、本は帯付きの美本、いやはや嬉しい・・・

2009/10/20 21:02

5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

この本が出る、と知ったとき抱いたのは「いよいよ大家の反撃が始った」という無責任な、でもワクワクする想いでした。だって『新・装幀談義』が2008年に出たわけですから、それから僅か一年です。その前が2007年の『みんなの「生きる」をデザインしよう』です。で、前者、正直、物足りなかった。菊地の仕事、っていうか装幀家とは何かが見えてきません。

だから私は『新・装幀談義』で
             *
要するに菊地信義は、私が装幀を語るときに物指しというか指標として必ず触れる人なわけです。で、この本、大変ためになるんですが、手取り足取りなんでも教えてくれるといったものではありません。むしろ心構えを語る、取り組み方の基本を教える、そういう本だと思います。(中略)

希望としては角背本を納めた函の実例、函から引き出すときの写真も欲しかった。それと紙です。菊地が例としてあげた代表的な紙を使い分けて本を作り、この紙は第一章に使っています、なんてやってもらったらもっと楽しめました。時々、実例がありますが、巻末にこの本で使った紙や活字のデータがあったほうがいい。ま、そんなことやってると、本の値段がもっと高くなっちゃうかもしれませんね。
             *
と書いたわけです。

その一方で同じ装幀家のミルキィ・イソベは2008年に『ブックデザイン ミルキィ流』を出して装幀家の仕事の手のうちを見せ付け、年末には『造本解剖図鑑 紙から読み解く本づくりの極意』で、本に興味を持つものなら誰でも知りたい「紙」についてのノウハウを教えてくれました。菊地が実例で示さなかった函、その写真、或は紙の見本を全て示してくれたのです。本の値段は『ブックデザイン』が3990円、『造本解剖図鑑』が2940円。

で、それを受けた形で(実際には、受けてないんですが)出た菊地の『装幀思案』の値段が3000円。もうてっきり、菊地が自分の手法の全てとはいわないまでも多くを見せる本だ!って思ったんです。値段的には、まさにミルキィ迎撃体制が整った。もっと書いちゃえば、これに松田行正『線の冒険 ― デザインの事件簿』2940円が同じ角川学芸出版から続いて出ました。ミルキィ包囲網完成です。

あ、誤解の無いように言っておきますが、これはミルキィの本と他の本の出版時期、それと値段から面白おかしく解釈したことであって、大の男が寄って集ってか弱い?ミルキィを叩く!なんて思ってもいません、ホント。で、です、期待して書店で『装幀思案』を見て「あちゃ~」って思いました。だって、本、小さいし。

サイズ的には『新・装幀談義』が19cm(B6)210頁2310円で、今回が20×13cm237p3000円。デザインはともに著者自装とあって見事としかいいようにないものなんですが、小さい。自分の技を解剖して見せるにはこの大きさでは無理、けっきょく菊地の考えは「装幀は教わるものではなく、自分で学べ」っていうことなのかなあ、一時代前の匠の世界だな、彼が生きているのは、なんて思いました。

でも造本はいいです。個人的には『新・装幀談義』のほうが面白いと思いますが、らしさ、ではこちら。白い本には角背が似合います。それとカバーの文字色。緑色に灰を混ぜているんでしょうが、それがタイトルと著者名で微妙に明度を変えています。しかもカバーの紙にもその色合いがほの浮かぶ。ま、これは紙に混ざっている繊維が薄っすら緑色を帯びているんでしょうが、それが実に上品。見返しの紙質、そして扉の紙質と色、本体の表紙の色も重くなくていい色合いのグレー。これぞトータルデザイン。

で、本の中身。自分の技の披露ではなくて、他の人が手がけた装幀を語ることで、いい装幀とは何かを語る、そういう意味での「装幀思案」。私のカバー印象記とは違ってプロがプロの技を読み解くんですから、重みが違います。しかも、菊地は気に入った装幀の本を買ってそれについて語る。だから基本的に貶すことはありません(数冊、不満を表明していますけど)。勿論、使うのは専門用語。

取り上げられる本は、身銭を切るだけあってまさに菊地好み。ゴタゴタしたものではなく、すっきりした佇まいのものが多いです。手がけた装幀家は大久保明子、祖父江慎、鈴木成一、辰巳四郎、平野甲賀、岩郷重力+WONDER WORKZ。、松田行正と私がよく取り上げる人たちです。なぜかミルキィはいない・・・。

装幀家は共通するものの、選んだ本は私が見たこともないようなものばかり。私は小説ばかり読んでいるのでどちらかと言うとカバー画に頼る本が殆どですが、菊地が好むのは小説以外のジャンルなので装画家は殆ど登場しません。だから、全体的にスッキリ、というかストイックで上品です。詩集や哲学書なんてまさにその典型。

とはいえ、全く共通したものが無いかと言えば、奇跡的に数冊ありました。まず川上弘美『パレード』、つぎが講談社のミステリランド、小野不由美『くらのかみ』があります。それと森博嗣『有限と微小のパン』舞城王太郎『熊の場所』嶽本野ばら『ロリヰタ』乙一『失はれる物語』井上ひさし『ふふふ』G・ガルシア=マルケス『わが悲しき娼婦たちの思い出』。やったあ!と思ったのが近現代日本の装幀十選の一冊、横尾忠則『絵草子 うろつき夜太』。がはは、これ実物が我が家にあります。勿論初版、美本、帯びつき。古本屋さんで入手したのではなくリアルタイムで買ったもの。いやはや30年が経つんだ・・・

でもそんなことで喜んではいられません。プロと言うのは相手の技を完璧に読み解くんです。使われている紙、色、インキ、字体、字数、サイズ、造本、版型、それを専門用語で語る。これが今の私にはできません。いいデザインがどういうものであるかは、私にも分かりますが、それを的確に伝える、それにはもっと勉強が必要です。そんなことを教わりました。

最後に私の夢。気に入った装幀の本だけを集めて、書棚に並べたい!

以下、目次と初出。

装幀雑記
近現代日本の装幀十選
 小村雪岱『日本橋』
 津田青楓『道草』
 竹久夢二『露地のほそみち』
 恩地孝四郎『槐太の歌へる』
 粟津潔『シュールレアリスム宣言』
 杉浦康平『地図』
 加納光於『螺旋都市』
 横尾忠則『絵草子 うろつき夜太』
 清原悦志『吸血妖魅考』
 平野甲賀『本郷』
形へ――あとがきにかえて

著者自装
撮影 角川グループパブリッシング写真室 

初出ですが装幀雑記は『本の旅人』(角川書店)2002年1月号―2007年7月号、近現代日本の装幀十選が日本経済新聞社1999年11月9-12、16、17、19、22-24日、「チリ」「形へ」は書き下ろしだそうです。

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2016/10/06 20:07

投稿元:ブクログ

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