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紙の本
データベース、アーカイブ論をこえて
2010/10/31 19:22
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、東大史料編纂所の前近代日本史国際情報センターによる公開研究会をもとに編まれた一書である。当日の雰囲気をそのまま再現するかのように、ですます調でまとめられ、カラー図版も加えるなど読みやすさを考慮してまとめられている。
では、ここでいう「歴史知識学」とは何であろうか? 冒頭を見ると、「歴史知識をアーカイブして共有をはかること、そのための科学的な方法と手段を研究すること」とある。具体的には本書で展開されているように、情報学やデジタル化の技術を借りて、日本史のデータベースの作成をすること、となる。
この「科学的」というところを、「妥当な」とよみかえてやれば、おそらく今までの史料編纂所のもっていた役割とそうは変わらないといえよう。本書で展開されているのは、その困難さの提示というところからあまり広がっていない感じがする。既存のデータベースのデジタル化と、今までにはないような発想にもとづくデータベース化といった方向性があるのだろう。そのこと自身を批判する気はないのだけれど、「そのうえで何をするのか」といった視点がもっとあってもよいのではないかと感じた。
デジタル化すると「何かすごそうなこと」ができるかのような印象を与えがちだが、研究本体は従来の文献史学を超えるものを検討・議論されているとは感じられなかった。おそらく多くの日本史学者は、今までの自らの研究のやり方や考え方そのものが変わるという意識はないのだろう。さて、人物データベースに関する章で中世の官職の昇進パターンの視覚化の紹介があった。これは経営学・社会学におけるメリトクラシー研究とのつながりを予感させるものといってよい。しかし、残念ながら発表者自身がそれを自覚しているようには見受けられなかった。一方で、満鉄の引揚者名簿など、たいへんな一級資料であると思われるが、それはあくまで作成者の熱意と見通しのよさに依存するのであって、デジタル化そのものの功績ではない。
おそらく、**学と打ち上げた方が、研究費を獲得しやすいのであろう。もし、こうした試みが予算がついている間だけでのことであったとしたら、この共同研究の経験そのものも死蔵されるわけだから、あまりにもったいない。単に、PCが簡便に使えるようになったらとても効率的になるのでは、程度の発想では、研究のブラックボックスを増やすだけではないのだろうか。
ところで、本書執筆者の肩書きをみていて、情報学関係者が多々見られた。学融合というのも歴史知識学のねらい、ということなのだろう。これから日本史学には情報学の知識が必要だ、ということであれば、それに応じて日本史研究者のポストを情報学関係者に割く、ということに他ならない。学融合とは、そこまでの覚悟が試されているのではないだろうか。
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