紙の本
ゴツゴツとした歯ごたえ
2023/09/03 09:24
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
作家吉村昭のゴツゴツとした歯ごたえが際立つ作品である。司馬遼太郎が時代小説家歴史小説家なら吉村昭は史談 史劇作家 と感じた。想像力の羽ばたきを意図的に抑え、史実に語らせる、という手法がこの作品にも満ちている。そのような手法で描き出される、時代に置き去りにされる老いたシーボルトや、正式な医学を前にして身を引くお稲を感傷を交えずに書き上げている。
紙の本
長崎に行きたくなります。
2019/04/26 00:35
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投稿者:ニック - この投稿者のレビュー一覧を見る
シーボルトにまつわる女性3代の人生を通し、開国から明治への激動が緻密に描かれています。「長英逃亡」、「桜田門外ノ変」、「生麦事件」をはじめ、氏の幕末作品のモチーフとなった史実もふんだんに盛り込まれ、読み応えたっぷり。読み終えた後は、長崎観光に行きたくなりました。
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この一家は絶世つーほど美しいのにもかかわらず男運がなかったですね・・・産科を学んでいた師に無理矢理犯され女児を出産。一度はやる気を失ったものの、再び産科医をめざし、ついに独立。バリバリ働きだした稲。この人の熱心さ、すごい。
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江戸鎖国時代の長崎にオランダ船でやってきた医学者シーボルト。出島に出入りする遊女其扇(お滝)との間に生まれたお稲は、偉大な父と同じ医学、産科医として自立していく。職業を持った女などいない時代に医者としての道を志し、教えをうけた石井宗謙に犯され女児を生みながらも幕末、明治維新を生き抜いていく。
開国ってすごかったんだ。武力を見せしめにして開国を迫って中国を植民地化したイギリスを筆頭にアメリカ・ロシア・フランス。開国か鎖国を続けるかで日本国内も争いが激しいし、暗殺、切り捨て、切腹、投獄、拷問も日常茶飯事。男が妾をもつのは当たり前、女がてごめにされても仕方がない。すごい時代。シーボルトが最初に来た時は経験、知識豊かで相当に尊敬もされたみたいだけど、日本地図を国外に持ち出そうとして永久追放された後、何十年後に再来日した時はうとまれたみたい。
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下巻は、お稲の話よりも激動の幕末の話が大きな割合を占めています。新しく明治政府が出来て、医療制度も変わってきます。日本初の女医のお稲ですが、江戸時代はこれといった医師免許の試験はなかったのです。明治になり試験に受かった者が医師として認められるようになり、その試験には別の女性が受かっています(お稲は受けていない)。こうして新しい日本は女性の社会進出をどんどん認める時代となり、時代の流れとお稲の年齢からくるギャップに共感せざるをえません。
原発事故で、シーベルトについて調べようかと思い、ふと、シーボルトを思い出して読み始めた大作でしたが、学校で習う年表歴史ではない息遣いを感じることができ、大変有意義な読書タイムだった。
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ようやく読破。。
シーボルトが出島に来ていた頃、遊女との間にできた娘の一生の話。
う~ん。シーボルトって偉いお医者様だったんだよね、
くらいの知識しかなかったから、
遊女との恋物語とか、その後、お手伝いの女性に手を出すとか、
そういうものか。。と思ってしまった(^_^;)
まぁ、それ以上に、日本のことをオランダに伝えたい、という意欲に圧倒される。
そこまでする?!ということが多々あり。
小説としては面白いけど、
日本史の弱い私には行き詰る箇所が結構ありました。。
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所謂オランダお稲の話。江戸時代、しかも幕末から明治維新のただでさえ動乱の時代に日蘭のハーフで生きるってどんなに大変だったんだろう。
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結局、タイトルはあくまでも象徴であったのだろう、と思う。
「ふぉん・しいほるとの娘」とあるが、シーボルトに関わってしまった男たちがメインだと感じた。
シーボルトの子を産む滝、娘の稲、孫のタダが出てくるが、稲以外の女たちの扱いは、男たちに比べると弱い。
群像劇として読むのならば、男たちと同じようにシーボルトの娘の客観的な立ち位置が知りたかった。
恐らく、タイトルから察した私の読みたい話とは異なった……ということなんだろうなぁ。
長かったです。
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幕末から明治にかけての混乱期、男たち、女たちの生き様がリアルに描かれている。
シーボルトの孫、高の「つくづく男運のない女」というのが印象的だった。その後の彼ら彼女らの未来に栄光があったことを心より祈る。
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やー長かった。やっと読み終えました。読み応え十分!
お滝の娘、お稲さんは宇和島の二宮敬作→石井宗謙と父の門下生に師事して産科医としての力をつけていく。
しかし何と石井宗謙に犯され娘タカを産む。タカもまた結婚した三瀬周三(諸淵)と死に別れ、片桐重明に犯され男の子を産む(周三と名づけた)。
お稲さんは東京に行って産科医として開業し最後は長崎へ。
その間、シーボルトが再び来日し再会したり、異父弟のアレクサンデルに助けられたり、江戸後期~明治初期までの激動の歴史を背景に、じつに起伏にとんだ人生が描かれます。
この辺の歴史って、どの藩が尊王なのか攘夷なのか、頭がごちゃごちゃになってくる。
攘夷、開国と、日本が揺れに揺れた時代だもんな。もちょっとこのあたりの歴史を学びなおしたいと思った。
吉村氏の「桜田門外の変」も読みたいな。
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下巻は、十四歳のイネが長崎の親元から離れ、独り宇和島の二宮敬作を訪ね、医学を学びところから始まる。
イネは、その後、波乱の人生を送り、彼女が76歳で亡くなるまでの、まさに大河ドラマを描く。
イネは二宮敬作の勧めにより、日本で初の女性産科医としてのキャリアを歩む。舞台は幕末から維新にかけての激動の時期と重なり、西欧との接点でもあった医学が政治的に結びつく時代、村田蔵六など登場人物との繋がりも興味深い。(司馬遼太郎の「花神」ほどは登場しないが)
明治に入ると福沢諭吉とも懇親を深め、女性の社会的地位向上に一役を買う。(福沢諭吉の口添えにより宮内省御用掛となる)
一方で未婚のままの出産などイネを取り巻く数奇な運命の数々は、歴史小説としての読み応えを提供しているのだろうか。
幕末維新の歴史小説からは、当時の人々の志の高さに心を打たれ、魅了されるのだが、この小説では、女性で混血、という社会的には弱い立場に置かれながらも、志を強く生きたある意味ではユニークな生涯を知ることができ、今の自分を振り返ると身が引き締まる思いがした。
以下引用~
・「私は、女医者になります。多くの妊婦の命を救いとうございます」
・シーボルトは帰国後、オランダ政府の植民省に日本に関する報告をおこない、イギリス、アメリカの関心が日本に向けられていることを憂慮し、即位前のウイリアム二世に謁見して日本とオランダの貿易の現状と将来、鎖国政策を堅持する日本の国際的位置などに対して意見を申し述べた。
・宇和島藩の財政建直しは産業の奨励によるが、その中心は製蝋業であった。・・・宇和島藩の蝋は品質が良く、蝋燭、鬢つけ油として需要もさかんであった。そのため藩の収入は増大し、窮乏していた財政は好転した。
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小説の枠にしてますが、フィクションとしてしまっても好いんだと思う。それぐらい、史実を緻密に描き、その中で登場人物たちがどのような生を送っていったのかが生き生きと描写されてます。
幕末をちょっと勉強すれば出てくる戦争や策謀、日本人なら誰でも知っているような超有名人たちの躍動の背後には、この小説に書かれているようなごくごく平凡な、一般的な人々の人生が織り成されていたんだということに、改めて気づかされます。
この本を読んでも学校の歴史の点数は大して上がらないとは思いますし、その意味で勉強目的で読む必要はまったく感じません。が、この時代に生きた人々の空気感、息遣いを感じられるという意味で、学校の勉強以上に自分の糧になる作品だと思います。
しかし、この幕末から明治にかけての女性は強い。肉体的にも精神的にも。そして、とにかく簡単に人が死ぬ。戦いによってではなく、単純に風邪とか感染症とか、今であれば考えられないような理由で、本当にあっけなく、コロっと死んでしまう。
これが小説なら、「何でこのタイミングでこの登場人物を殺しちゃうんだよ!」ということになるんでしょうが、この作品に書かれているのはほぼすべてが事実。
だとすると、やはり「事実は小説より奇なり」ということになるんですね。
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(「BOOK」データベースより)
日本に残されたお稲は偉大な父・シーボルトを慕って同じ医学の道を志す。女の身で医者になることなど想像すらできなかった時代に、父の門下生を各地に訪ね産科医としての実力を身につけていくが、教えをうけていた石井宗謙におかされ、女児を身ごもってしまう…。激動の時代を背景に、数奇な運命のもとに生まれた女の起伏に富んだ生涯を雄渾の筆に描く吉川英治文学賞受賞の大作。
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難しい時代に、女性として、しかもハーフとして生きたイネ。子どもができたくだり以外は、それほど大きな「事件」は起きないが、時代背景やシーボルトとの関係を見るに、壮大な人生という形容が似合う。史実に忠実な小説なのかもしれないが、実際にはいろいろな男性との恋愛関係もあったのでは?あってほしい、と願う。たとえフィクションであっても、そういう記述も欲しかったかな。
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シーボルトの娘お稲が医師となり、明治維新を経て紆余曲折ありながらも日本初の産科医として働く姿を描く大河ドラマ。NHKも意味不明なヒロインやめて、こういうしっかりした原作使えばいいのに。