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(2009.07.31読了)
神さんは、写真が好きで、よく写真展を見にゆきます。
神さんが読んでまわしてよこしたので読んでみました。
幾つか興味深いことが記述してありました。
写真は、英語でphotographといいますが、photo=光、graph=描く、あるいは画
ということなので、「光画」という訳語が妥当で、実際に「光画」という言い方もあったということです。(9頁)
写真の歴史を考える上で、著者の考えるキーワードは3つ。「決定的瞬間」「ニューカラー」「ポストモダン」です。
写真が発明されて、最初はいかに絵画のように写真を撮るかに心が砕かれました。絵画主義的写真=ピクトリアリズムと言います。(20頁)
●「決定的瞬間」
偶然の一瞬をとらえて芸術的に構図する「ストレートな写真」が目指され、ブレッソンの写真集「決定的瞬間」が頂点になりました。(24頁)
●「ニューカラー」(30頁)
「ニュー・トポグラフィクス」:大型カメラにモノクロフィルムを詰めて、人工的で社会的な風景をあたかも調査研究のように撮影しました。
「ニューカラー」:何の変哲もないアメリカ南部風景のカラー写真。何の変哲もないというのは、何の事件もなく、人々の大げさな表情もないということです。
●「ポストモダニズム」(76頁)
ディコルシアは、あたかも映画のセットのようなシチュエーションをまず創って、それから写真を撮影します。出会い頭のストレートな写真ではなく、細部に至るまですべてを完全に構成して演出する、セットアップの写真です。
●美術と写真(82頁)
写真のような絵画と絵画のような写真があります。
境界線が引けない、一つに重なりあっている状態です。
●「今日の写真」の特徴(84頁)
(1)ストレートからセットアップへ
(2)大きな物語から小さな物語へ
(3)美術への接近あるいは美術からの接近
(4)あらゆる境界線の曖昧さ
●三大写真論(243頁)
ロラン・バルト「明るい部屋 写真についての覚書」みすず書房
ベンヤミン「複製技術時代の芸術」晶文社
ソンタグ「写真論」晶文社
著者 ホンマ タカシ
1962年、東京生まれ
日本大学芸術学部写真学科中退
1999年、写真集『東京郊外』で第24回木村伊兵衛写真賞受賞
(2009年8月3日・記)
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photograph=写真? 真を写すだけではない
photo=光、graph=画 光画
決定的瞬間 アンリ・カルティエ=ブレッソン サン・ラザール駅裏
ニューカラー ウイリアム・エグルストン ベッヒャー 決定的瞬間なんかないよ、繰り返される凡庸な日常、等価値
決定的瞬間 vs. ニューカラー は、シャッタースピードの違い ピントが違ってくるから →世界の捉え方の違い
写真は、どのカメラを選ぶかで表現が限定される
ヴォルフガング・ティルマンス 複眼的な眼差し、ニューカラーの発展形、すべてが決定的瞬間であり、すべてが愛しい
中平卓馬 図鑑的
アフォーダンス ジェームズ・J・ギブソン 座りやすい椅子、掴みやすい取っ手が分かるのは、そのもの自体の「見え」にすでに情報があるから
ポストモダン 大きなテーマを持つモダニズムを粉々に解体する、社会が、世界が、時代が、もはやひとつの大きな物語では括れなくなった → 小さな小さな個人の物語が重要
写真とアートの境界線がなくなってしまった状況こそ、ポストモダンの最大の特徴
ストレートからセットアップへ フィリップ・ロルカ・ディコルシア
大きな物語から小さな物語へ
美術への接近あるいは美術からの接近
あらゆる境界線のあいまいさ
ワークショップ篇
好きな写真集の中から1枚の写真を選んで、それがどのように成立しているのかを言葉で説明し、次いでその1枚と同じ構造の写真を撮影する
1枚の写真を要素に還元して構造的に読み解いてみる
いったん抽出した写真の構造を、自分の力でふたたび1枚の写真の形に表すことができるかどうか
「写真は真実だけではない」ということを意識するために、最初からウソを取り込んだ写真を撮ってみよう
被写体を疑う
写真プリントという物自体を疑う
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写真について、知らん事いっぱい。
おもしろかった。
もっと勉強しよう。
写真の被写体分析、他の素材でもやってみたいなー
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ホンマタカシによる写真論。ちょっと昔風に作ってあるのが面白い。たいへん為になる本です。写真の見方がかわるかも。
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ことば
もし仮に真実と嘘があったとしたら、写真はそのどちらにもなり得るもの、あるいはそのふたつの間を行ったり来たりするものです。(中略)写真はボクたちのまわりの至るところに存在します。自由に、多義的に、いかがわしく。だからこそ今日的。
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アートディレクターという仕事をしていながら写真は本当に苦手で、何が良い写真なのか、未だにはっきりと説明できない。自分で撮るのも苦手で、たくさん撮って当たりがあればラッキーという感じ。きちんと写真について勉強しなくちゃと思って読んでみた。結果、「写真とはどういうものか」という定義よりも、「こんなのも写真なんだよ」という感じで逆に枠が取り払われてしまうような。もちろん広告写真と純粋な(という言葉も適当じゃない気がするけれど)芸術写真との違いもあるのだが。数多くの資料とインタビュー、ホンマ氏によるサンプルなど非常に盛りだくさんな内容。現代の写真の流れがわかる秀逸な参考書。
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ホンマオタクでも写真家でもない。
ロジカルな話が参考になった。
個人的には、やはり写真はリアル=真実だと思っている。撮る人がいて絶対に対象があるから。
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ぼんやりと頭に浮かんできては消えていた「写真」に対するイメージに、いくつかの説明を付け加えてくれた。
ここ最近読んだ、文字主体の写真関連本の中では、一番たのしかった本。
読み終わる頃には頭がクラクラして水平が出せないくらいだったけど、感謝の言葉を捧げたい「ホンマタカシさん、ありがとう」と。
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文字が少なくすぐに読み終えてしまった。
少し写真を知っている人からすると
入門書としてもぬるいくらいだけれど
全く写真に対して定見を持っていない人や
美術写真のいろはの「い」を知りたい人には良いかもしれない。
日本で「写真論」と言うと
感情的で自分の撮り方を押し付けるタイプか
わけのわからない抒情と感傷で読み手をおいてけぼりにするタイプが
大多数を占めているのだけれど
本書はそこまでではない。
基本的には優しいけれど
「肝心なところは自分で考えろよ」
と突っぱねている部分がある。
だがそのスタンスこそが本当に入門書の入門書として最適なのだろう。
哲学がまだ何にも出来ていない人に哲学を叩きこむものでもない。
なーんとなく写真の世界をチラ見せしている。
第一線で働く現役の写真家の考えに触れるのにも良い機会。
賞味期限が切れる前に、刊行間も無い今のうちに
今の人にこそ読んでほしい。
そんな本です。
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2009年6月1日に初版、同月25日にはもう重版されていますが、それもそのはず。この本超いいです。
ただポラロイドの章は昨今のポラロイドブームを少しバカにしているなぁという感じが見受けられたので★4つ。ここで全力でバカにしているなら★5つだったんだけど、ああいう書き方って逆にいやらしいよなぁという感じなので。そういう性格の人なんだろうな。この点だけ残念でした。
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「決定的瞬間」と「ニューカラー」を別々の軸として捉えている点は面白い。写真を撮って楽しむだけでなく、考えるための第一歩を若い人に提供している点も評価できる。でも...佐々木正人や堀江敏幸との対談はもの足りないなあ。
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最近写真のワークショップに通ってます。僕とはまったく違う趣向の写真を撮っている人が多くてある意味びっくりしたのだけれど、それも写真の歴史の流れの1つなのだ、という事がこの本を読むとよく判る。
写真の誕生以来、記録性から芸術性へ、ドキュメントからフィクションへ・・そうした傾向は記録芸術の必然だが、写真にもその流れは当然あった。「決定的瞬間」を捉える事で写真をアートたらしめたアンリ.カルティエ・ブレッソン。その一方で目の前の世界をもっとじっくりと捉えようとした「ニュー・カラー」の一派。そうした流れを作者独自の視点も含めて判りやすい文体で解説している。もちろんそこにホンマタカシならではの脱線もあるのだが、それも御愛嬌。写真は芸術か?といった問題を軽く水の上を歩く様にこなしてゆく姿は気持ち良い。
個人的には今盛んなデジタルについての考察があるともう少し読み応えがあったかも?
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写真おしえてって言われたら
とりあえずこれ読んでって思う
写真の教育の大前提をおいてくれたんだと思う
シャッターが簡単に切れることで錯覚されがちだけど
基礎の教養がなければ語ってはだめ
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生態心理学で知られるジェームズ・J・ギブソンの概念で環境の中に情報があるとする「アフォーダンス」というものがあるが、著者はそれをベースにこの本をまとめたとのこと。
まず「決定的瞬間」(アンリ・カルティエ=ブレッソン)から「ニューカラー」(ウィリアム・エグルストン)、そしてポストモダンへと至った経緯、重要人物とその差異(機材から露出シャッタースピードまで)をキーワードとともに簡潔に俯瞰していく。
2章ではワークショップとして写真を読む、写真を疑う、写真に委ねるなど普段あまり意識しないことを実践することで、まさにタイトル通り写真を撮りたくなる、楽しくなる、そんな一冊。
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読みやすい。写真の見方ワークショップの章がよかった。写真って感覚的に好き、なんか良い、とか思っていたけど、何故好きなのかを人にちゃんと伝えたい。