紙の本
海の都の組織
2023/11/06 17:18
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投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
共和国体制のヴェネツィア。千年ものあいだ政体を維持できたのは、単なる民主主義ではなく国会、元首、官僚の組織をうまく運営したからだとは驚く次第。元首だけは終身制だが権力の執行には元首補佐との合議制が取られ簡単には事案を処理できない。貿易の要である船の船長でさえも一人で行き先を変えることはできない。資源がない海洋国家だからこそ失政は許されないのでこの様な組織が出来上がった。と作者は書く。現代政治にも参考になる話ではないか。
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塩野 七生のローマ人の物語が好きだったので、購入したのですが、とくに英雄などでないため、最初は退屈でしたが、ドンドンと引き込まれていきました。
資源の乏しさ、アンチ・ヒローの国家、宗教からの独立性など千年続いた国家という点など、日本とは抱える構造が似ているため、ベネチアの歴史からは、いろいろと学ぶところが多いです。
英雄による帝国は、英雄の死と共に老化していきますし、システムだけに依存した国家は、個人の勢いで負けてしまうところもあります。
その両方のバランスを考えていた国家だとしても、最終的にナポレオンに滅ぼされてしまうところなど感慨深いです。
おすすめです。
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ヴェニスの商人、ヴェネツィアの一般的な市民(=商人)の行動から始まり、ヴェネツィアでそののち500年以上生き残る共和制についての話が中心。考え抜かれた国家としての経済政策は、国家の利益と市民の利益を一致させるように必ず作られていた。これだけの細かい配慮がないと政治は成り立たないんだと実感した。そして最後の方に書いてあった、ヴェネツィアくらいの国家規模だと一回の失政で国は崩壊するという危機感が、緊張感につながったのだろう。[2009/07/16]
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資源に恵まれないヴェネツィアのような国家には、失政は許されない。人間の良識を信じないことを基盤にしていたからこそ、存続することができた。極東の島国にも見習うことが多々あると思う。
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第2巻は十字軍まで東地中海に「海の高速道路」とも呼べる定期航路を確立した後、それを維持・発展させていく国家としての仕組みや、商売を支える経済制度にスポットを当てています。また、造船技術の革新や、羅針盤の改良などの航海の革新がヴェニスの商人の反映を支えたことや、小国であるが故の苦悩も綴られています。
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塩野さま!ただ1で力尽きていまお休みちゅう。
『ルネサンスとは何であったのか』でヴェネツィアに興味を持ったのです。自治を貫いた商人国家なんてかっこいい!
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十字軍にまんまと便乗して地中海航路を確立したヴェネツィア。
塩と魚しかなかった国は、交易を経済の中心に据えて発展を
遂げる。
ヴェネツィア共和国の国政に参加するのは大商人を中心した名家の
男たちである。
だが、大企業に利益が集中すると経済が硬直化することを理解していた
政治家たちは、海外貿易に参加したいと思う商人に均等の機会を与える
制度を作り上げる。
才覚さえあれば誰にでもチャンスがもたらされていた。そのシステム
自体が非常に興味深い。
日本の大企業の経営者や政治家は、見習ってみてはどうか。
さて、ヴェネツィアにとっては大きな利益をもたらした十字軍で
あったが、大敗で怒り心頭のローマ法王から、全西欧にお触れが
出される。
「異教徒との交易は、例え軍需品以外でもまかりならんっ」
オリエントとの交易を主力にしていたヴェネツィア共和国にとっては、
国の存続がかかっている。だが、そんなこともへっちゃら。
なるほど。異教徒とはいけませんか。ならば、オリエントのキリスト
教徒とだけ交易しましょう。
そのオリエントのキリスト教徒は、異教徒と交易してまますから。
「自分は、どこの国でも法王だがヴェネツィアではちがう」
法王の嘆きもごもっとも。
枢機卿だって本来はローマ法王が任命するものだが、ヴェネツィア
に限っては自分たちが決めた人間を法王庁へ送り込んでいるのだ
ものなぁ。
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第2巻は、第4話ヴェニスの商人、第5話政治の技術となっている。
蛮族の攻撃から逃れ、劣悪な立地条件であるヴェニスの居をかまえた人々の生きる道が交易であり、第4次十字軍への参加を奇かとして共和国の基礎を築いたのであるが、彼等の経済活動の行動原理の基盤づくりが着々と進み、それにともなう、政治活動の整備も必然的に進んだのである。
共和国の市民すべてが、合理的な経済活動に必然的に組み込まれてしまうシステム・メカニズム。そして、その経済活動を独裁を許さない政治体制の仕組み作り。
また、異教徒である国家とも、交易を通じ、如何にウイン・ウインの関係でおれるのかという対話のありかた。
現代の世界政治経済が見習わなくてはならないことばかりだ。
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ヴェネチィアの経済と政治の話。
読んでいると、うんうんとうなずいてしまう話が多く、確かにすごいなとは思う。教養本としてはわかりやすいし興味深いけど、このシリーズに期待してしまうようなドラマがないのはちょっと残念。
2009/8/26
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ヴェニスの商人
p47
ヴェネチアは国家の統治を経営と考えていた。経済的に成り立つことが第一目的で、目的を達成するために、強力な行政指導を行使することをためらわなかった。
p87
ヴェネチア政府の中小商人に対する保護育成の政策は実に徹底している。これを政府が考え、実行したのである。中小商人が働きかけたのではなく。
社会福祉として考え実施するより、経済観念から考えるほうが、中小企業の存在理由がはっきりするし強固だからだ。
イスラム教徒との交易をしたことで、法王から波紋されても、法王への面目は保ちつつ抜穴を探してイスラム教徒との交易を続けたり、たくさんの航路を持って、状況によって使い分けたり、ヴェネチア人のしたたかさというか、経済人としての考え方、戦略、交渉術は徹底していたと感じた。
政治の技術
p168
ヴェネチアは資源に恵まれなかった国である。そのような国家は失敗は許されない。人間の良識を信じない統治能力に優れた政体を作り出したから長期に存続できた。
政教分離を実行し、宗教の介入を防いだこと、貴族には国政に参与できる特権だけ与え、力を持たせず、市民(商人)中心の政体だったことで、国民のモチベーションを保ち国力を維持できたのだとおもった。
2010/10/31読了
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ヴェネツィアでは、シェークスピアのベニスの商人のように、複数の人が交易船に投資して利益をあげる体制をとっていた。今の株式会社のようなイメージと塩野さんは述べています。十字軍の遠征により、ヴェネツィアは東方との交易路や交易相手を手に入れていき、大きな富を手に入れる事となる。また、経済的に成り立つことを第一に考えることにより、他の国とは違ったユニークな存在となっていった。
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平均的ヴェニスの商人の実態
○合議制による商船航路行程の決定 → 他の利益が共同体及び自らの利益
○大商人たちが大企業独占による経済硬化を防ぐため、中小企業の健全な活動を保護・育成
■国益=私益となるのはサイズ?時代?
○簿記の複式化
○銀行の開発(あくまで物質経済)
商人による政治
○共和国国会と市民大集会
○くじと選挙と敗者復活
○国益のためならば自らは第二列に甘んじる(共和制維持の難しさ)
■多種類の権力・権威を理解する教育が必要?
○政教分離
○実害の少ないモノ信仰
○特権を享受しない政治プロとしての貴族
○テレビにより議員は視聴者を意識した言動をする
○共和制を補う限定的な少人数決定権の迅速性
■資源小国は優れた効率的な統治が必要
■政体はひとつではない
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ヴェネツェアの商人とその政治体制についての第二巻。ヴェネツィアの航海における相互体制「コレガンツァ」、国家体制の定期航路「ムーダ」により地中海の取引でヴェネツィアが台頭する。さらに航海革命というべき「羅針盤、航海図、ターボラ・ディ・マルテロージオ(航海早見表)」によりヴェネツィアの商取引は完全なものになる。
現実主義の気質をもった政治体制は統治というよりは経営であった。政教分離により上からの圧力を無くし、政治行政のプロ集団により大衆と政治を切り離した。これは昨今の日本における衆愚制に対する注目すべき点だと思える。
人間の良識を基盤としたフィレンツェの崩壊よりも300年、人間の良識を信じないことを基盤としたヴェネツィアが存続したことには現代においてもその意味は大きいと思う。
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政治、経済、交易、社会から技術、ファッション、スキャンダルまで、「まあよくここまで」と思えるぐらい視野は広く、深い。しかも僕の常識を覆すものばかり。
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ヴェネチィア共和国がそのハンデ(資源がない、陸続きの強敵に囲まれている)を向こうに回して息の長い国家の礎を築くまでが描かれている。
経済への過剰にも思える介入、徹底した英雄の排除、共同体を支える人々の立場の保証、個人能力に依存しない仕組み、商売を支えるための銀行の仕組み、政治のプロの育成、官僚組織の活用など、そのどれもが、公共の利益の最大化を目的としているという、著者の指摘(自分はそのように読んだ)に、ヴェネチィアの凄みを感じた。
脚色はあるだろうけど、似たような立場の日本に住む者として、見習うべき点が多いと感じた。