紙の本
見えているものは本物か
2010/03/10 12:18
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
母が亡くなり、再婚した父も亡くなり
継母と暮らすことになった
中二の辰也と小四の圭介兄弟。
辰也は継母を困らせるために万引きを繰り返します。
一方、父が失踪し、再婚した母も亡くなり
継父と暮らすことになった
19歳の蓮と中三の楓兄妹。
蓮は、自分たちに暴力をふるい、
退職後、引きこもったままの継父を殺害しようと計画します。
よく似た二家族が、あるきっかけから知り合います。
やがて蓮と楓の継父は死に、その遺体を隠したものの、
その様子を目撃し、証拠品を手に入れた辰也から
楓に脅迫状が届き始めます。
運命の皮肉な巡り合わせで不幸を背負う
10代の若者たちの閉そく感と
繊細な心が痛々しく描かれます。
何を信じ、何を頼りに
生きていけなければならないかもわからず
追い詰められて罪を重ねる若者たち。
小説の間じゅう、降り続く、台風による雨と強風。
その暴風の中に、凶悪な龍を見てしまっても
しかたのないことでしょう。
しかし本当の敵は社会にありました。
真実を追い求めて二転三転する彼らの気持ちと行動を
降りしきる雨と神話によって翻弄する著者の
新たなる企みに戦慄しつつも、賞賛をおくりたい。
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雨がじっとりと足元から浸水してくるように
ゆっくり、ゆっくりと物語は進んでいく前半。
そのストーリーが一度心に浸水を始めてからは
アッと言う間に息継ぐ暇もなく一気読み。
2組の家族とその兄妹、兄弟達が哀しく、そして
優しく交差していく展開、そして結末は...。
雨が...その水を司る神「龍」によって洗い流される。
期待した分以上に鷲掴みされた作品。
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・・・この巨大な台風は、ロンワン(龍の王)と名付けられた。
母の死後、義理の父親と暮らす 蓮・楓兄妹と、
父の死後、義理の母親と暮らす 辰也・圭介兄弟。
子が義理の父親を殺そうと計画している家族と 、
子が実の母を殺したという自責の念に駆られている家族。
どこまで行けば、最悪にたどり着けるのだろう?
愛する者を奪われ、また 今も傷つけられている彼ら。
それを終わらせるには?
巨大台風に見舞われた数日間、
崩壊しかけた家族の運命が 偶然に交錯し、最悪のシナリオへと向かいます。
鍵になる人物の目ぼし、早めに付きました。
あとは、どこが二転三転するのか?
伏線を飛ばさないよう、じっくり読みました。
心の闇を抱える二組の兄弟が、多くの葛藤を経験しながら、たどり着いた先は?
「家族の事だけは、どんなことがあっても信じなけらばならない。(以下、重要なので省略)」
「ラットマン」に通じる、絶望と救いを感じました。
家族愛と 少年の成長を描いた、感動的な作品です。
龍は、水を支配する神。
人間に罰を与えることもあれば、恵みの雨を降らせることも・・・
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東野圭吾の『流星の絆』とかぶっている。そう思った瞬間からテンションは急降下。
「雨のせいで〜」という章タイトルのように、雨の必要性をことさら強調してるのだが、その理由がよくわからない。雨が関係するのは事件の状況であって、事件そのものの本質には無関係。雨でなければ成り立たない犯罪でもないはず。キャラの心理を雨に例えたところで、私はこの作家には心理描写は期待していないため、イマイチしっくりこない。極端に言うと、タイトルありきの作品なのだ。読者を雨に引き付けたところで、真相は隠しきれてはいないだろう。読み慣れた読者は途中で気付くはず。
ラストでは色んなモノが“豹変”する。この豹変ぶりに作者のご都合主義が透けて見え少しガッカリ。二組の兄弟という設定は面白く、途中まではいい感じで読み進めていただけに、後半のモヤモヤ感が強く残った。
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台風の中で、二つの家族(兄弟)が犯罪に関わらざるを得なくなっていく。
すごいどんでん返しがあるわけではない。
ラットマンに近い感じ。
けれども、ラットマンよりずっと惹きつけられた。
最後に雨がやんで、救われる事を願ってやまない話。
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美しい物語だった。全篇を通して雨のじっとりとした重たいダークグレーの臭いが漂う。作品が放つ臭いに、息苦しさを覚えながら読了に至った。この雨と絶望感を絡め、世界観を貫き通せる筆力は素晴らしいと思う。彼らは今も戦っているんだろうか。どうやって生きていくんだろう。
ただ、ストーリーに少し魅力を感じられず、最後のどんでん返し待ちになってしまった感はある。まぁ、狙いどころが違ったんだろうが、カラスや鬼には劣る。
(2009.06.07)
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雨と共にストーリーが展開していく。
重く立ち込める雲から降りしきる雨が人生を狂わせていくのかもしれない
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それは雨の日のこと。
義母と暮らす兄弟、義父と暮らす兄妹という似たような環境の2組。
短絡的な思いが、知らず知らずのうちに周囲の人間を傷つけていき、やさしい顔をした人ほど。。。
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◎ダ・ヴィンチ2009年8月号
「今月のプラチナ本」
◎週刊文春ミステリーベスト10 2009年国内第8位。
◎第12回(2010年)大藪春彦賞受賞作品。
2009年11月18日(水)読了。
2009−113。
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道尾作品デビューでした。東野さんと似た感じかなぁと思ってたけど、もっと内臓をえぐられるというか、人間の暗くて深いところを突いてくる。
誤解や思い込みに翻弄されて罪を犯し、その「行為」という罪以上の罪を背負ってしまうラストが痛くて・・・。
後になっても読み返すことはないだろうなぁ つまらない とは違う意味で。
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著者は人の深層心理を巧みに描く作家であるとの評判を聞いていたのであるけれど、人の深層心理とはこんなものなのであろうか。何を見て何を感じるのか、その可能性をカードのようにシャッフルして見せることが心理を心得ているということでは決してないだろうと思うのだが、この小説の中にあるのは、そんなゲームのような展開である。
そうだ、これはまさに最初からネタが仕込まれている手品のようなものなのではないか。手際は良い、良過ぎるほどに。無駄なところがない。読み手に、何が隠されているのだろうか、という疑問以外の疑問を抱かせる隙もない。その隙のなさに息が詰まる。
人間の営みには無駄がなくてはならない。偶然というものは往々にして、一瞬で人生を変えてしまうたった一つの出来事、というニュアンスで捉えられがちだけれど、本当の偶然はいつでも無駄の多い必然であって、何度も何度も目の前に現れては選び取られることを待っているきっかけのようなものだと思うのだ。
「龍神の雨」の中でも偶然が物語を大きく左右するが、それが鮮やかすぎる。偶然を求める人の気持ちを利用し過ぎるのだ、といってもよい。そして、その動きが直線的に過ぎるのである。
人は迷うもので、行ったり来たりをする内に何かを選び取るものだと思う。そのどちらへ向かっているのか解らない人間の行動を的確に描き出すこと、それこそが深層心理を描くことに他ならず、それは手際の良さとは縁遠い印象を持つものであろうと思うのである。
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雨がすべてを狂わせていく、
ちょっとしたボタンの掛け違いが取り返しのつかない救いようのない罪へと、、
重く暗いトーンの中で二組の兄弟が雨と龍を狂言回しにして複雑に絡み合いながら戻れない深みに嵌っていくのを切なさとやりきれなさを感じながら読んだ。
「家族のことはどんなことがあっても信じなければいけない。 たとえ血が繋がっていても、いなくても。家族なら、信じなければいけない。」
蓮の贖罪の言葉が僕の胸に突き刺さる。
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相変わらず、タイトルの付け方が上手いな~。
相変わらず、暗い感じで話が進むなぁ~。
相変わらず、ミスリードを誘い、ジョジュらせようとしてるな~。
ってのが感想です。
良くも悪くも道尾ワールド満載です。
今までに比べて若干芯が細いかなぁと感じました。
物語のテーマが「カラスの親指」や「ソロモンの犬」に比べると見劣りがします。
わざわざ干支シリーズにする必要がないのでは??
道尾さん自身が言ってましたが、
ミステリー手法により人間の深層心理がより深く描かれていますね。
書いていない部分で読み手が自然と感情をくみ取れるのはさすがと感じます。
辰也が楓を尾行してるところとか、リアルに頭に浮かびました。
叙述トリックとしては今回はいまいちかも
単に僕が道尾秀介に慣れただけなのかもしれませんが・・・。
今年は4冊本を出すそうで、直木賞候補の「鬼の跫音」と2冊出版済みだから後2冊!
楽しみです。
★★★☆(7点)
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相変わらずこの方の本を読むときはびびりつつ。
ものすごく重い話なのだけど、あっという間に一気読み。
なんとも救いがない、悲しい話でした。
舞台は「雨」の日なので、読んでいる間終始大雨が降り続いているような。視界がよくなくて、洋服が雨に濡れて重い。
相変わらずの騙されっぷり。
蓮と一緒に、途中で「何かおかしい」と思いながら混乱しました。
なるほど、そういうことか。
読後感は悪いけど、面白い。
ちょっとした思い込みとすれ違いから、どうにも戻れない最悪の場所に行き着いてしまう。
できれば、蓮と楓にもどうにか希望を持たせてあげたかった。
どうにかならなかったのかな。
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ゾクゾクする。
ページをめくる手が止められず、読めば読む程に深い闇にはまっていく。
人間の中に潜む、ほの暗い感情を引きずり出す、道尾秀介はやっぱり面白い。