紙の本
弱者救済のシステム。いいなぁ。コーランも人間性豊か。
2009/10/02 21:45
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:りっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
コーラン、気に入っちゃった。キリスト教の聖書は何をいいたいのかわかりづらいし、原罪がなんとも暗すぎて、おどろおどろしい。でも、コーランって、わかりやすいし、人間性が豊か。なので、先ずは一夫多妻について。
『孤児に公正にしてやれそうもないと思ったら、誰か気に入った女をめとるがよい、二人なり、三人なり、四人なり。だがもし(妻が多くては)公平にできないようならば一人だけにしておくか』 「複数の妻と結婚した場合、「平等に扱え」というのは、遺産の相続、子どもへの平等な処遇、果ては、ベッドを共にする回数にいたるまで、原則的に「平等」でなければならないということだ。そんなご苦労なことをあえてする男は、よほど奇特な人物か、大金持ちである」。プフッ。ちなみに婚外交渉は厳禁です。
「では尋ねるが、西欧はキリスト教道徳のおかげで一夫一婦制をとる国が多いが、ホントに守っているのかね」。
ラマダンについても、厳しいと思いのほか、できない時やサボった時の対処法がちゃんと書かれている。「人間性」を愛してくださる神様のようよ、こんなエピソードも。糖尿病を患った著者に、トルコの医者である友人が「おまえのような甘い(いい)男からは、糖が出るものさ」「この一言は、私の頭を覆っていた鬱陶しい霧を吹き飛ばしてくれた。私は、久しぶりに心の底から笑った」。患者が摂生しなくならないかと問うと、「私だって、西洋医学を学んだから、何が原因で、どういう病気になるか知っている。だが、弱っている患者さんを眼の前にして、因果関係をくどくどと言ってきかせるのは、非人間的だろ」」
いいねぇ。ちょっと昔の日本人同様、ムスリムは、家族や共同体を大事にします。そして性に対しては、「秘め事」なんだな。だから、サッカーのジダンが頭突きをしたのに、その理由を口にしないのは、多分お姉さんについて性的なからかいの言葉を相手が言ったのではないかと著者は推察する。そして以下のジダンの主張が、ムスリムの今の心境を代弁しているのではないかとも。
「インタビュアーが、「では、頭突きを後悔しているのですか?」と尋ねると、ジグンは、「後悔していない」ときっぱり答えた。
「このような事件が起きると、いつでも、自分のように(暴力的に)反応した者が罰せられる。だが、悪意の挑発をした者は罰せられない。それは不公正だ。挑発した側も罰せられるべきではないか」
イスラムの側はキリスト教に悪意は持っていない。なんせ、兄弟宗教で、自分たちの方が優れていると思っているから。逆にキリスト教は、世界中に広がったのに、中東だけは広がらない。ムハンマドは生身の人間で、キリストの神性がいかにも嘘っぽく見える。さらに、
「頼れる神様を失ってしまうと、生きていくことの辛さを味わうことになる。近代以降、理性の人をめざすことが進歩だと思い込んでしまった西欧人は、いまさら後戻りすることもできない。こうなると、楽に生きられる人に対して、一種の妬みを抱くものである」。なんかうなずけるね。
フランスではムスリムの女学生がスカーフをかぶって学校に通うのを禁じられた。「二〇〇四年に、フランスは公立学校での「宗教からの中立」を厳守させる「宗教シンボル禁止法」を新たに制定した」から。これも、一種のスケープゴードのようだよ。サンコンさんが言っていたように「理解の前に相手を尊重すること」が大事なんだ。
ヨーロッパでは、今、排外主義が台頭しているそうだ。オイルショック後に
「「遠くからやってきて、厳しい労働環境で仕事をしてくれる奇特な人たち」だった外国人労働者は、「ドイツ人の仕事を奪うし、失業したら失業手当で遊んで暮らしている邪魔者」に変わった。
受け入れ国の社会は身勝手なものである。この態度の急変は、ドイツだけでなく、外国人労働者を戦後の高度成長に利用した、西ヨーロッパ諸国に共通する」。多文化主義も底が浅いねぇ。
「辛い思いをしている人は、イスラムでは弱者とみなされる。弱者を助けることは、ムスリムの義務、それも神の定めた義務であるから、周囲の人間は弱っている人のために善行を積まなければならない。つまり弱者は、いわば周囲の人間が善行を積むために、神の意志でそこに存在するわけであるから、それほど悲嘆に暮れる理由がない。過度に嘆き悲しまずに済む思考回路が、イスラムには存在するのである」、って。経済的弱者に対しても同じこと。新自由主義が吹き荒れた国は、ぜひ見習ってほしいシステムだね。
「何を言われても、暴力を振るった方が負けだ、と言う言説は、私のように戦後民主主義の興隆期に子どもだった世代は、耳にたこができるくらい聞かされてきた。
・・・しかし、この種の平和主義を、数世紀にもわたって理不尽な暴力と抑圧のもとに置かれてきた世界のムスリムに向かって説いても有効性はない。右の頬を殴られたら左の頻を差し出せという平和主義を象徴するような話が、新約聖書のマタイによる福音書(五二一九)に出てくる。しかしキリスト教化した西欧の、いったいどの国が、こういう平和主義を実践したというのか。実際、パールハーバーで右の頬を殴られたアメリカは、左の頬を差し出すどころか、殴った当事者である日本軍のみならず、膨大な数の市民を原爆や空爆で殺戮した。」
「中東地域のムスリムはいまのところ、産油国の一部の人々を除いて経済的な豊かさを享受してはいないし、不公正な状況も改善されていない。
にもかかわらず、暴力を止めろと非難され、民主化を説かれ、表現の自由を守れと批判され、女性抑圧の宗教だと非難され、欧米のスタンダードをグローバルスタンダードとして受け入れることを迫られるのでは、平和は実現しない。過激なイスラム組織に若者が吸い寄せられていくこと自体、希望のない現実においてのオルタナティブであることを、忘れてはならない。」
中東の平和のために、はたして鳩山民主党政権がオバマさんとどんな尽力をしてくれるのか、しっかり見ていかなくては・・・
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イスラムについての考え方が変わると思うよ。
ただ講義の内容を前提にせず文面だけで読むと、
かなりイスラムに肩入れしているように見えちゃうかも?
新書なんで、言いたいこと言い尽くせてない感じです。
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ムスリムの中の一部の過激派は、何に怒りテロを起こすのか
テロを少なくするためには、
1.弱い者いじめ(特に女性・子供・高齢者の殺害)をしない。
2.聖典コーラン・預言者ムハンマド・神を、侮辱・嘲弄・揶揄・不適切なかたちで使用しない。
3.イスラムに由来する価値観や生活習慣を「遅れている」と侮辱しない。
アフガニスタン侵攻、イラク戦争において非戦闘員である女性や子供を数多く殺したアメリカ。
日本ではほとんど流されることのない血まみれの死後硬直した子どもの遺体、子どもの遺体を抱え茫然とたたずむ傷だらけの親の映像、それらを目にした世界の5人に一人の割合でいるムスリムの感情は。
著者の見解
アメリカ大統領 バラク・フセイン・オバマ
バラクは、アラビア語のバラカ イスラムで言う「神の恩寵」を意味する
フセインは、預言者ムハンマド直系の後継者に由来する
父親はケニア出身、名前から見てもムスリムの家系。
母親はクリスチャン
(男性がムスリムで 妻となる女性が他の一神教であるキリスト・ユダヤ教徒でも結婚には問題はないが、妻がムスリムで夫となる男性が他宗教の場合夫となる男性はムスリムに改宗しないと結婚は認められない)
イスラム法上では父親がムスリムの場合自動的に子どもはムスリムとなる。
両親は離婚、オバマ大統領は母親に引き取られ、キリスト教の洗礼を受けた。
みかたによればムスリムであったろう、オバマ大統領は棄教したともみられる。
イスラム法においてイスラムを棄教したら死罪。
オバマ大統領を、ムスリムは棄教として断罪するか、はたまた問題ないとするか、それはこれからの中東に対してアメリカ大統領オバマの出方次第で決まるだろう。 だって。
今後もアメリカが「イスラエル寄りの姿勢」を変えるとは、私には毛頭思えないけどなぁ。
幽霊の正体見たり枯れ尾花
知らないから恐れるのです
拒絶する前に、排除する前に
理解しましょう
理解する努力をしましょう
父を母を子を お隣の席にいる人を 海の向こうにいる人を
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自分たちの持っているイスラムへのイメージが偏っているものであることを感じることができる本だ。
トルコに行くとき、関西空港の中の本屋で買い、行きで読み切ってしまった。
私にとっては、ぼんやり見聞きしている話の真相を、この本で理解するようなエピソードも多くあった。
作者の名前に見覚えがあり、手にとった一冊だったが、読んでよかったと思う。いろんな人に読んでほしいなと思った。特にトルコに住んでいる友人たちに読んでほしいと思った。この本に書いてあることがすべてトルコで当てはまるというのではないけれど、知っておきたいような話もたくさん載っていたように思う。
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[ 内容 ]
06年サッカー・ワールドカップ決勝戦で、ジダンは何に激怒してマテラッツィに頭突きをしたのか。
この問いかけから、イスラム教徒(ムスリム)は、何に怒っているのか、そして我々のイスラム理解はいかに間違っているか、なぜ西欧はイスラムを執拗に嫌うのか、をわかりやすく解きほぐす。
ムスリムに対してしてはいけないこと、そしてそれはなぜいけないか、なども豊富な実例つきで解説。
異文化交流への道を探る。
[ 目次 ]
序章 ジダンは何に激怒したのか
第1章 「テロとの戦い」の失敗
第2章 隣人としてのムスリム
第3章 西欧は、なぜイスラムを嫌うのか
第4章 すれ違いの相互理解
終章 ムスリムは何に怒るのか
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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なぜジダンは06年ワールドカップ決勝戦で頭突きをしたのか?あのシーンを見ていたムスリムには、彼が何に怒ったのか見当がつくのだという。それは人種差別発言でもなくテロリスト呼ばわりでもない。では、いったい何が?
イスラムの教えがどんなものか、ムスリムが大切にしているのがどんな価値なのか。「イスラム原理主義」という造語やテロリズムとの連想が、いかに誤解と偏見に基づいているか。自分の無知を痛感せざるを得ない。前提の違う相手との対話は、相手をよく知り、尊重することから始まるということを、豊富な事例が実感させてくれた。
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【キーワード】イスラム、ムスリム、政治、宗教、中東
「ジダンがなぜ06年ワールドカップ決勝で頭突きをしたのか?」という目を引くフレーズで買ってしまいました。
なぜムスリムはテロを起こすのか、イスラム原理主義とはなんなのか、イスラム女性は差別されているのか、ムスリムの怒りに触れるものはなんなのか。以前からモヤモヤしていた疑問を一気に解決してくれます。
本書を読んでイスラム教やそれを信仰する人のイメージがすごく変わりました。イスラム教はとても合理的で人を許す宗教なんだなと。
欧米が数百年も前からイスラム圏の人たちにしてきた悪行もここに描かれています。知らないこともたくさんありました。911以降のテロでアメリカが悪い、イラクが悪い、イスラムが悪いと言う前にまずは本書を読んで対象についての知識を得てから非難しましょう。
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イスラム教、というか日本人にとって宗教ってなんかピンとこないものだと思うんですけどたまにはこういうの読んで理解くらいはしておきたいな。
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この本を何故読んだか?
それは
ジネディーヌ・ジダン(サッカー選手)が
ドイツワールドカップの決勝で
何で相手選手に頭突きをして
退場になったか?
普通は試合中に頭突きをしません。
しかも大舞台のの決勝で!
そこには何かがある!
でもジダンは多くを語らなかったし、
理解できませんでした。
だから、そのままになっていました。
その疑問を解決してくれたからです
彼が頭突きをした理由は
彼がイスラム教徒(ムスリム)で
あった事にあったようです。
彼は純粋なフランス人ではありません。
アルジェリアからの移民です。
彼が移民であった事は
知っていましたが、
イスラム教徒であった事は
知りませんでした。
イスラム教は
厳しい宗教です。
神や家族、性にに対する冒瀆は
許されません。
その境界を破った者に対しては
暴力を持って制裁を与えることも
あるようです。
ムスリムという人々は
「自分の命を捨てても
守らなければならない何か」を
イスラム生誕以来、
1400年間にわたってきっちり守っている(p.19)
相手選手は
家族(姉)に対して
暴言を吐いたようです。
私達日本人は
仏教徒であることが
多いですが、
ある意味無宗教です。
宗教に無関心であり、
厳しい宗教観がわからないことが多いです。
でも、異教徒に対して理解を示す事や
知る事、認めることは大事ですよね。
彼らが
どんな世界観を持っているか
少しずつ学んでいきたいと思います。
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フランスでイスラム女性のスカーフが禁止されたニュース。日本では女性差別に関連付けて報道されていたが、これはフランスの政教分離の結果とのことを初めて知った。フランスでは行き過ぎた宗教傾倒の歴史を見直し、公共機関では宗教を連想させるものを持ちこまないことがルールとなっているとのこと。だから、十字架を学校に持ち込むのももちろん禁止。
一方、イスラム女性にとってスカーフを取ることはとっても恥ずかしいことだという。いつもズホンの女性にミニスカートをはけ、と言っているようなものか。
それぞれの文化があり、それぞれの思想がある。私たちはどうしても欧米よりの視点で見てしまうが(報道もそのような視点でされている場合が多い)、常に多面的に物事を見る必要があると思った。
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ムスリムについて分かりやすく書いてある。
イスラム原理主義というのは西欧のキリスト教側からつけたもの。
ムスリムにとっては何のことやらわからないもの。
ムスリムは寛容である。
第一自殺は罪。
他人にイスラムを信仰せよと強要することはない。
すべては神の思し召し、という考えはある意味日本の「おてんとうさまに聞いてみな」、という感じで理解できる気がする。
因果という考えがないことは時に問題でもあるようだ。
(本書では乱暴な自動車運転、事故を挙げている。)
原因がわかったからといって解決しない問題は多い。
そういうときにムスリムの考え方は解決の方法のヒントをくれるのではないだろうか。
原因と結果という考えが生まれにくいことが難点になることもあるようだ。
因果を明らかにしたうえでそれを超えた
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ジダンの頭突きや江頭のトルコでの話とかからムスリムが命に替えても守ろうとする一線に迫る。ムスリムがいかに物事を考えているかを知り、非ムスリムの傲慢さに気付かされる。ムスリムと一夫多妻や性について、中東地域で十字軍まで共存していた三つの一神教、現代のムスリム欧州移民たちとイスラムの関係、スカーフを被る女性側の考え、楽天的な性格のイスラムなど、違った角度からものが見えるようになる。
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どうして、世界は平和にならないのかな。
どうして、テロはなくならないのかな。
世界は、どうしようもない事の繰り返し。
宗教、民族、政治。
簡単になんて、解決出来ない事を知る。
対立する、それぞれの、考え方を理解する事で、歩み寄るしか道は無いのではないかと、そう思う。
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ムスリムが何に怒っているのか、分かりやすく読みやすく解説されている。スカーフ問題の矛盾など、興味深い点が沢山あった。この本を入口に、さらにイスラムについて理解を深めたい。
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文化、宗教が違ったら考え方も変わってくるということを再確認できた。日頃からイスラム=悪の枢軸と考えてる人には是非ともよんでほしい。