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枯骨の恋 みんなのレビュー
- 岡部 えつ (著)
- 税込価格:1,430円(13pt)
- 出版社:メディアファクトリー
- 発行年月:2009.6
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紙の本
アラフォーという境界に出る怪
2009/08/04 12:56
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:空蝉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作『枯骨の恋』の主人公・真千子をはじめ本書に登場する女性はみな30~40代の女性、世間で言うところの「アラフォー」である。
彼女たちは立場や性格は違えど、それぞれ「何か」を追い続けることも諦めきれない微妙な境界上で危なっかしく綱渡りする存在だ。
新しい恋を求めることも捨て去ることも出来ない心と、衰えが見え始めながらも生理的には枯れきれぬ身体をもて余す彼女の部屋には、若き頃の亡き恋人・博也の骸骨が立ち続けている。新しい恋人を誘っては自室に連れ込み、骸骨に痴態を晒し続けて己の中で暴走するモノを満たし、ほとぼりが冷めては沈黙する髑髏に独り語りかける。物語は彼女が身体を満たすためだけにあったばかりの男を部屋に入れた初めての夜、自分を愛撫する男の顔を直視したところで終幕を迎える。(『枯骨の恋』)
親友といいつつも微妙な優劣が水面下で肥大した三人の女たち。音信不通になった親友の家を訪れた女はすべて失い狂気に陥った彼女を見る。(親指地蔵)
父に捨てられ妹と母親の世話に自由を持てず婚期すら逃してきた姉。母亡きあとも家をけっして手放さず「翼をください」と歌いつつスコップを手に庭にでる。あるものを埋めるために。(翼をください)
パワハラで自殺した同僚の死を知り彼女の実家を訪ねるが、母親は会社への提訴を拒否する。娘の骨を埋没しにかつて口減らしに妊婦を放ったという穴「アブレバチ」へと女を誘う。(アブレバチ)
偶然見つけた骨董喫茶で勘定を払わない神出鬼没の人々を女は見る。マダムによれば彼らは人でも幽霊でもない、骨董に憑いた持主の想いのビジョンであるという。その奥部屋でかつて愛用したフランス人形と離縁した父の名を呼ぶ自分にそっくりの女を見つける。(メモリイ)
どの女たちも何かに縛られ、何かを諦めきれず、だからと言って自分では前にも後ろにも進めず消化不良にもがいている。
劇的な恋を謳歌していた若さと恋人、仕事とキャリア、家族や古い慣習からの自由、母親や子供、姉妹などのしがらみからの解放・・・
今更求めるにはピークを過ぎた身体と心、かといってすべてを諦めるにはまだ未練の残るギリギリのライン、いわゆるアラフォーに差し掛かった彼女たちの姿は時に醜くもあるが、しかし哀しいほどに切ない。
時代は変われど「女」はいつだって狂気を孕んだ姿で怪談・ホラーに描かれる。女がその狂気に溺れ周囲を飲み込み暴走する時、それは彼女たちが自分には手に入らないもの、失ってしまった何かを狂おしいほど求めているときだ。
私ももうすぐその頃に差し掛かる。女であれば誰もがその境界線を乗り越えなくてはならない。
その時、私はどうやり過ごすのだろう?その時何を諦め、何を最後につかむことができるのだろう?
「彼女」が喫茶『メモリイ』であるものをようやく見つけたように私にも何かひとつ、大切なものが手に入ればいいと思う。たとえそれが恐怖の先にあっても、狂気に中にあってもだ。
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