投稿元:
レビューを見る
翻訳を翻訳と思わせない、土屋政雄さんの名訳。
ひとつだけ残念だったのは、「Cellists」(複数形)が「チェリスト」(単数形)と訳されていたこと。
あの話は、「チェリストたち」の話だと思いました。
投稿元:
レビューを見る
カズオ・イシグロの最新刊。イシグロファンならば、訳者が土屋政雄であるだけで嬉しくなるはず。そして、もちろん今回も面白い。音楽をめぐる五つの物語。喪失感、といったものがイシグロのモチーフになっているのは誰でもわかっていると思うのだけれど、中でも「降っても晴れても」と「夜想曲」のスラップスティック風味が素晴らしい。この人、実は面白い話もイケルのですね。けど、一番好きなのは「モールバンヒルズ」。読んだあと、緑の山の風景を思い描く。
投稿元:
レビューを見る
▼半分まで読了。超いい気分。夕暮れに、古い音楽を聴きながら、アイスコーヒーと読むのが一番だよ。どうやったらこういう空気感を演出できるんだろう。小道具がいいのかな。……それとも文体のテンポ?
▼読み終わっちゃった……。いい小説だなあ。切なくてロマンチックでキュートで。▼うん。とてもいい小説だよ。それしか言うことが思い浮かばない。読書って最高だよ。もう一回頭から読み直したいと思う小説は久しぶりだ。(09/8/5 読了)
投稿元:
レビューを見る
どこかニュートラルな雰囲気があって、長編小説のカズオ・イシグロとは少し異なる趣が確かにするのだが、カズオ・イシグロはカズオ・イシグロなのである。短篇では書き切れない何かを意図的に削っているのだろうか。そんなこと思いつつ、自分が、今、存外カズオ・イシグロを読みたい気分であったということに気付いた。
短篇集の書き下ろしは初めてとの説明があとがきにあったけれども、前に柴田元幸編纂の「紙の空から」でカズオ・イシグロの短篇は読んだことがある。それはアンソロジーの最后をとても印象的に締めくくって見せていた。そして、短篇から受ける印象は長編小説におけるカズオ・イシグロとほとんど変わりがなくて、湿度が飽和状態を越えた冷たい空気に満ちているような、あるいは多分に有機質的な匂いに満ちている空気を吸った時のような印象なのだった。
一方、この「夜想曲集」から感じるものは、無機質な乾いた空気(と書いてみると明らかに異なるようにも思うのだが、適切な言葉が見つからないもの)である。並べられた五つの短篇はどれも(これもまた適切な表現とはいえないのだけれど)さらりとしている。さらりとしてはいるけれども、終わらない何かが胸の中で鳴りつづける、そんな物語たちである。
多分、今、そういう「物語」が読みたかったのだなと解る。大団円ではなく、さりとてどこへ行ってしまうのかがさっぱり解らないというのでもなく。ゆっくりと風が砂丘に風紋を描くような、そして描かれた後はまた風によって消されていくような、そんな物語が読みたかったのだ。五つの短篇の配置も、舞台を中心に見てみれば初めに提示されたフレーズが後からまた変奏されて提示されるような配置になっていて、始めと終わりが緩やかに繋がり、静かにやってきて静かに去るような印象を与えているのだろう。
カズオ・イシグロがこの短篇集の中で描くような、限られた空間の中の限られた人々の物語、それが、自分の頭の中でしつこく鳴りつづける雑念を鎮めるのに一番効果的であったことを発見して、少なからず驚いている。
投稿元:
レビューを見る
2009.12.14. せっかく順番が回ってきて、1番最初の短編だけ読んで。静かでいい雰囲気とか思いつつ、編み物にうつつを抜かしていたら、もう返却期限です。さようなら。
2009.09. 書店の平台にて発見。図書館で予約中。
投稿元:
レビューを見る
音楽と、夕暮れと、大人の男女についての短編5つ。
読み終えて、好きな本だ・・・・と思う。何が好きなのか?よくわからないがとにかく好き。
投稿元:
レビューを見る
以前、「わたしを離さないで」を英語版で読みました。今回は和訳版を読みます。
ワタシが心から慕う友人が以前薦めてくれた作家です。楽しみに丁寧に、読みます。
すごく良かったです。
この作家のベースは日本ではないな、というのが文章からしっかりと感じられました。
どの短編も登場人物の背景や関係性に曖昧さや不気味さを感じる。
その漠然とした感じこそが人間の在り方そのもののように感じられました。
全体に薄暗い雰囲気があってでも確かな手ごたえがある小説でした。
投稿元:
レビューを見る
イシグロ氏初めての短篇集と聞いて凄く期待した。読了後思わず「あー面白かった」と声が出た。コミカルな振り方がこぎみよい。タイトルから分かるように全編に音楽がベースになっているが、とても完成された曲の一つ一つに思わずハミングした。でもイシグロさんは長編が読みたいわ。
投稿元:
レビューを見る
カズオ・イシグロでは珍しい短編集。
副題通り、それぞれに音楽をテーマとし、夕暮れがモチーフになっています。
ヨーロッパの片隅で、男と女の出来事が…
奇妙な出会いや、どこかもの憂げなムードも共通しています。
ほろ苦くも切ない、芳醇な味わい。
ヴェネチアのサンマルコ広場でギターを弾いている男が、母が大ファンだった往年の歌手を見つけ、興奮して話しかけます。
その歌手は奇妙な依頼をしてきて、ギター弾きはいぶかしく思いつつも、彼の妻のために演奏をするのですが。
この夫婦はやり直そうとしているのか、別れようとしているのか、それとも…?と引き込まれます。
独特な風合いが濃厚な手応え。
音楽家を目指してチャンスを待つ若者が、民宿の仕事をしつつ悩む話や、才能がありすぎる?音楽家が誇り高さから先生につけず、進む道を迷う話など。
全体として、意表をついた視点の面白さと、なかなかない苦みとユーモアで、うわ~まいったな!という。
作者が若い頃はミュージシャンを目指して何年も過ごし、挫折した経験があることを考えると、この濃厚さも納得。
いや、違う道もあるんですよ!…でもね…
登場人物の命運にもまた、感慨がありますね。
この本を読んだのはだいぶ前で…
なんか言葉が出てこなくて。
「わたしを離さないで」もあの長さにしては恐ろしく読むのに時間かかったし。私にとってはそういう(どういう?)作家さんです。
私がカズオ・イシグロを読み始めたのは、映画化された「日の名残り」を見てから。
イギリスの大邸宅を取り仕切る執事が主人公で、アンソニー・ホプキンスが堂に入った演技をしていました。仕事に忠実なあまり、信頼する女中頭との恋を逃してしまうほろ苦さも。
初期の「女たちの遠い夏」(「遠い山なみの光」と改題したそうですが)は、戦後の混乱期に母に愛されなかった娘が、大人になって自分の娘と上手くいかないという話でちょっと暗いので~誰にでもオススメというわけにはいきませんけど。
もちろん筆力は十分、感じられました。
「わたしを離さないで」がなんといっても印象的で、精緻でもの哀しく、あたたかさと清らかさがあって、大好きです。
投稿元:
レビューを見る
イシグロ氏初の短編集で私の初・イシグロ。
副題にあるように、五編とも、音楽と夕暮れがテーマです。
音楽を聴くように、ゆったりとリズムにのれるような物語ばかりで心地よかった。
もうひとつ、どの話にも共通しているテーマは男女関係の危機。人間関係ってすごく不毛で面白いなと思った。
『老歌手』
『降っても晴れても』
『モールバンヒルズ』
『夜想曲』
『チェリスト』
二話目が好み。なんかシュールで。
投稿元:
レビューを見る
人生の夕暮れにさしかかっても、なおじたばたせずにはいられないことの滑稽とかなしさ。最後の一篇である「チェリスト」は、陽性のユーモアが少ないぶん凄みがあって、ちょっと怖い。
投稿元:
レビューを見る
クラシックとかはあんまり興味はないのだけれど、テーマを聞いてから音楽を聴くと、なんだか違ったもののように聞こえる気がします。
まだ読んでないんですけどね。
投稿元:
レビューを見る
それぞれのある数日を切り取ったような、
それでいて夢の話でもあるような不思議な魅力に
あふれた本。
「日の名残り」の原作者。
投稿元:
レビューを見る
かなり前に買ったまま積んでました。帯かあらすじかに「連作短編集」ってなってましたが、それほど強いつながりを持った作品ではなかった気が。音楽やミュージシャンを中心とした5つの物語。ちょっとずつ不思議なテイストで、余韻が残る物語でした。短編、というにはひとつずつがちょっと長かったかな。
投稿元:
レビューを見る
音楽と夕暮れをテーマに、中年男女の微妙なすれ違いの日常風景を描いた短編集でした。
互いに情があるのに修復できない関係は、優しくもあり悲しくもあり。それを第三者の目線で描いています。離別する当事者目線じゃないのが逆に感情移入できました。間に挟まれ右往左往したり、クスッと笑える話もあり。