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紙の本

「パレットにたくさんの色があるほど、美しい世界を創り出せる」

2010/12/13 00:43

10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る

本書では、自閉症スペクトラム障害の当事者である
テンプル・グランディンとショーン・バロンが自らの経験に基づいて、
人間関係を構築していくために必要な
「人間関係の暗黙のルール」を10項目に整理して紹介している。

自閉症については専門家による専門書が多く、
最近は当事者による自伝的作品や複数の当事者の共著本もあるが、
本書のように2人の著者が協働して
編集者が間に入ってまとめるというタイプの本は数少ない。

本書は3人の原稿から構成されている。

テンプルとショーンの執筆部分は、
全章にわたり、文章の前に名前を冠して執筆者がわかるようにし、
その他の部分は、編集者ベロニカ・ジスクが、2人の意見を取り入れながら執筆している。

訳者の門脇陽子は、ドナ・ウィリアムズの自閉症の豊かな世界など、
他にも自閉症スペクトラムに関する本を訳している。

独特な構成を持つ本だが構造が掴みやすく、400ページ超でも読みやすいタイプの本であった。

テンプルとショーンは、異なったタイプの自閉症である。

テンプルの言葉を借りると、
テンプル自身は、「感情的なつながりに関連する
身体的あるいは生化学的な回路がもともと欠落しているタイプ」、
ショーンは、「人と感情的につながるのに必要な建築材料はそろっていて、
あとは橋の形に組み立てるだけというタイプ」である。

テンプルによると、ドナ・ウィリアムズもショーンと同じタイプになる。

そういった相違もあって、社会意識を身につけるまでの2人の道のりには違いがある。

テンプルは生まれたときから「典型的な自閉症」で、
4歳近くまでことばを話さず、触覚と聴覚の感覚過敏があった。

周囲とのはっきりした違和感を覚えるようになったのは10代に入ってからだった。

その時期までに、物作りや生活の仕組みを解明することが好きだったことによる
成功体験を積み重ねていた。

そのため、高い自尊感情、自発性、創造性、柔軟な思考を身につけていて、
周囲の無理解に耐え抜くことができたのである。

一方、ショーンは、幼少の頃から深い孤独感と根深い不安や恐怖にさいなまれていた。

ことばの遅れと感覚過敏があったが、彼の行動は感情に支配されている。

表面的には両親や周囲の人々に無関心なように見えたが、
人と感情的につながるための種は宿っている。

自分の思考の枠から一歩踏み出して柔軟に考える能力や、
他人の視点でものごとを見る「心の理論」の能力に欠落があった。

彼が自尊感情を育てていくのには時間を要している。

テンプルは人生に対しても執筆に対しても、分析的なアプローチをとり、
社会生活能力を習得する過程でのできごとや考え、
論理的で秩序のある生き方のスタイル、社会意識の新しい概念や観点が描かれている。

ショーンは、人生にも文章にも感情がみちあふれている。

自閉症を乗り越え、対人関係の中で経験してきた不安、恐怖、あこがれ、喜びなどが、描かれている。

本書は次のように構成されている。

謝辞
読者へ
舞台裏―序にかえて
第1幕 社会的思考の二つの視点
  1 私の世界は私のなすこと―テンプル・グランディン
  2 社会意識のもうひとつの視点―ショーン・バロン
第2幕 二つの思考・二つの道
  自閉症的思考は社会理解にどう影響するか
幕間
第3幕 人間関係の暗黙のルール10ヵ条
  1 ルールは絶対ではない。状況と人によりけりである。
  2 大きな目でみれば、すべてのことが等しく重要なわけではない。
  3 人は誰でも間違いを犯す。一度の失敗ですべてが台無しになるわけではない。
  4 正直と社交辞令とを使い分ける。
  5 礼儀正しさはどんな場面にも通用する。
  6 やさしくしてくれる人がみな友人とはかぎらない。
  7 人は、公の場と私的な場とでは違う行動をとる。
  8 何が人の気分を害するかをわきまえる。
  9 「とけ込む」とは、おおよそとけ込んでいるように見えること。
  10 自分の行動には責任をとらなければならない。
エピローグ
訳者あとがき
参考文献

本書に挙げられている人間関係の10のルールは、
おそらくは定型発達の人ならば、文章化しなくとも「暗黙のルール」として、
自然と身につけてきたことかもしれない。

昨今の人間関係で傷ついている人の多さを考えると、
もしかすると「昔はそうだった」ということになってしまうのかもしれないが。

自閉症スペクトラムの人も定型発達の人も、社会に出る前に一読しておくと大いに学ぶところがあると思う。

この選ばれたの10個のルールそれぞれを支えるのは2人の今日までの人生の物語である。

著者は、「本書を通じて、自閉症のある人と定型発達の人が互いの文化をより深く意識し、
理解し合うようになること」を願っている。

「そのためには、自閉症のある人が人間関係をどうとらえているかを伝えるのが一番よい」と考えた。

自閉症のある人々の世界には別の文化がある。

「私たちにも私たちなりの社会的規範や暗黙のルールや思考の観点がある」と著者らは言う。

しかし、「文化的多様性の尊重よりも盲目的な画一性を要求する、
もう一つの文化の中で、私たちは毎日を生きていかなければならない」と。

自閉症の人たちは、定型発達の人たちのやり方が正しいからと
それに合わせるように求められているが、はたしてそれはどうなのか。

本書は、「自閉症のある人に一般の人の視点を教えること」ではなく、
「自閉症のある人の人間関係の視点を紹介することによって、この流れを逆転しようと試みた」のである。

どちらの視点もバランスよく持っていたいものである。

   この地球という星に人類は何億年も暮らしてきましたが、私たちの社会意識はいまだ未熟な段階にあります。
  互いに調和し尊重しながら共存するためには、私たちみなが習得すべきスキルがあります。

  パレットにたくさん色があるほど、美しい世界を創り出せるはずです。

  そして誰しも互いに貢献できるものを豊かにもっているのです。

  (舞台裏―序にかえて p.17)

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