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投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
「べき乗則」というのは、「規模が2倍になると発生する確率は4分の1になる」というもの。
ただし、"2"という数字は例として出しただけで、対象によって別々の値になる。
この法則は平たく言うと
「規模の大きい事が起きる確立は低い」
と、あまりに当たり前な事になってしまうが、非均衡状態、つまり不安定になる直前の状態にあるものの多くに成り立つ、というのがミソ。
例として挙げられているのは、
地震
森林火災
種の絶滅
株価の動き
など。
規模が大きいものと小さいものには原因の違いはなく、どこまで影響範囲が広がったかの違いのみ、だという。
不安になるのは「べき乗則」が成り立つものには「周期」「典型的な規模」といものは存在せず、予知ができない、という点。
特に地震に関しては間違っていて欲しいと思う。
ただ、逆に規模の小さいものがたくさん起きていれば、規模の大きなものになるほどの「力」は蓄えられない、とも言える。
「適度なガス抜き」というのは人間の集団に対してだけでなく、自然現象が相手でも効果的らしい。
ところで、原題は "Ubiquity"。辞書を開くと「偏在性」と載っている。
タイトルは”歴史は「べき乗則」で動く”だが、最後の章で、その「可能性」について論じれいるにすぎないので、日本語タイトルと内容に相違がある。
しかも一歩間違うと、トンデモ本として扱われかねないタイトルだ。もう少しいいタイトルは考えられなかったのだろうか。
SFの古典、アイザック・アシモフの「ファウンデーション」シリーズでは、人類の未来を予測する「心理歴史学」という理論が登場する。
読んでいるうちにその「心理歴史学」の話を連想したが、あとがきで触れられていた。
自分の独自の考えでなかった事が判明し、残念。
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タイトルどおりの内容。地震のマグニチュードと発生頻度の関係と、大規模森林火災の類焼面積と発生頻度の関係についての記述は興味深かった。あとはいまいち。
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ある小さな出来事が、すぐ近くに影響を与え、さらにそれらがすぐ近くに影響を与え・・、結果として、とてつもない出来事が発生する。この「べき乗則」は、雪崩や地震を例に説明されることが多い。その分布はスケール不変的となり、小さな地震を引き起こすものと大きな地震を引き起こすものとは同じものであるという結論に至る。この「べき乗則」は、自然現象だけでなく、マーケットの変動や流行といった社会現象にも見出すことができ、歴史学にも適用することができる。
世界が動くときには、その社会が臨界状態になっていたということ。「歴史はかなりの程度、数の問題」という指摘に納得。
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長らく読み途中だったマーク・ブキャナンの著書。
2009年に文庫が出されてわりとすぐに買ったのだが、長いこと積読にしてしまった。
歴史はベキ乗則で動くというタイトルに惹かれて買ったのだが、まさにそれはリーマンショックならびにブラックスワンを読んだ結果に本書を購入したという経緯がある。
紹介文は下記の通り。
「混沌たる世界を支配する、究極の物理法則「べき乗則」。それは砂山の雪崩、地震、絶滅などの自然現象だけでなく、株価変動や流行といった社会現象にさえ見出せる。自らの発見を可能にした科学の進歩過程にも現われるこの法則を、人為と偶然の蓄積である「歴史」全般に敷衍したとき、私たちが手にする驚くべき洞察とは……統計物理の基本から壮大な応用可能性までを語りつくす、スリリングな科学読本」
当時、正規分布マンセーな自分は、金融デリバティブや金融リスク管理の何が問題だったのかということに躍起だったような記憶がある。
そこで、このベキ乗則の存在を知った。
まあ、資本市場はこの出来事に対し、手法の見直しではなく規制を強化することで対応し、個人的にも興が削がれたような気持ちではあった。
なぜ今になって引っ張りだしてきたかというと、ネットワークサイエンスが個人的にホットだったので‥ということだ。
当時はまったく気づかなかったが、6次の隔たりの件があったり、解説に増田先生が寄稿されていたりと、なかなか円熟味の増す内容である。
本書はこのベキ乗則が日常の物理法則や歴史の出来事などにも当てはまると事例ベースで平易に紹介してくれている。
目次は次の通り
第1章 なぜ世界は予期せぬ大激変に見舞われるのか
第2章 地震には「前兆」も「周期」もない
第3章 地震の規模と頻度の驚くべき関係:「べき乗則」の発見
第4章 べき乗則は自然界にあまねく宿る
第5章 最初の地滑りが運命の分かれ道:地震と臨界状態
第6章 世界は見た目よりも単純で、細部は重要ではない
第7章 防火対策を講じるほど山火事は大きくなる
第8章 大量絶滅は特別な出来事ではない
第9章 臨界状態へと自己組織化する生物ネットワーク
第10章 なぜ金融市場は暴落するのか:人間社会もべき乗則に従う
第11章 では、個人の自由意志はどうなるのか?
第12章 科学は地続きに「進歩」するのではない
第13章 「学説ネットワークの雪崩」としての科学革命
第14章 「クレオパトラの鼻」が歴史を変えるのか
第15章 歴史物理学の可能性
訳者あとがき
どうだろうか?
少しでも興味を持っていただければぜひ読んでいただきたい。
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読んでいて2つの点について考えさせられた。
1点目。地震のように、発生の物理学的メカニズムはほぼわかっているのに、天気予報程度の予測が出来ないのはべき乗則が原因だとのことだが、でもそうだとすると気になるのが、べき乗則になる理由だ。正規分布が中心極限定理で導かれるように、べき乗則についても個々の要素や要素間の関係について何らかの仮定が成立するときそれが導かれるという形で、由来が解明されるべきだと思う。地震、ネットワークの構造、富の分布というような、お互い全く関係性がありそうにない現象に共通的に見られる分布であるのなら、正規分布と同様に、「相互作用」する要素間に見られる本質的分布といった感じのかなり単純なルールでそれが導かれるのだと思われる。
2点目。本書でよく出てくる「予測できない」という言葉が出てくるが、その言葉の意味は、カオス的な意味、つまり初期値の微小な差により結果が大きく異なるので予測できないという意味(つまりラプラスの悪魔がいれば原理的には解消される予測不可能性)か、それとも不確定性原理的な意味での絶対的な予測不可能性なのか。別にべき乗則に従おうが何の分布に従おうが、確率的な現象は確率でしか予想できない。個々の現象の予測、たとえば震度7以上の地震が何カ月後にどこそこで起こる的な予想は、どんな分布に従ったとしても確実にはできない。しかしそれは前者的な意味の予測不可能性であり、はっきりいって当たり前といえば当たり前すぎることである。もっと根本的な、例えば未来における対象の状態を知ると対象の状態が定義出来なくなったり、あるいはその逆になったりといった根源的な意味での予測不可能性はないのだろうか?
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べき乗(冪乗)とは、ある数字を掛け続ける操作のことをいう。累乗(るいじょう)といった方がわかりやすいだろう。様々な現象にべき乗の法則があるそうだ。
http://d.hatena.ne.jp/sessendo/20100520/p5
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つい1~2か月前、カール・ポパーの「歴史主義の貧困」を読んだ。そこには、歴史は長期予測は絶対に不可能である、ということだった(短中期については、否定していない)。そこまでしっかり読んだわけではないから、具体的に覚えてはいないが、納得した覚えがある。確か、科学の発展が評価できないからだったっけな。
しかし、彼がその論拠で述べたように、科学の発展は予想できないようだ。べき乗則。これを用いれば、ある程度の歴史予測を出来るかもしれない。
この本は、そのべき乗則を解説した本。そもそもどのような経緯から見出されたのか、どんな法則なのか、それを用いるとどんなことが分かるのか、などという事が書かれている。数式が書かれていないのがニクい笑
べき乗則、ちょっと勉強してみたい。
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かなりおもしろい。「べき乗則」そのものは、あれーっその程度のことか、という感じではあるのだが科学の発展理論ということでは素人向けによく書かれている。読み終わって、さてなにか、といわれたときにはっきりと残っているというわけではないのだが、読んでいる途中は楽しい。
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最近の(といっても2000年までの)べき乗則(power law)にかかわる自然科学から社会科学までの研究を紹介して、今後の展望を述べたもの。本書で解説される自己組織化臨界現象の知見を歴史学のような分野にも応用していくという展望はやや楽観的すぎると感じました。べき乗則の原因は必ずしも自己組織化によるものだけではないからです。
べき乗則の存在が意味するスケール不変性(小さな出来事も大きな出来事も同じ「法則」にしたがっているということ)については面白く読めるでしょう。
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ありきたりな表現だが、この本を読んで人生観が変わった。
自分なりの解釈と言うか極論すると「全ては無意味」で、なんか仏教思想にも通じていくような気がした。これを読んでから「複雑系」を読んだので特にそう思うのかもしれないが。
本来この本の主題は「予測不能であるということが証明できる」とは思うのだが、自然現象などを事例にあげているため内容や意義はもっと深い。
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複雑系を経済と物理の側面から見ているもの.
人工生命系の分野を知っている人なら,おなじみの名前がちらほらと出てきます.
とっても,興味深い...
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"期待していただけに、ちょっと残念!?"
【選書理由】
タイトルに惹かれて。
【感想】
歴史は「べき乗則」で動く と書いてあったので、
グラフや数値を多用して説明しているのかと思いきや、
そこまでではなかった。むしろ少なく感じた。
それもそのはず。原題は「UBIQUITY」。
文庫化前のタイトルは「歴史の方程式」。
そして文庫化で「歴史は『べき乗則』で動く」。
改悪だと思う。現代を確認しなかった私にも責任はあるが。
この本に興味がある場合、以下の順番がオススメ。
サイト:「なんでもフラクタル(WIRED VISION)」を読む。
面白いなぁと思ったら、本を手にとり巻末の「解説」を読む。
理解できそうだなぁと思ったら、購入して本文を読む。
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古い積読本だったのだけれど、地震•核反応ともに関係がある本なので、今読んでいてとても興味深く読めてる
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世の中の多くの人は何かにつけ「計画」や「規則性」や「法則性」を求める。
しかし最新の複雑系科学によれば、実は予期できないことも多い。
地震や経済もそうだ。
そして科学の進歩や人類の歴史も同様に、べき乗則にしたがって予期できないとしている。
実感としては、そういうこともあるかもしれないと思う。
(しかしそれだけではない気もする)
いずれにしても、何でも説明できる。予想できる。計画できる。
と思ってしまう人類の癖は治したほうがよいと僕は思う。
なかなか面白い本だった。
そもそもどうしてこの本に興味を持ったかというと、
将棋の羽生さんが自著の中で紹介していたからだ。
羽生さん、やっぱりただ者じゃないな。
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なるほど……と思いつつも読み進むロマンが沸かず、途中退場となる。うーん。自然科学好きならワクテカするところなのかな。