紙の本
表紙の色がきれいだった。
2009/11/23 11:21
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:野棘かな - この投稿者のレビュー一覧を見る
書店に並ぶ文庫化されたこの本に気がついて「色がきれいだな」としばし足を止めてみつめた。
表紙と同じくらい、ちょっと題名にもひかれる「月下の恋人」は11の短編が収録されている。
最初に「月下の恋人」から読んだ。
どこにでもあるような恋人同士の別れのはずだった。
海を見に行こうよと、雅子は言った。
海岸を走り導かれるように見知らぬ岬の付け根の入り江に着き、海辺の旅館に泊まった。
そこから先は、スポットにでも入り込んだように、一夜の不可思議な体験をする。
ぐずぐずと独りよがりな想像ばかりしている男と悲しい目でそれをみつめる女。
だが、関係に終止符をうつに足りるというべきだろう心象風景に出会った二人。
これは男側の目で綴られた話だが、女側の目から綴る話をつくるとさぞ面白いだろうと一人ひそかに笑った。
「黒い森」は、謎のまま、中途半端な謎のまま終わった。
謎解きをするヒントがもう少しあれば、不毛な想像をしなくて済むし、そうなんだよね、人にはいろいろあるよね、とそれなりに納得し、釈然としない思いは残らなかったと思う。
「回転扉」は、読み始めてすぐ記憶の底から甦る何かがあった。
読みながら読み人にデジャヴを感じさせ、思い出そうと苦慮させる作品なのだろうか。
結局思い出せなかったが、団塊世代以前の作家の匂いを感じたのかもしれない。
「忘れじの宿」が一番印象に残った。
話しの内容ではなく、元大部屋女優らしい女の過去に惹かれ女の話をもっと聞きたかったし、忘れる壷に興味深々になった。
「忘れとうても忘れられへんことは、おつむから下がってきて、ここで痼になります。どないしまひょか。ほぐしてしまえば、きれいさっぱり忘れはりますえ」
と私にも言ってほしい。
忘れる壷、そんな壷があるなら是が非でもおしえていただきたい。
「ほぐして」と私なら即答するだろう。
ほか、情夜、告白、適当なアルバイト、風蕭蕭、同じ棲、あなたに会いたい、冬の旅、「月下の恋人」補遺。
どれも男性視線の面白い短編だと思ったが、できれば最後はなるほどと感じさせる作品にしてほしい。
そういう嗜好なのでしょうか、曖昧が好きなのでしょうか、そういう時代の人なのでしょうか。
読み人に、どうにでも受け取れるような煙に巻くような筋に持って行かないで、そうなんだよな、人生ってそうなんですよね浅田さんと言わせるような話の作りにしてほしい。
怪談は怪談で、不思議系は不思議系でいいのだが、浅田さんには、もっとさっぱりと人生の機微や人間の根幹に触れる小気味良い短編を書いてほしい。
視点がぶれない、鋭い洞察、それでいてやさしい視線、文体に品がある作家さんだから。
もっとチカラ強く読み人を引っ張って、人生ってこういうものなんだよ、わかるかい、僕はそう思うと言ってほしい時もある。
紙の本
続きが気になる終わり方
2017/10/22 22:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:L - この投稿者のレビュー一覧を見る
続きが気になる終わり方をする短編集が多かった。特に「黒い森」は続きがあるのかと思っていたのに続きはなくてすごくもやもやが残った。続き、書いてくれませんかね?
紙の本
相変わらず SFチック!?
2017/05/19 14:25
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:michel - この投稿者のレビュー一覧を見る
得てして男性作家の書かれる小説は 訳もなく主人公の男がモテる。何故にこうまで女は然したる魅力のない主人公に惚れるのか。何故にこういう女が自分の周りに居ないのか? 何時も何処でもそういう女を求めている自分には そういう機会が巡ってこないのか? 尤も本作者も 小説とは所詮そういう絵空事だと 割り切っていらっしゃるようだが。だからこそそういう小説が書けるのだと。ただし拙者の表題に有る様なストーリー仕立てが 直木賞作家の所以なのだろうが。例えば 初掲の 情夜を有る意味体言留めにせずに あの続きを極めて現実的な内容で中・長編仕立てに書き上げられれば また また違った作風の境地が開けるのかも知れない。尤も それは 他の作家の作品に譲る とおっしゃることだろうが。しかし そこまで読 者に 切り捨てとまで思われる余韻の残し方をされると こちらとしても フラストレーションが溜まるばかりで どれをとっても似たか寄ったかの印象を禁じ得ない。きっと先程の作品の想像される後続のストーリーとしては 同作家の見知らぬ妻へ と内容をあわせ持った様なストーリーを考えてしまうのは 些か拙速・安直過ぎるであろうか。
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短編が11話。半分くらいで途中放棄してしまった…浅田さんにしてはちょっと物足りない。
なんかなぁ、「別の浅田作品の○○に似てるなぁ」っていう、どこかで見たような話と人物が多い。あとオチがよくわからないまま終わってしまう話。ただ、『適当なアルバイト』の2人組と大正の書生のような居住まいの隣人はいいキャラだった。
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十一編からなる短編集
なかでも【忘れじの宿】が 心に残る
マッサージは 身体全体をほぐしてくれるだけかと思っていたら
小説の中のマッサージ師(女性)は 身体の中から忘れじのポイントを探り当て
もみほぐしてくれるのです。
誰にも 忘れじのポイントはあるのではないかな?
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短編11篇。ちょっとゾクっとするお話や、え〜だから何なの?と消化不良の結末や…私は「告白」がジーンときました。
2009年10月1日読了
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必死で書いたレビューが消えたよ。
もう信じられません。
今、また同じことは書く元気はないので、
とりあえず良くも悪くも浅田次郎っぽすぎたかもしれない。とだけ。
学生運動とかあの時代背景の話は、もうちょっと食傷気味かな。
黒い森
回転扉
忘れじの宿
この3作品はいいな、と思った。
でも、それ以外はちょっと微妙。
季節感の描写とかは本当にすばらしいけれど、
表題作が期待はずれだったから、ちーと辛口です。
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一つ一つの作品が短い分、
それぞれの読後にしんみりとした
(「適当なアルバイト」「黒い森」に関してはぞっとした)
余韻が残った。
「同じ棲」はハートフルなショートショート、
「告白」は(重松清テイストの)家族もので
個人的には楽しめた。
大抵の話に「寡黙な」男女が登場していて
なんとなくにやにやしてしまった。
作者ご本人、もしくは
その身の回りの人たちが
作品に反映された結果だろうか。
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切ない。
浅田次郎さんのお話って、何気に怖い話が多いんです。
幽霊がおどろおどろしく出てくるような話ではないのですが、たとえば登場人物の一人が、生きているのか死んでいるのか分からない。たとえば目の前の人は「今」の人なのか、「過去」の人なのか分からない。そんな話が多いんです。
この本にも、そんな話が多かった。
だけど、それが切なかったり、胸にきゅんときたりするから不思議です。
この中で心に残ったのは「告白」、ひっかかるのは「黒い森」です。
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忘れじの宿より
しがらみや。
うらみつらみは水に流し、恩や情けを岩に刻んでいきよなぞというのは、人生をなめくさっている人間の言うこっちゃ。
生きるということは、そんなんい甘いもんやない。
しがらみというのんは、「柵」という漢字を書くのやそうどすなあ。
水流れをせき止める棒杭のことどす。
なるほど、そないに都合のええしがらみはあらましまへんどすやろなあ。
あなたに会いたいより
昨日を信じ続けることと、昨日を忘れ去ることの、どちらが幸福なのだろう。それはもしかしたら、人の生き死に」よりも重大な問題かもしれない。
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浅田氏の小説集には月にまつわる話が多いですね。先日は『月島慕情』を読みましたし、ずいぶん前に読んだ『月のしずく』は私の最も好きな浅田作品です。泣かせあり、不思議な余韻を残す物語あり、十分に楽しませていただきました。浅田作品をして「あざとい」と非難する向きがあるようですが、そのような評価があるのは「小説の大衆食堂」を自認する浅田氏の巧さの裏返しではないでしょうか。
この短編集の最後に収められている「冬の旅」の書き出しで浅田氏は、川端康成の小説『雪国』の書き出し〈国境の長いトンネルを抜けると…〉を「コッキョウ」と読むか「クニザカイ」と読むかについて主人公に語らせている。すなわち、一般にこの名作の冒頭を「コッキョウ」と読み慣わしているけれども、「クニザカイ」であるはずだと。島国の日本に国境の概念はない。ただし古来の「お国境」は小説の書かれた昭和初期には一般的な言葉であったろうというのである。その疑問に対し小説中に登場する教師は、もし「クニザカイ」と読むのであれば、ふりがなをふるか、あるいは「国境い」と送りがなをふすはずであると否定する。しかし、主人公は次のように考えるのである。
それはちがうと思った。「国境い」という字面は悪く、また冒頭の単語にいきなりふりがなを打つのは、おそらく小説家の美意識が許すまい。
この「おそらく小説家の美意識が許すまい」の一言に浅田氏の小説に対する姿勢が垣間見える。
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◆あらすじ◆
恋人に別れを告げるために訪れた海辺の宿で起こった奇跡を描いた表題作「月下の恋人」。
ぼろアパートの隣の部屋に住む、間抜けだけど生真面目でちょっと憎めない駄目ヤクザの物語「風しょうしょう」。
夏休みに友人と入ったお化け屋敷のアルバイトで経験した怪奇譚「適当なアルバイト」・・・・・・。
”心の物語”の名手があなたに贈る味わいある作品集。
珠玉の十一篇を収録。
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たまたま入った駅前の本屋で、平積みになっていたので手にとった。ここ何冊か動きの早いミステリーやサスペンスものを読んでいたので、浅田次郎ワールドのペースに浸るのに、ちょっと時間がかかった。11のストーリーからなる短編集で、『告白』など“ぐっ”とくる作品もあった。が、ストーリーの終わりで、「で……?」とその先を詮索したくなるものが多いような気がする。この本の売り文句“深い感動と余韻”といわれるならば、自分には今回の浅田次郎ワールドを読みこなすには人生経験不足としかいいようがない。
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月島慕情に続いての浅田次郎。
表紙は、月の名所桂浜だろうか?
「わすれじの宿」いいですなー。ホロリとくる作品。
いつもながら、うまいなーと唸らずにはおれない作家です。
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惰性で読破。どうしてこの方は長編を書くと感動巨編になるのに、短編は薄っぺらだと感じてしまうのか。読みやすいけど、消化不良。