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之を楽しむ者に如かず みんなのレビュー

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みんなのレビュー6件

みんなの評価4.5

評価内訳

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紙の本

96歳にして、この柔軟な感性、過去を振り返るだけではなく、今を、そして未来を見ようとする若々しさ。枯れる?そんな気配、少しもありませんて。

2010/04/12 20:19

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

以前にも書きましたが、奥様を亡くされた直後の吉田の文章を読んで、もう今までのような文章を読むことはできないかもしれない、と思いました。その後、集英社から『永遠の故郷』シリーズが出始めましたが、これも音楽というよりは詩若き日を語るようなもので、頁数も少なく、ああ、こういうスタイルになるんだと自分の予感が当たったことが少しもうれしくありませんでした。

ですから、この本が出ると知ったときも、タイトルの雰囲気から淡々と音楽を聴く喜びを伝えておこうとする半ば遺書のようなものだと思っていたわけです。ところが頁数を見て驚きました。525頁というのは、全集を除けば一冊の本としては著者最大のものではないでしょうか。しかも出版社のHPの案内を読むと
            *
知識より、好き嫌い云々よりクラシックは楽しむのが一番。たとえば、こんなふうに……。

音楽の持つ可能性の大きさが再び見出されている今という時代、かつて味わったことのない、何ともいえない面白い演奏にぶつかることがある。「真珠の粒を連ねたよう」ではないモーツァルト、重さから解放された軽やかなバッハ……。フルトヴェングラー、グールドからアンナ・ネトレプコまで、音楽をきく楽しみを自在に語る。
            *
というように、何より軽やかさが感じられるだけでなく、今まで何度となく吉田が語ってきたフルトヴェングラー、グールドの名前に混ざってここ5年くらいであっという間に最高のソプラノといわれるようになったアンナ・ネトレプコの名前まで見えるのです。枯れた? どうしてどうして、そんな気配はまったくありません。とはいえ、文章はともかく、好きな音楽というか演奏家などとの付き合い方がずいぶん変わったのは事実で、それは絶対だったものへの揺らぎという形で表れています。

ま、吉田は以前からどちらかというと新しいものを好むところがあったほうで、私は年老いてもいつも音楽に新鮮な気持ちで向かい合う吉田の姿勢が好きだったのですが、以前はそれでも、自分はこれが好き、という芯というか軸線がありました。でも、今はそれが揺らいでいます。たとえばカール・リヒターのバッハ。その位置づけが変化しています。

そしてアルゲリッチ。独奏を殆どしなくなった現在の彼女は、吉田にとって物足りない存在になっています。しかし、その分、過去の彼女の重みは増す。それとフリードリッヒ・グルダです。彼の創作音楽については否定的ですが、モーツァルトとシューベルトの評価は驚くほどに高い。もしかするとポリーニのそれより高く評価されている気がします。

それとカルロス・クライバー、思ったより評価が低い。アーノンクールは逆に高い。カラヤンについては相変わらず高いし、ブーレーズは避けて通れない。ムラヴィンスキーも気になる。ワルター、ヴァント、クレンペラーといった故人からハーディング、ドゥ・メダルなどの若い人にも触れる。その一方でヤンソンスとかアッバード、バーンスタインには言及がありません。

演奏家でいえば、アシュケーナージは一か所触れられるところがあったものの、それはついでのようなもの。でもキーシン、ポゴレリチ、ウゴルスキ、アファナシエフ、エマール、プレトニョフ、グールド、内田光子、シフ、ピリス、ラン・ラン、ファジル・サイ、リヒテル、ブレンデル、ケンプと私もそうだけれどピアニスト好きを隠しません。

それと歌曲、ベレガンサの美しさとフランス出身の歌手の少なさ。大輪の花となって開花したムター、そして注目の的ネトレプコについても忘れません。それが、冒頭で触れた『永遠の故郷』シリーズになっていくのでしょう。それにしても日本人のヴァイオリニストについての言及が皆無というのは、なかなかなものです。とはいえ、吉田は既に96歳、高齢でこの柔軟な感性、過去を振り返るだけではなく今を見続ける、立派です。最後に目次とデータ的なことを写しておきましょう。

1 之を楽しむ者に如かず
  
  変わるものと変わらないもの
  「一九六八年」のできごと
  遅い理由、速い理由
  演奏家たちの「内的要求」
  先進の禮楽におけるは野人なり
  モーツァルトとは誰か?
  新しいもの、古くなったもの
  花は盛りをのみ見るものかは
  音楽は、自由な野の鳥
  ロストロポーヴィチの証言
  ベネズエラからの「楷書」
  矢代秋雄とデュティユー
  アルゲリッチとレーピンの《クロイツェル・ソナタ》
  「声」の音楽
  管楽器の名手たち
  「今と昔の対話」としてのクラシック
  カラヤンのマーラーふたたび
  この曲には、そんな読み方も?
  「古い音楽」の中の「新しさ」
  心の真実の流れのままに――アルゲリッチ
  アルゲリッチの『イヴニング・トークス』
  新しいショパン――ルイサダ、ピリス、ポリーニ
  新しいシューベルト――ヘルムヘン、フォークト
  ワルターのモーツァルト、ペライアのベートーヴェン
  演奏家と作品との関係
  それぞれのバッハ、それぞれのモーツァルト

2 今月のディスク

  ピアノでバッハを弾いた人たち
  演奏の「違い」について
  私たちの「耳、心、頭」
  『二〇世紀の偉大なるピアニストたち』より
  戦争の傷――フランソワ、リパッティ、モイセヴィッチ
  音楽を生きているという実感
  カルヴェのベートーヴェン、グルダのシューベルトほか
  シェーンベルク――ドイツ音楽の伝統の上に
  ハーゲン四重奏団のモーツァルト
  グルダのモーツァルト
  楷書、草書、行書――リ、内田、ヴァント
  クリスマスのJ・S・バッハ
  ブリテンの無伴奏チェロ組曲
  ケラスの弾くコダーイ《無伴奏チェロ・ソナタ》
  『二〇世紀の不滅の大指揮者たち』より
  ベートーヴェン《チェロ・ソナタ第三番》――グートマン、ケンプほか
  ザンデルリングとドレスデン・シュターツカぺレ
  演奏における“自由”について
  マーラーの《交響曲第一〇番》
  メシアンとシェーンベルク
  モーツァルトの《ディヴェルティメント》
  ムラヴィンスキーのチャイコフスキー《第五交響曲》
  キーシンのシューマン、ユンディ・リのリスト
  ヘンデルとモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ集
  ポリーニのベートーヴェン『ピアノ・ソナタ集』
  エマール&アーノンクールのベートーヴェン
  ピオーとバンゼのドビュッシー歌曲集
  バリトン歌手、バスティアニーニ
  クレンペラーとムラヴィンスキーの《田園》
  ヘンデルのアリア〈ピアンジェロ〉

初出「1 之を楽しむ者に如かず」=『レコード芸術』2006年4月号~2009年5月号、26回。
  「2 今月のディスク」=『レコード芸術』2000年12月号~2003年11月号より、30回分。

カバー・表紙 J・S・バッハの自筆楽譜より/装幀 新潮社装幀室

以上です。

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利休が茶器のひとつひとつをいとおしみつつなでるように音楽を愛でる吉田翁

2009/12/10 22:02

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る


覚えず「読む」と書きましたが、活字を読みながら、音楽が流れてくるような文章を、この達人は書くのであります。それはこの人が音楽評論家であって、だからこの人の文章が、音楽に触れているから、というそんな下らない理由だけではなくて、――非音楽的な文章を書く音楽評論家は多い――この人の文が音符のようにつづられ実際に音が鳴り響くような気がしてくることすらあるから、やはり文章を書くということはすごいことなんだと思い知らされるのですね。

例えばブダペスト弦楽四重奏団が1951年に入れたラズモフスキー第1番ト長調。ロベール・カサドシュのモーツアルトのK467の協奏曲、シャンドール・ヴェーグがカメラータ・アカデミカと死ぬ前に録音したモーツアルトのディヴェルティメントとセレナーデ。シモン・ゴールドベルクとラド・ルプーによるモーツアルトのヴァイオリンソナタ、グルダのピアノソナタと協奏曲、――もちろんモーツアルトの、ね――。クルト・ザンデルリングとドレスデン・シュターツカペレによるベートーヴェンの8番、その他その他の名曲の名指揮者による名演奏を、吉田翁は利休が茶器のひとつひとつをいとおしみつつなでるように愛でている。

私たち読者は、ほれほれ、もうその旋律が、その和音が、耳の前や後ろでかすかに鳴り響いているというのに、之を聴かずにおらりょうか、となるのです。

これらのうちで吉田翁がもっとも称揚されていると私が勝手に推察するのは、シャンドール・ヴェーグが晩年にザルツブルグで録音したモーツアルトです。独カプリッチョ盤――現在タワレコやHMV通販で超格安にて販売中、これを聴かずに死ねるか的超名盤中の名盤――に収められたディヴェルティメントとセレナーデの全曲を、私も吉田翁に勧められるまでもなくつとに愛聴しています。
翁が仰るように、「楷書の端然とした筆遣いだが、ちっとも堅苦しくないきれいな音で弾いている。(中略)これらの曲特有のあの苦さ、陰影の深い暗さの表出の点でも間然するところがない」。

ところで本書p450によれば、吉田翁は最晩年のヴェーグを水戸室内管に招聘したところ快諾してくれたので、楽しみに待っていたところ突然の訃報を聞いてショックを受けられ、「痛恨の極みとは、こういうことを言うのだろう」と書かれていますが、その気持ちはよく分かります。

蛇足ながら、私がこれまでに聴いたベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集の最高の録音は70年代半ばのヴェーグ四重奏団の演奏(仏Valois盤)で、同じヴェーグQtの旧録も素晴らしかったが、アルバンベルクQtの2度の録音(DVDを入れると3度ですが)など足元にも寄せ付けない名演奏です。
 

♪心より心にしみる弦の音シャンドール・ヴェーグの遺言と聴く 茫洋

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2010/11/27 21:09

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2010/01/03 23:57

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2012/07/16 22:21

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2023/06/24 10:49

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