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藤井忠俊『在郷軍人会―良兵良民から赤紙・玉砕へ』岩波書店、読了。
「国民の後援なしには戦争はできない」。1910年に設立され、45年に解体した「矛盾に満ちた在郷軍人会の全貌を描き出す」。誕生と縮小、国体明徴運動を経た拡大を検証。動員と自らの服従の一致は「玉砕」へと至る。
大正デモクラシーに対し、軍部は軍国主義で対応。その思想が総力戦体制へ進む中で、良民生成が良兵の基礎とされ、学校教育に軍事が入りこむ。最終的には、在郷軍人が玉砕要員となるプロセス(太平洋戦末期の在郷軍人召集兵は350万人)
著者はこれまで『国防婦人会-日の丸とカッポウ着』(岩波書店)、『兵たちの戦争-手紙・日記・体験記を読み解く』(朝日選書)を上程。民衆の視点で戦争に加担していくプロセスを明らかにしてきた。合わせて読みたい。
戦前日本の「暴走」は一部の軍国主義者の暴走と「想定」しがちで、総「被害者」の意識が強い。しかしそれはイエスでありノーでもある。強制だけでなく、民衆が自ら追随していくプロセスの検証は必要であり、本書はその一つの見本となる。
「私が本書で強調したことは,在郷軍人とは民衆そのものであるという一つの原理です」(あとがき).了
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