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眠る前にちょびちょび1つずつ読みました。
「だめなものは」が一番好きかも。
なぜか甘い日本酒が飲みたくなるな…。
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******引用******
「ねえ、このままずっといなよ」私は町子に言う。町子は首を傾げて私を見上げる。
「もっと広いところに引っ越してもいいし」私は続ける。
「ここでじゅうぶんだよ」町子は低い声で言った。「あたし、荷物もないし」
それはそうだね、と私は頷く。町子はほんとうに荷物というものを持たなかった。洗面器と、それを包む風呂敷と、今着ているものを含めて、下着が二組、着替えも二組。
いつか町子が部屋を突然出ていってしまうことが、私は恐かったのだ。私は町子に執着しはじめていた。好き、というのとは違う。癖になる、という言葉がいちばん近いだろうか。町子は癖になる。町子のいない毎日を、もう私は想像できなくなっていた。
―― 『琺瑯』 p.11-12
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掌編の、それぞれにそれぞれの良さが必ずあって、とても楽しんで読めました。
表題作と、「白熱灯」が好き。
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ほんとうになにげない日常スケッチの数々。起承転結があるわけでもなく、大きな展開があるわけでもない。
でも不思議に心に残る。内容が・・・というよりは、音がする。空気感が残る。その場の情景がくっきりと目に浮かぶ。風の音が聞こえる。その場にぽつんと自分が放り出されたような気持ちになる。そして、なにかふとこわいものをみているような、なつかしいものをみているような、不思議な気持ちになる。
非常に短いお話の数々で、川上ワールドにひきこまれる珠玉の短編集です。ひらがな、ことばの使い方もとてもうつくしい。まだ耳に琺瑯の洗面器の音が鳴り響いています。
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短編集 一遍が短い。
案外ほのぼのとはしていません。日常の、ほんとうにささいなところから大人の切なさや可愛さを感じられると思います。
一日に一遍くらいのペースでゆっくり読むのがいいと思います。
琺瑯、パチン、疑惑、ハヅキさんのこと、吸う、姫鏡台、階段とか好きです。
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ありそうでなさそうな日常がありそうに綴られる。
そこはかとないデジャヴに寂しくて柔らかな気持ちがこみ上げる。
かなり好き。
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23個のちいさな短編集。冒頭の2、3行でふわっと情景が立ち上がって、ふしぎな余韻を残し、去っていく。
清潔な物語だなあと思った。ひとりひとりが、しゃん、としている。
日本語が美しいからそう思うのかな。
「疑惑」や「かすみ草」は、初期の川上弘美っぽいドロリとした感じもある。
解説もすばらしい。
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川上弘美さんはすごいなー。
エッセイとも小説ともつかないもの、とご本人が称しておられるけれど、これはやはり短編小説では?
解説で柴田元幸さんが「書き出し」について書いている。
「情報が豊かに盛り込まれているというのではかならずしもない。像がくっきり焦点を結ぶ、というのとも違う。にもかかわらず、たしかな空気が穏やかに立ち上がる。むろんそれはこの作品に限らず、この作品集に収められたすべての、さらには川上弘美の全作品の書き出しについて言えることである」。
そして最後に。
「どの作品も短いけれど、人の半生にまたがるほどの広がりがある」。
ほんとそうなんだよね。
余韻がある。
「森」「ハヅキさんのこと」「吸う」「ダメなものは」がよかった。
とくにやっぱり、「ハヅキさんのこと」。
ハヅキさんが入院しているという外枠が、過去をいとおしく輝かしいものにしている。とはいえハヅキさんの毒舌、そのキャラクターゆえ、それは単に美しい過去ではない。清濁混在した「生」として輝いているということだ。
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淡々とした文章だけど、感情はその裏に沢山こもっていて、そこが感情移入できる。読んだ後、静かな気持ちになって周囲の音に敏感になる感じ。
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p.16「『り』が悦之とミー、『し』が咲子。」
『ストライク』が好き。はっとした。ひらがなの音のひびき。
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瞬間の重ねあわせで時間は成り立っている--と、ドゥルーズはいった。そのとおりだ。思い出してみれば、過去は瞬間の重ねあわせでできている。過去をタイムラインで考えるなんて、できることなんだろうか。印象的な出来事が数珠繋ぎになっているだけなんじゃないだろうか。
数ページの超短編には、川上弘美の魅力がぎゅぎゅっと凝縮されている。彼女の瞬間を見つめる能力が、最大に生かされている。いままで読んだ、どの作品よりも。
過去は、超短編のつなぎあわせでできている。きっと、ゆっくりじっくり思い出せば、どの瞬間も小説になる。時間の糸がつないでくれているだけだ。一つひとつの珠に思いを馳せれば、過去と未来と現実が詰まった美しい出来事があるとわかる。誰の人生にもいくつもの珠があって、たくさんの人々が輝かしい瞬間を持っていると思うと、わくわくする。
ひさしぶりに、ゆっくり自分の過去を思い起こしてみたくなった。
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可もなく不可もなく、いつのまにか年齢を重ねて、ただただ過ぎ去っていく日常。日々の暮らしに潜む、漠然とした不安、怖れ、寂しさ、せつなさ、やるせなさ・・・・・そんな言葉にならない感情の機微が、ひとつひとつのお話にぎゅぅっと凝縮されています。
川上さんらしい、静かなふんわりした浮遊感をともなう文体。掌編であるだけに、なおさらしんみり胸に迫ります。
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掌編集。恐らく雑誌掲載時は1~2ページ分だったのだろう分量。
昔の知人のことを、ふと思い出す瞬間。男と女の心の機微、中年と呼ばれる年代の恋情。それらを独特のたゆたうような筆使いで表す。特に後者は自分と全く離れた世界なのに、すっと心に沁み入る。これが巧さか。
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けして嫌いではないし、特になんでもない話が妙に心地良いのではあるが、読みにくい。文章がどうのこうのとか魅力がないとかではなしに、川上さんの文章は読み進めるのが遅くなる傾向あり。途中で止めても別に続きが気にならないというか。
けして嫌いではないんだけど、、、
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単行本買うのを我慢してたのでやっと文庫が出てうれしい。装丁が単行本のままでかわいい。
この作者の小説はいつもふんわりしててさっぱりしてる。清潔感のある文章。短編がたくさん。題名にもなっている「ハヅキさんのこと」がやっぱり一番かな。
解説も良かった。