紙の本
世界遺産登録とは、ミシュランの☆のようなもの。ハズレはないだろうが、「なんで選定(登録)されていないのか」と首を傾げる物件もある
2010/01/26 20:08
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:7ひきのこぶた - この投稿者のレビュー一覧を見る
「世界遺産」とは、どのようなものだろう。「世界遺産」とは、1972年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づいて、世界遺産リストに登録された遺跡や景観そして自然など、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値(Outstanding universal value)」を持つ不動産を指す-そう、いわれると何やら権威あるものという気がする。事実、私も本書を読むまでは、そのように感じていた。ところが、必ずしもそうではないようだ。誰しもが知っている名所が“遺産”に指定されていない。わかりやすいところでは「ナイアガラの滝」がそうだという。ちなみに、“世界三大滝”の残りの二つ(イグアスの滝、ヴィクトリアの滝)は、世界遺産である。
そもそも、それを決める手順はどうなっているのか。私が個人的に「○○を世界遺産に指定しろ」と訴えても、ユネスコに門前払いをされるのは自明。「世界遺産条約」を批准した国単位でしか登録申請はできない。「まず、それぞれの国が、自国で世界遺産に登録したい物件をリストアップし、ユネスコに報告する。」これが暫定リストである。その中から、各国は登録してもらいたい物件を2件を限度に選んで、正式な推薦書を提出する。推薦を受けたユネスコは、世界遺産委員会に諮る。それらの物件の価値や保護状況について、事前に世界遺産委員会とは別の専門機関が現地調査を行い、ふさわしいかどうかの勧告をする。そして、勧告をベースに委員会は決定する。したがって、ほとんどの場合、世界遺産委員会の各委員は、事前に候補地を見ていない。あたかも、オリンピックの開催地の決定の際の、五輪委員と同様である。
暫定リストは、“報告”なのだから、各国の考えで載せられるといえるが、推薦書を提出するのは周到な準備が必要だ。評価は四段階である。「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」である。世界遺産委員会は年に一度だから、「情報照会」なら、期日までに追加書類の提出ができれば、翌年に改めて審査してもらえるが、「登録延期」必要な書類の再提出を行った上で、諮問機関の再調査を受ける必要があるため、世界遺産委員会での再審査は、早くとも翌々年以降になる。そして、「不登録」と決議された物件は原則として再度推薦する事ができない。日本が推薦した物件は、これまで、必ず「登録」されてきたのが、2008年に「平泉-浄土思想を基調とする文化的景観」が、初めて「登録延期」とされた。正直に言って、私の記憶にはないが、“平泉ショック”と、ニュースにもなったらしい。その前の年に登録された「石見銀山」との比較で、「金(中尊寺金色堂)が銀(銀山)に負けた」とも騒がれたようだ。
2007年に文化庁が各自治体に募集して、「暫定リスト」に載せられることになった物件数は、36である。我が国で、世界遺産委員会に推薦するのは毎年1物件に限られているので、これらが順調に「認定」を受けられて「登録」の運びになったとしても、終わるのは36年後だし、「登録延期」や、新規のリスト掲載物件もあるだろう。それなら、登録に血道を上げる前に、遺産を遺産として残す、国内の“環境”整備が、大事だと思う。
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世界遺産の裏側を丁寧に説明している。
ただ世界遺産ブームを批判しつつ、結局最後はその流れになるのが残念。
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著者2冊目の本
「世界遺産の真実…、知れば知るほど真実とは何なのか…」
世界遺産になれた地区
世界遺産になって困った地区
世界遺産になれなかった地区
世界遺産登録待ちの地区
なるためには?
世界遺産の構成要素とは?
世界遺産を深く知っているから
好きであるからこそ、
批判的に述べている。
どの部分を切り取っても計り知れないほどのストーリーがあり
どの部分をつなぎ合わせてもストーリーはつながる
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『「世界遺産」の真実―過剰な期待、大いなる誤解』(佐滝剛弘、2009年、祥伝社新書)
この本はおもしろい。
世界遺産とはなにかという解説や、石見銀山が世界遺産に登録されて平泉が登録されなかった事情などを解説している。
世界の世界遺産の解説書ではないので、世界遺産とは何かという制度的な知識を得たい人にはおすすめです。
(2010年2月23日)
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世界遺産の基礎知識について短時間で学べる本。うすうす思っていたのですが、日本人はどうも権威に弱いようで、世界遺産と聞けばなんだかすごい遺産であるかのような錯覚に陥りますが、全世界を眺めれば必ずしもそうではないようです。
逆に世界遺産でない有名遺跡もたくさんあるとのこと。まあ人の好みなのでその人なりに楽しめればいいと思います。
スタンプラリーのように「世界遺産いくつ踏破!」というのはなんだかまあ個人で楽しむ分にはいいでしょう。
でもね私もやっぱり世界遺産のファンです
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この本は世界遺産の仕組みと現状の問題点を中心に、少し批判的なスタンスで丁寧に書かれています。
しかし、この本を読むと、「最近はブームになってなんだか俗っぽいな」と感じていた、世界遺産のすばらしさ・大切さが再発見できる気がします。ひとりひとりが広く自然や文化の多様性について考える契機になる一冊ではないでしょうか。
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[ 関連図書 ]
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世界遺産のさまざまなテーマと筆者の客観的な意見でまとめたもの。
間違っている世界遺産の認識が再確認できる一冊だった。
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世界遺産とは何か。
それは決して有名観光地に与えられる勲章でもなく、「地域」や「文化」のブランディングの手段でもない。
ユネスコの「世界遺産」とは、人類のこれまでの歩みの中で後の世に伝えるべき「何か」を、確実に保護し、継承するためのシステム。
であるはずだった。
本書ではこのシステムの成り立ちから仕組みまで、非常に解りやすく解説する。そして日本の世界遺産への取組み、世界遺産への登録がなった「石見銀山」や登録が見送られた「平泉」などを例に、現在の世界遺産システムの問題点を考察する。
訪れている割にはいまいちよくわかっていない、そんな「世界遺産」とはいったい何なのか。その本質を本書は問おうとしている。
「世界遺産」の訪ね方が少し変わるかもしれない。
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世界遺産に登録されたら「万歳万歳!」だと思ってたが必ずしもそうでないことがわかった。観光客がどっと押し寄せることによって、その場所が傷ついたり、予習不足の方々からがっかりされることもあるのだ。世界遺産に登録されるには「普遍的価値」が必要らしい。日本を例にとるといくら日本で有名だからといって、「これは余裕で登録されるっしょ!」とはならない。自国だけでなく、外国を巻き込んだ背景がないと厳しいらしいっす。
著者も指摘しているように、登録することが目的になってしまって保護の観点が疎かになってしまうのは問題ですね。世界遺産効果しか狙ってないと大切なことを見失います。しかし、本書によると2009年の11月にユネスコの事務局長が交替したことで、世界遺産の制度を見直す方向に向かっているそうです。
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世界遺産の現実と課題をまとめた良書。地元・大森勝山遺跡が暫定リストに加わっただけに、これを参考に保存活用にかかわりたいと思います。
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85ページ
少なくともけう稀有な存在
◆けう稀有→稀有
267ページ
正鵠を得た批判にはきちんと答えて
◆得た→射た
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世界遺産とは何か?という考えされる一冊。サブタイトルにもあるように「世界遺産」という言葉に過度な期待をしているし、そこに誤解もあると思う。
なぜ、そこが世界遺産になることができているのかということを理解しながら巡ることが重要で、旅行会社も時間をかけて周遊してもらうプランを提示できなければこれからの時代厳しいだろう。
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世界遺産の誕生によってそれまで遺産という言葉に引き継がれていくものという若干相続、フローのニュアンスがあったが、保存して行くべき永久資産、ストックの意味合いに変わったという点で価値が高いのではないか。1000件以上登録が進んで登録の価値や意味合いが変化しているのは否めないが
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世界遺産のしくみのお勉強本。◆不動産がその対象になって、絵画にはならないとか。◆◆石見銀山の大久保間歩が一般公開されているのか!25年以上前の私が学生時代では、そんなことはできなかった気がする。◆東京都唯一の国宝の建築物が東村山の正福寺というのも初めて知る。◆◆それにしても観光の落とすお金というものは考えてしまうな。