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みんなのレビュー44件

みんなの評価4.1

評価内訳

44 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

脳性マヒに感覚から肉迫

2010/06/13 06:02

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:野あざみ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 脳性マヒ当事者の官能的な体感描写に、グイグイと引き込まれた。

 強張った身体がリハビリトレーニングの絶対的な力に屈し、ほぐされる瞬間。そして夜、厳しいトレーニングから解放され、床と重力に、ぺとりと身体を任せる。快感が訪れる。

 生まれつき随意運動に障害がある著者。身体に動かしづらさはあるが、言語機能に障害はない。ひとくちに脳性マヒといっても、障害の種類や程度は千差万別という。

 著者の場合、認知は有効に機能する。少年時代までは、「目指せ、健常者」を強いられた。身体を健常者のようにイメージ通り動かせないのは、「心の問題」と決め付けられためだ。「回復目標は青天井だった」と苦しさを明かす。

 身体が機能するには、適度の緊張とあそびのバランスが大事という。また、各部位に出される指示は、脳への一極集中を避けるため、ある程度は部位間で出される構造になっている。脳性マヒになると、その構造が常に緊張した状態。コップを持ったり、歩いたりといった日常生活の何気ない動作に大変な困難が生じる。

 訓練による克服を課せられた著者は、動作に健常者基準を求められた。トレーナーが準備体操的に身体を解ききってくれる時間は、すべてを預けた身体が柔らか味を増し、しばし甘美な感覚に耽れる。

 しかし、次の段階でつまずく。動作イメージはできても、常に限界の壁にぶち当たる。トレーナーの期待に応えられないと、焦りが生じ、さらに動作が逸脱し、また焦りがこみ上げ、終いには「自壊」する。

 「自分にあう動作イメージがあってもいいのではないか」

 訓練の末、生き方のパラダイム転換に至り、大学入学を機にひとり暮らし。ドアの鍵の開け方、段差の越え方、そして最も大切なトイレとの付き合い方は試行錯誤の連続だった。自らを取り巻く「モノ」との間に独自の関係性を築き、次いで「ヒト」に援用していった。
 
 身体を動かし、社会に生きる上で、いかに違和感を取り除けるか。もちろん健常者とは異なる手法があって当然。「触れるように触れられたい」と、心境を説く。読み手の心へ、寄せてはかえす波のように、じわりと染み渡る。

 イラストは笹部紀成氏。真面目さの中に微量の可笑しさを湛えている。深刻なテーマにもかかわらず、淡々とした著者の筆致にマッチしている。

 本書は、脳性マヒで発声機能に難しさがある人たちの身体性まで含め、つぶさに代弁している。人間の重厚な身体世界を目の当たりにでき、「よくぞ語ってくれた」に尽きる。欲を言えば、次回は小児科医として生きる世界観に、焦点を当てた告白を期待したい。

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紙の本

「崩壊は敗北でもあるが、新しい創造への第一歩でもある」。関わりの中でぶつかり、壊れ、新しく構築される「関係」。リハビリトレーニングのあり方から、一般人間関係まで、「関係」を広く、深く考察する。

2010/08/20 17:08

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 表紙の不思議な雰囲気、そして「内容紹介」の「敗北の官能」という言葉に「なんだろう」と引きつけられた。ケアのシリーズの一冊であり、著者が自身の運動障害のリハビリ体験から書いた本らしいが、なにが「官能」につながるのだろう?
 トレーナーの持っている「普通の運動のイメージ」を、そのまま障害の形も個々別々な人間に当てはめることで起こるさまざまな不都合な反応。運動障害にも様々な段階のものがあり、個人の体験歴や感情も千差万別であることを考えれば、「同じイメージを与える」だけでは上手くフィットしない部分がでてくるのはある意味当然かもしれない。医者でもある著者の考察は、リハビリという関わりの中でぶつかり、壊れ、新しく構築される関係を深く掘り下げ、相互の関係の重要性を指摘している。
 関係はトレーナーや補助具といった「身体外」のものとの間にも存在するが、人間の身体内にも無意識に連動して作動している機構という、意識的な運動機構とは別のものとの関係がある。運動障害は、障害者の身体内にある無意識の作動機構が上手く意識と関連付けられてない場合もある。トレーニングを受ける側からのこのような考察は、とても大事なことに眼を向けさせてくれるものであった。たしかに我々の体は、無意識に連続した運動もできる機構を持っていることで、さまざまなことを円滑に、迅速に行うことができる。しかしその運動は無意識にできるものであればあるほど、「他者に教える、トレーニングする」のは難しいものだろう。トレーナーが「観察し、イメージを押し付ける」一方ではいけない、というのが著者の体験からの結論であろう。

 他者と(人間でなく、機械や道具などでも良いかもしれない)共存するとき、相手を観察し、推測し、接触して上手く行かないことを感じたら修正をしていく。上手く行かないときには不快感や敗北感があり、修正して上手く行けば快感がある。
 このプロセスはおそらく、誰もが日常的に行っていることでもある、と読み進むうちに思えてくる。相手が人間であるならば、修正が片方の人間にだけ要求されることはどこかにひずみを生じる原因となる。親子関係や友人関係、夫婦関係にも大同小異でこのようなことが起こっているのではないだろうか。著者の深く掘り下た考察は、とても普遍的なところまでの広がりを感じさせる。
 健常とされる人間とは異なる身体状況の観察から引き出された普遍的な考察。まさに「異常=病気を知ることの中から正常な機能を知る」という医学・生物研究の王道を見るような気にもさせられた。

 著者が体験し考察したリハビリの過程で感じた「敗北の官能」とは、こういった「他者とぶつかってその力に屈するとき」の感覚のようである。それは敗北ではあるが、同時に次の過程へ開かれたことでもある。「敗北」に含まれる肯定的な意味合いの感情に注目して、著者はこれを「官能」とよんだのだろう。
 「新しく何かを構築するためには、すでにあるものを一度壊さねばならないこともある。崩壊は敗北でもあるが、新しい創造への第一歩でもある」とでも言ったら良いのであろうか。う~ん、深い。

 「性的」な官能との比較もあり、「マゾヒズム」の由来にまで広がる著者の考察には頭が下った。しかしそのわりには肩の力を抜いた文章で、読み手に過剰な負担を与えないよい文章である。
 表紙の「見つめている眼」も内容にちゃんとつながっていた。本文内のイラストも、絶妙な雰囲気で本文をサポートしている。

 ケアのあり方、障害者と介助者、運動障害者とトレーナーの関係のあり方から始まり、人間関係や生長ということまでを考えさせてくれる、なかなかに深い内容であった。著者が今後どのような論を展開してくれるか、も期待したい。

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紙の本

協応構造のほどけと結びなおし

2011/10/11 14:41

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:喜八 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 名著です。

 2010年9月09日「第5回バリアフリーシンポジウム:痛みはなくすべきか?-「回復」を再考する」の会場(東京大学先端科学技術研究センター4号館2階講堂)で『リハビリの夜』著者・熊谷晋一郎さんに挨拶する機会がありました。
 その際、「弊ブログで『リハビリの夜』を紹介しようと思っているのですが、これがなかなか難しくて…」と愚痴をこぼしました。
 すると熊谷さんは「そうですね。結局『本を全部読んでください』ということになってしまうかもしれません」ということを仰っていました。
 なので「とにかく『リハビリの夜』を読み通してみてください」と、たまたまこの書評を読んでくださっている方に申し上げたいと思います(お礼の気持ちをこめて)。

 熊谷晋一郎『リハビリの夜』における最大のキーワードは「協応構造(coordinative structure)」です。
 「身体内」「身体外」合わせての協応構造。
 世界(モノ、人)と自分との「緩やかなつながり」「横の連携」。
 この協応構造のほどけと結びなおしの反復こそが「生の現実」であり、そこにこそ人としての「希望」はあるのだ。
 ちょっと強引に自分の側に引き寄せて、私(喜八)は『リハビリの夜』を以上のように読みました…。

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紙の本

理解を深める

2017/12/15 04:53

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る

脳性まひの克服と健常者を目指すことを強いられた著者の過去には驚かされました。自分らしく生きることを見出した瞬間が感動的でした。

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2010/08/01 18:44

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2010/09/30 16:20

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2010/10/09 11:31

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2010/12/03 22:09

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2011/01/24 22:42

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2011/08/28 07:47

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2011/09/08 14:42

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