広東料理の名店「鏞記酒家」 香港・食のパノラマ みんなのレビュー

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投稿者：mikimaru　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

著者自らが写真家である場合の食の本は、はずれが少ない。書きたいことがあって誰かに撮影を頼むわけでも、誰かの写真ありきで文章を書くわけでもないからだろうか。文章と画像がまとまってひとつの世界になり、目と頭に強く訴えかけてくる。

わたしは香港にも行ったことはないし、ガチョウのローストどころかガチョウそのものを食べたことが（おそらく）ない。だがこれでもかと紹介される名店「よんきー」（実際には漢字）の料理180品目を見ていると、現地で食べてみたい思いに駆られる。

本書は戦時中の日本軍占領や1997年の返還など、歴史的に大きな変動のあった香港において創業七十余年となるヨンキー酒家の歴史と主要メニュー、そして二代目オーナーにスポットをあてている。

ひとくちに広東料理といっても幅が広く、自店の得意なものや流行のものを専門に扱って細分化する店が多いなかで、ヨンキーは新しい考え方を吸収しつつも古くからの基本を守り、古典的なメニューが失われないようにするほか、広東人らが懐かしく思う郷土の料理を含めた多くのメニューを用意しているのだという。

近年では各国の雑誌などが主催する名店ランキングで常連であり、90年代に日本の「料理の鉄人」などのテレビ番組ほか、各種の由緒あるコンテストに自店の料理人を参加させて好成績をおさめるなど、外に向けたアピールにも力を入れている。

知名度は世界的に高いが、アジア諸国の人たちが立ち寄ったその店先で買い求めて自国までテイクアウトするガチョウのロースト（あるいはご飯と青菜をつけた弁当形式のもの）を思うと、そして本書に出てくるオーナーの表情や逸話を目にすると、庶民感覚の残る気さくな雰囲気が好ましい。

目次の一部を抜粋すると：
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○　香港の食のハレとケ
○　美味求心
○　ヨンキーの歴史
○　例湯十二ヶ月
○　香港で食べると健康になる
○　チャイ・ランが語る"香港——食のコスモスの歩き方"
○　香港を食べ歩くキーワード
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上記の目次で最後にある「キーワード」は、代表的なメニューを漢字で紹介しているので、言葉ができない人でもそれを見ておけば、現地の店でメニューを読み解く参考になりそうだ。