紙の本
「まごころ」ということ。
2010/12/31 05:14
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
私はあまり「愛する人の死」のような作品を好まない。「大事な人が不治の病だけど二人で闘っていこう・・・ああダメだったかでも私は強く生きて行くよ」のような作品。どうも何だか不憫でならなくなってしまうのだ。本作品でも、冒頭に大事な人が亡くなる。家族の太陽、お母さんである。しかし読み終えた時、胸も目頭も熱くなった。こんな寒い季節にこそオススメな、暖かい一冊である。
70歳を越えたとはいえまだまだ明るく元気だった乙美お母さん、乙母さん。そのお母さんが、突然の心臓発作で死んでしまう。既に二人暮しだった夫の熱田はなぜ最後まで優しくしてやれなかったかと悔やみ、やさぐれた生活を送る。血の繋がらない娘百合子は夫との離婚を目前にして、母の死にさらにショックを受ける。二人が歩く道を見つけられずに路頭に迷いかけた時、現れた一人の少女。金髪頭に、今どき流行らぬガングロフェイス。井本と名乗った10代のその少女は、生前乙母さんに大変世話になったという。そして乙母さんに「自分に万一の事があったら、49日の間だけ家族の面倒を見てやって欲しい」と頼まれていたのだという。はすっぱだけど、ハートで付き合う井本に、やがて二人は心を開くようになる。そして見つかる、乙母さんが残した「人生のレシピ」。そこには掃除や洗濯から、女の子の身だしなみに関してまで。さまざまなレシピが、可愛いイラストと共にカードになっていた。そのイラストのキャラクターは可愛らしくデフォルメされた、熱田と百合子。二人は亡くなって初めて、自分達がどれほど乙母に愛されていたかを知る。そしてカードレシピの「49日」には。何と法事など行わず、大宴会を開いて欲しいと書いてあった。熱田に百合子、井本と井本が連れてきたブラジル系の優しき青年ハルミの4人は、乙母の遺言とも言える大宴会を開こうではないかと準備を進めるのだが。乙母の人生を振り返るほど、切なくなる二人。あって当たり前、空気のような存在だった母親が。どれほどの人々の人生に貢献してきたか、力を与えてきたのか。それを知るに連れ、乙母さん失ったか事の重大さを、また痛感してしまう。やがてやってきた49日。開かれた大宴会。そしてその場で小さな奇跡が・・起きる。
何せ乙母の人となりに、頭が下がる思いがした。突然の死だったのだから、もちろん何を残そうとしたわけでもない。しかし彼女の人生は、誠意と愛情に満ちた人生は。そうせずしても残っていく、伝えられていく。「まごころ」がそこにあるのなら、形にせずとも言葉にせずとも、残っていくのだと思い知らされぐっと来てしまう。自分もそういう人間であれたならと、痛感させられた。
そしてこの作品「ぐっとくる」だけじゃない。ラストに想像もしなかった「うわ・・・やられた・・・」が待っている。まさかこういう展開で「布石」が散りばめられていたとは・・・久々にしてやられた。参った。
世には色々な意味で「良い本」というのがある。しかし「面白い」だけじゃい「泣ける」だけじゃない、「笑える」だけでもない。色んな意味で「良い本」というのは中々出会えるものでは無いと思う。その作品を読み終わったときに「ああ、自分はもう少し良い人であろう」と思えたなら、それこそそれは「良い本」に違いない。・・・本作品は、そういう本だ。ぜひお手に、取ってみて欲しい。
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作者と年齢が一つしか変わらないからだろうか。強いインパクトは持たない話かもしれないがスーッと読めて、それぞれの場面の絵が見え、登場人物の表情も見え、それぞれの気持ちに共感できた。
今の暮らしを大切にしようと思った。
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なんと素敵な四十九日なんだろう。
弔うということはこういう事なんだ。
「空白」を埋めるという事。
故人の、家族の、そして自分自身の。
それに必要な49日間という時間が
残された家族にある変化をもたらします。
前回の作品『風待ちのひと』同様、作者の小説には
美味しそうな料理のゆげが立ち昇ってくる。
良い食事で満たされた時のような読後感がいい。
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5・22放送 「王様のブランチ」で紹介
2月に発売されて以来、増刷を重ねている作品
著者が出演し本の魅力を紹介
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読み終わったら、何かこころに残るものが.・・・
言葉に表せない読後感です。
でもたくさんの人に読んでほしいと思いました。
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乙母さんの人柄がしのばれて心があったかくなりました。おもしろかった。イモちゃんが私の中ではどうしても ドラクエ9のサンディに変換されます。おんなじ天使だしね。
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「レシピ」ってタイトルに付いていたけど、正直料理の話はあまり印象に残らないなぁ。要所要所でポイントとなる料理は出てきてるんだけどね。それよりも、人生年表とか絵手紙が印象に残ったなぁ。私も、死んだら年表作って欲しいなぁ、年表作りながら、家族や友人に楽しい思い出を語ってもらいたいなぁと思いました!
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真っ直ぐ迷いも無く人生を歩いている人なんているのかな・・と、思わせるほど、不器用な人たち。登場人物の個性が重なってしまうような所もあり、もう少し変化があっても良かったと思いました。
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死んだ妻が、夫や娘に残したレシピとは・・・・・。
いちお、心温まる家族の話、なんでしょうが・・・・なんかあと味がよくないというか・・・
最後はハッピーエンドなのかもしれないけど、でも途中のいろいろを考えると、スナオに喜べない感じ。
私がひねくれてるのかなぁ?(笑)
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母親が亡くなって49日間のレシピじゃなくて、四十九日のレシピなのね。間違えてた。
すごくぐっと来るエピソードと、乱暴だなってエピソードが混ざっていていまいち話に乗り切れない。
これは来年あたりに映画化する流れのお話?という感じ。
全体的な流れは好みでした。面白かった。
以下ネタバレあります。
まず、乙美さんのリアリティが薄い。お父さんとの出会いのエピソードや個々のエピソードは素敵なんだけど、それらをつなぐパーツが見えないため、断片的としかいえない。
百合子さんも物語のために動かされている感じが強い。特に旦那さんは本当にかわいそう。彼はもっと描写されるべき(というか私が読みたかった)。
井本とハルさんは……あーえー……と、それはどうなんだろう、って突っ込んだら大人げないのかしら。
結局のところ、お父さんのロマンというか、男のロマン大爆発な小説だと思う。
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乙美が亡くなった後、四十九日までの日々の中で
家族や知人が 彼女を思う。
レシピとはいえ 料理の事はあまり出てこない。
レシピ~処方箋ということなんだなぁ
イモちゃんやハルミなんていう ちょっと不思議な人もいて
ファンタジーとも 言える作品。
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おそらく自分が20代の頃に読んでいたら、この書が持つ力はそれほど心に響かなかっただろうと思うが、30代も後半に入った今ならすんなりに沁み入ってくる。
文章自体も読みやすく、あれよあれよという間に、読了。
乙美さんが初めて1人で熱田さんの家を訪れた時のエピソードを描いた第5章は特に出色で、気持ちを揺さぶる。
あれはやはり女性でないと書けない内容であろう。
井本とハルミの存在設定は、ちょっと中途半端に過ぎる気がした。
この類の物語ならば、あそこはごまかさないでいただきたいと思う、私的に。
それ以外にも全体を通し、細かいところを含め腑に落ちない箇所がいくつかあったり、残念な設定等が感じられるので、ちょっと惜しい作品、かも。
重松清氏の筆力にはやはり少し及ばぬか。
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面白くて、数時間で一気に読んでしまいました。良平の後妻で百合子の継母の乙美という女性は、何と魅力的な女性だったんだろうと思いました。生死に関わらず、大事な人を想う心の暖かさに涙なしには読めませんでした。
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食べることは、生きていく上で欠かせないこと。
おいしいものを食べると元気に、幸せになります。
コロッケサンド食べたくなります。
☆勝手に配役☆
井本:仲里依紗
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熱田家の母・乙美が亡くなった。気力を失った父・良平のもとを訪れたのは、真っ黒に日焼けした金髪の女の子・井本。乙美の教え子だったという彼女は、生前の母に頼まれて四十九日までのあいだ家事などを請け負うと言う。彼女は、乙美が作っていた、ある「レシピ」の存在を、良平に伝えにきたのだった…。家族を包むあたたかな奇跡に涙があふれる感動の物語。