紙の本
たいして衝撃はないけれど、手際のよいまとめ方
2010/05/19 00:04
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:拾得 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いよいよ日本でも iPad が販売されるそうだ。ということで、書店では雨後のタケノコのように関連書籍が出されるようになった。本書も店頭にだいぶ積まれている。「電子書籍が出るというのに、電子書籍についての紙の本を読む」というのもなんだか変な感じがするのだけれど、 iPad もキンドルも買う予定はないので、とりあえず読んでみた。
「iPad vs キンドル」のガチンコの対決紹介からはじまり、電子書籍の社会的な位置づけが手際よく整理されている。ありがちな感情論や、技術革新が夢の未来を約束するという技術論に偏することなく、無難にまとめている(ただし、感情論一本やりの力技で1冊の本をまとめた佐野真一はそれはそれで偉いと思う)。「はじめに」で記されているように、電子書籍をとりまく「生態系」を描く、という発想が著者にはあるからだろう。ボイジャーをはじめ、日本でも電子書籍の先行事例はあったわけだが、いつしか立ち消えになっている。こうした場合、発表時にはそれなりに華やかに取り上げられるものの、立ち消えに至った過程は一般読者まではなかなか報道されない。この点、本書は目配りの怠りなく、「電子書籍コンソーシアム」やソニーのリブリエといった「失敗事例」も紹介されている。技術の問題以外の、様々なプレーヤーの「思惑違い」が影響していたことがよくわかった。ただし、出版流通の仕組みなど、個々の記述についてはやや雑駁であり、詳細を知りたい人は他書にあたられたほうがよいだろう。
電子書籍などというと、なんだか新しい魔法の箱か、出版文化を崩壊させる黒船か、みたいな論調になりがちだけれども、その正体はプレーヤー間の冷徹な駆け引きの場にすぎない。すなわち資本主義の問題なのである。プレーヤーの栄枯盛衰やカネの流れの変化は資本主義の常である。電子書籍は「夢の未来」を約束しないし、「守るべき出版文化」も幻想にすぎない。実は、日本の出版界も騒がした「グーグル和解」も、同じような駆け引きの場であったわけである。
本書では最後に、電子書籍の可能性を探る試みとして、「セルフパブリッシング」の話題などを、かなりの紙幅を割いて前向きに取り上げている。本の「結び」として、こうした「明るい」話題は欠かせなかったのだろうが、前半部に比して不徹底さを感じざるをえない。実は、新しいメディアが生まれるたびに、こうした「個人の役割や能力が十全に活かされる」という論調がくり返されてきたのではなかったか。本来であればこうした論調そのものを、プレーヤー同士の駆け引きや交代とからめて冷徹に検証すべきなのに、ここでは一転して楽観的な記述に堕しているように感じられた。著者がこうした幻想をふりまくのだとしたら、「出版文化論者」と大した変わりはない、ということになる。もしかしたら、著者自身もまだ、出版文化の放ってきた幻想にとらわれているのではないだろうか。
ちなみに、本書ではここのBK1の話題も取り上げられているので、ぜひ探されたい。
紙の本
ここのところの電子書籍の基本的事実は分かったが、今後の読書文化をどう豊かにするかは見極める必要があると思った
2010/07/03 10:38
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者はここ数年、ネットの世界で進む事象について取材した書を物してきた人物。私のように人生の大半をネット外の世界だけで過ごしてしまう人間にとって、著者の描くもう一つの世界の躍動する姿は大変興味深いものです。
KindleもiPadも手にした経験のない私にはその違いについて述べた箇所は大変勉強になりましたし、米国アマゾンがDTP(デジタル・テキスト・プラットフォーム)というサービスを提供していて、読者が誰でもISBNコードつきの書籍を作ることが出来るという事実は驚きをもって読みました。
ただし必ずしも納得できるわけではない記述もありました。
若者の活字離れは事実ではないとして、図書館に通う小学生の年間平均借り出し冊数が近年増えてきているデータを提示しています。しかしこれはあくまで量を示すだけです。いみじくも著者自身が言うように「くだらない本の量産」時代にあって、図書館から借りる冊数が増えているのは小学生の活字文化が豊かになっている証拠とは言い切れないと思います。
未曾有の不景気で親は本を買い与えるのではなく、図書館の利用を薦めているという事実もあるでしょう。
こうした「くだらない本の量産」が止まらない限り、電子書籍社会に期待できる「豊かさ」にも自ずと限界があると思います。
著者の本にはいつも多くを教えられるのですが、今後著者に期待したい点が2つあります。
電子書籍用プラットフォームへのアクセス度や操作リテラシーは読者ごとに差が出来ていくように思います。紙の書籍以上に読書格差が広がるのではないかという懸念を私は持っているのですが、これは杞憂でしょうか。
さらにいえば、豊かな読書文化を支えるのは充実した図書館の存在だと考える私には、電子書籍と公共図書館とが今後どう関係を結んでいくのかが大いに気になるところです。
著者には今後そうした点について分かりやすく解析する書を期待します。
紙の本
日本の本の流通から電子書籍までひとっとびの議論
2010/05/04 00:36
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
すっかりおかしくなってしまった日本の紙の本の流通. その救世主となるべきなのが電子書籍だという. その論旨をうらづけるためにアマゾンやアップルの電子書籍に関するたたかいぶりをくわしく書いている.
しかし,日本の本の流通の問題点からいきなり電子書籍に話がいくのには疑問がある. そもそもアマゾンは紙の書籍の流通を変革しようとしたはずだ. それがどこまでうまくいき,電子書籍はそれをさらにどう変えようとしているのか? そこまでみていかないと説得力のある議論にはならないのではないだろうか. そうかんがえると,すでに新書としてはかなりあついこの本. 新書として出版することがそもそも無理だったのではないだろうか? 電子書籍として出版すれば,あつさを気にしなくてもよかったかも…
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D21BCのセミナーでひと足お先にゲット。
著者の講演を聞きながらフォトリーディング。
講演の内容がもちろんリンクしていたのですんなりと読めた。
これまでの著書を拝読していて感じるのは、自身が「キュレーター・ジャーナリスト」の存在を知ってライターからジャーナリストに飛躍したのではないかということ。
どんどん味が出てきた。
内容としては、パッケージとコンテキストの話が興味深かった。この整理の仕方はわかりやすい。
ほかにも3層構造で比較整理するのもなかなかわかりやすかった。
このあたりはキュレーターの本領発揮と言うところか。
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新書版ですが、中々読み応えのある内容でした。
前半は、アマゾン、アップル、googleの電子書籍のプラットフォームをかけた壮大な覇権争いが印象的。それに比べて日本のマスメディア、出版社の対応はなんだかなぁという感じでした。
後半は、マスメディアからソーシャルメディアへ。考えてみると、最近は私も既に本を選ぶとき、 twitterの特定のフォロワーさんのおすすめする本を購入することが多くなった。日本のマスコミや出版業界は、この本をよく読んで、早く現実に気づいて欲しい。
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電子書籍は出版をダメにしない、ということがいいたい本だと。
例え話の音楽の話がかなりのページを占めてる気がする。
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110円でダウンロードしてPCで読んでみた。電子書籍初体験。専用のリーダーをダウンロードしてインストールがめんどくさい。しかもわかりづらくて途中で投げ出しそうになった。目次を眺めて、奥付を眺めて、パラパラーっとめくって、おもしろそうなところから読んでいくという僕の読書スタイルには電子版は合わない。紙の方がいいわ。
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ヤラレました。FREEなんかより全然衝撃的!ダウンロード版でさっさと読んで、アマゾンの予約をキャンセルしたろうと思っていたんですが、書籍で再読&手元に置いておきたくなりました。マイリマシタ!
我々の業種においても、次のビジネスモデルのヒントに成りうる内容。
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初電子図書は「電子書籍の衝撃」になりました。さっそく明日にでも読んでみようっと。ちなみにiphoneユーザーです。
【先に買ってしまった場合のiphoneでの読み方】
1)本を買う
2)「D21 Book Viewer」をDL
3)iphoneで「D21 Book Viewer」を立ち上げる
4)右上の「Discover ~」をくりっくし
5)なんかどれでも本をクリック
6)右上のログインで購入と同じIDパスでログイン
7)マイページにいくのでDL(iphoneにDLされます)
8)でまた「D21 Book Viewer」に戻り
9)本が読み込まれますんで読める
ってわかりづらいわ!!挫折しそうだった。。。
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電子版をiPhoneで読みました。Viewerで読み込んだままの設定でなにもいじらずに読み進め、電車に乗っているちょこっとした時間を使ってちりも積もれば風に読了。横書きで読みにくいということもなかったし、一画面におさまる文字数が少なく、チャッチャとめくっていく感じはiPhoneにはとてもあっている気がしました。
電子書籍のプラットフォームができるまでになにが必要なのかざっくりわかり、そのこと自体は良かったけれども、そういう環境が日本で整うとは思うんでしょうか。個人的には、とても悲観的なので、プラットホーム構築のため消費者にできることって何があるのか、どういうことをしたら『後押し」になるのか。知りたかった。
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様々な視点を通じて、電子書籍が起こすであろう革命について論じておられます。
私がもっとも感じたことは、誰でもどんな事でも表現していいんだ!って事です。
表現の自由が保証されてるから当たり前の事ではあるんです。
しかし、その事実にあまりにも無関心でありすぎた。
今では、ブログ、ツイッター、SNS、uStream。これらのツールを使えば発信も宣伝も全てできる。そして止めの電子出版。
さぁ、本を書こう。そのためにも文章を書き溜めよう。
そんな欲望を否応なく掻き立ててくれる本です。
P.S.iPhoneで読んだのですが、読書するのにPAD要らないなぁ。なんて著者の力作を残念がらせる感想を持ってしまいました。寝床読書の最適解かも
あと100円とか安すぎた。なんか申し訳ない。読みやすい形態なので思い当たる事があれば度々読みたいと思ってます
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だいぶ「旬」を過ぎた感がありますが、読んでみました。
いろいろ書いてありましたが、引っ越さない限り、自分の中の電子書籍化は進まない気がしてきました。。。
ブログはこちら。
http://blog.livedoor.jp/oda1979/archives/3056004.html
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電子書籍って単に端末とプラットフォームの問題じゃないのな。出版社は編集能力活かしてエージェントに。取次はその資金力(あるのか?)活かしてプラットフォームを。んじゃあ、書店は?… んんんーやっぱどう考えてもいらないよな… 書店員個人はカリスマ書店員と言われるくらいのスキルのある人ならマイクロインフルエンサーになりうる?でも課金は?アフィか?ブロガー止まりw
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4/14までの110円ダウンロード・キャンペーンで購入。パソコン用ビューアをダウンロードしたうえで読んでみた。ビューア自体は簡素なつくりで、文字の少ない新書やビジネス書をサクサク読むにはいいが、文学作品をじっくり読むには正直つらいかもしれない。
内容はアメリカの電子書籍状況、日本へ導入する際のハードル、そして作者/読者共同体への影響など、バランスがとれていて実に分かりやすい。目からウロコの新しい情報は特にないものの、ケータイ小説を例にとったコンテクスト消費の説明には丁寧なリサーチが冴えているし、情報は信頼できそう。基礎的情報を押さえておくには十分な一冊といえる。
ところで、この本自体 twitter で情報が流され、講演会が開かれ、安価ダウンロード・キャンペーンが展開され……とコンテクストを意識した戦略をとっているのは明らかで、その辺ディスカバー21(D21)はさすが、と言わなきゃいけない。
でも、わざわざ出版社ウェブサイトからビューアをダウンロードしたうえで書籍を購入、っていうシステムがとにかく面倒のひとことに尽きる。このビューアでほかに読みたい本があるかといえば相変わらず自己啓発本ばかりが並んでいてウンザリさせられるし。110円のお試しだから投げ銭にも悔いはないが、これで1155円だったら正直まじめに後悔しただろう。
総じて、このまどろっこしさ、スッキリしない感じこそ、日本の電子書籍事情(目下)そのものなんだろうなぁという印象。
追記(4/13):
佐々木さんの Twitter をフォローすると、思考停止した旧弊な日本出版界への苛立ちがひしひしと感じられる。ひとりのユーザ/読者として私は佐々木さんの意見に全面的に賛成だし、それゆえ「当たり前だろ」と思ってしまうわけだけど、この意見は笑ってしまうくらい出版流通界には通用しないようだ。その点で、古い体質の業界に内部から揺さぶりをかけた、本書の意義はいや増す。
http://twitter.com/sasakitoshinao
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アイフォーンにダウンロードして読んだ、自分にとっては初めての電子書籍閲読。頁めくりは画面上で指を左にずらせばできる!やはり、感動でした。寝転がって最後まで一気に読みました。終章に近づくに従って、段々内容に感動。書き手の熱い思いが伝わってくる。紙でも読んで、線を引きたくなった。佐々木さんのすごいところは、一歩先を見ている部分。いつも何かしら独自の見解がある。それに魅かれて本を買う。その洞察力の秘密は哲学書を含め、たくさんの本を読むことだったという。たくさん書けるのもインプットが多いから。溜まった知見を外に出している。すべてをさらけ出しているかに見えて、一定の節度を持ってプライベート部分をオープンに。ニクイ!!まだまだすごい洞察が出るだろうな。好感。彼の本を読むと、希望を持って人生を生きられる。