紙の本
「おわり」は新たな「はじまり」――それがスタートライン。
2010/10/17 15:07
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アンソロジーブーム(わたしの中の)で調子づいて手に取った作品。ブームの去った今、「読んでみるか」と本書とハジメマシテの対面を果たしたとしても、たぶんわたしは手を伸ばさないと思う。
たかが本。人のように自分の意志で移動するわけはないけれど、本との出会いもタイミングだなぁ…と思う。
本書に収められているのは、一話8ページで構成された19編の掌編。そのテーマは、タイトルにもある通り『スタートライン』。
どの作品も「これ」といった衝撃はない(宮木さん除く)。描かれているのはそこらへんにある――誰にでも起こり得る――些細な日常(宮木さん除く)。だけどどのお話も、「終わりは始まり」といった雰囲気で、前向きな気持ちになれる。アンソロジーとして良くまとまっているのではないだろうか。
ハジメマシテは光原百合、三羽省吾、伊藤たかみ、津村記久子、中島たい子、藤谷治、中島桃果子の7名。中でも三羽省吾の『1620』と中島桃果子『はじまりのものがたり』がとても良かった。
『1620』は離婚して3年が経った「私」(女性)のお話。離婚した夫が望んだ1.6×2.0メートルのゆったり浴槽付きのマンションで6歳のアツシとの二人暮らし。ちなみに最愛のアツシの最大の関心はマジレンジャー。
この母子が浴室で交わす会話がとてつもなく可愛い。
「あのね、実はお母さん、マジブルーなんだ」
注:マジブルーはマジレンジャーの青色担当のこと。
(略)
「本当にマジブルー?」
「うん、かなり重度のマジブルー」
「どんな敵と戦ってるの?」
「冥獣ダジャレカチョーとかセクハラブチョーとか」
「変な名前。強い?」
(後略)
『はじまりのものがたり』の語り部は、お母さんのお腹にいる赤ちゃん。
とても不思議だわ。へんな感じ。私は思うのです。自分の娘の、孫として生まれてくるなんて。まだ、正確には「生まれて」ないのですけれど。
唯一といっていいほど異彩を放っていたのは、宮木あや子の『会心幕張』。
これは、ロックバンドのメンバーのお話。学生時代モテた「私」(男性)も30を過ぎ、バンド仲間の中で唯一の独身。そんな「私」にヨシオは言う。
「いまどきカスミ草柄のワンピースと麦藁帽子が似合って、海辺で追いかけっこをしてくれる女子などいない。そもそも麦藁帽子が似合う女って、冬はどうするんだ」
「冬は、ウサギの耳のついた白い帽子をかぶるんだ。そして少し大きめのピンクのコートから、赤くなった指先だけが出ているのが理想だ」
その数日後、「私」は「理想の彼女」と運命的な出会いを果たす…のだが、そこから物語は読者の想像の遥か上を行って、衝撃のラストを迎える。このラストにはホント、驚いたーっ!!やっぱ宮木さん、侮れない。
今まで読んだアンソロジー(ミステリ以外)の中ではかなり好きなほうかもしれない。たぶんわたしは、アンソロジーの中でも一作品の分量が少ないものが好みなのだろう。
『スタートライン―始まりをめぐる19の物語』収録作品
・光原 百合『帰省』
・三羽 省吾『1620』
・金原ひとみ『柔らかな女の記憶』
・恒川光太郎『海辺の別荘で』
・三崎 亜記『街の記憶』
・中田 永一『恋する交差点』
・伊藤たかみ『花嫁の悪い癖』
・島本 理生『ココア』
・橋本 紡 『風が持っていった』
・宮木あや子『会心幕張』
・柴崎 友香『終わりと始まりのあいだの木曜日』
・津村記久子『バンドTシャツと日差しと水分の日』
・中島 たい子『おしるこ』
・朝倉かすみ『とっぴんぱらりのぷう』
・藤谷 治 『その男と私』
・西 加奈子『トロフィー』
・中島桃果子『はじまりのものがたり』
・万城目 学『魔コごろし』
・小川 糸 『パパミルク』
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書店で金原ひとみの字を見つけて、買わずにはいられませんでした!
楽しく読めました♪好きなのはやっぱり、やわらかな女の記憶!
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+++
彼の浮気に気づいた花嫁、急に大人になった少女、別れ話をされた女、妻を置いて旅に出た男…。何かが終わっても「始まり」は再びやってくる。「変わりたい」「やり直したい」と思った瞬間、それがあなたのスタートライン。恋の予感、家族の再生、衝撃の出会い、人生の再出発―。日常に訪れる小さな“始まり” の場面を掬った、希望に溢れる掌編集。 +++
「帰省」光原百合 「1620」三羽省吾 「柔らかな女の記憶」金原ひとみ 「海辺の別荘で」恒川光太郎 「街の記憶」三崎亜記 「恋する交差点」中田永一 「花嫁の悪い癖」伊藤たかみ 「ココア」島本理生 「風が持っていった」橋本紡 「会心幕張」宮木あや子 「終わりと始まりのあいだの木曜日」柴崎友香 「バンドTシャツと日差しと水分の日」津村記久子 「おしるこ」中島たい子 「とっぴんぱらりのぷう」朝倉かすみ 「その男と私」藤谷治 「トロフィー」西加奈子 「はじまりのものがたり」中島桃果子 「魔コごろし」万城目学 「パパミルク」小川糸
+++
10ページほどの掌編が19も並んでいると、それだけでわくわくする。著者名を見ればなおさらである。そして期待に違わず、著者それぞれが持ち味を発揮して、一作一作はあっという間に読めてしまうが、読み応えのある一冊になっている。
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何回か読んだことのある作家さんには、
やっぱり短編からもその人の作風を感じることができて、
嬉しくなったりさすがだなって思ったり。
初読みの作家さんはなかなか、
個性までをこの短さから見出すのは難しい。
中島たい子さん、唯一、初読みながら
なんか読んでみたいと思った。
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いろんな“はじまり”をテーマにした物語。
だけど“はじまりか??”と思う作品もいくつか。
毎日はじまりはある。
ちいさかったり、大きかったり。
『帰省』光原百合
『1620(イチロクニーゼロ)』三羽省吾
『おしるこ』中島たい子
『とっぴんぱらりのぷう』朝倉かすみ
『魔コごろし』万城目学
が好き。
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19人の作家によるものすごく短い19の物語。
朝倉かすみ、伊藤たかみ、小川糸、金原ひとみ、柴崎友香、島本理生、恒川光太郎、津村記久子、中島たい子、中島桃果子、中田永一、西加奈子、橋本紡、藤谷治、万城目学、三崎亜記、三羽省吾、光原百合、宮木あや子
と、好きな作家さんだらけ。
とくによかったのは朝倉かすみさん、小川糸さん、島本理生さん。
だいたいが普通によいはなし、またはちょっと不思議な感じななか、ひどかったのは宮木さん。なんかひとりだけ下品で浮いていた(あくまで個人的感想です)金原さんがチンコマンコいうとおもしろいのにね。当の金原さんはまた精神科に行くお話でした、ワンパターン。でもラストはなんか先があってよかった
恒川光太郎さんと中田永一さんの作品気になりました
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現代の人気作家の短編集。
帰省の内容は私も似たような経験あり。短いの書くの大変そうだなーと勝手に思った。短いとそこまで作家の魅力でないかも。
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臆病になっていることを認めたあの日から少なくともマジブルーであることだけはやめることができたような気がする。
いろんなことが思い浮かんだ。大切なこともあったし、くだらないこともあった。昔のこともあったし、今のこともあった。結局、すべて流れ去っていった。
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物足りない。物語の質も量も。
物足りなすぎて、結局なに?って印象が・・・。
読み易いけども・・・★は、2.5
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知っている作家さん、知らなかった作家さんの短編が一気に読めるお得感ありありの一冊。スタートラインと言うお題でさまざまなスト-リーを読む事ができました。終わりがあって、始まりがあると言う内容が多かった。本当なら始まりからまたスタートするんだから、元気になれる気持ちが湧いてきても良いのですが、ちょい淋しい気持ちになったなぁ・・・。
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彼の浮気に気づいた花嫁、急に大人になった少女、別れ話をされた女、妻を置いて旅に出た男…。何かが終わっても「始まり」は再びやってくる。「変わりたい」「やり直したい」と思った瞬間、それがあなたのスタートライン。恋の予感、家族の再生、衝撃の出会い、人生の再出発―。日常に訪れる小さな“始まり”の場面を掬った、希望に溢れる掌編集(「BOOK」データベースより)
何気ない一日が、その後の人生を変えるスタートだったかもしれない。
でもきっとその事に気づくのはもっとずっと後の事で。
走って走って、ふと振り返った時にピカリと光るその一日を眺められるように、
今はただ、走り続けるだけなのです。
以下、覚書。
帰省 光原百合
1620 三羽省吾
柔らかな女の記憶 金原ひとみ
海辺の別荘で 恒川光太郎
街の記憶 三崎亜記
恋する交差点 中田永一
花嫁の悪い癖 伊藤たかみ
ココア 島本理生
風が持っていった 橋本紡
会心幕張 宮木あや子
終わりと始まりのあいだの木曜日 柴崎友香
バンドTシャツと日差しと水分の日 津村記久子
おしるこ 中島たい子
とっぴんぱらりのぷう 朝倉かずみ
その男と私 藤谷治
トロフィー 西加奈子
はじまりのものがたり 中島桃果子
魔コごろし 万城目学
パパミルク 小川糸
光原、恒川、宮木、中島桃果子、万城目作品が印象的。
特に中島桃果子さん。
この方の作品、初めて読みましたが、あたたかくてせつなくなるラストがすごく好みでした。
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「帰省」光原百合 〇
「1620」三羽省吾
「柔らかな女の記憶」金原ひとみ
「海辺の別荘で」恒川光太郎
「街の記憶」三崎亜記 〇
「恋する交差点」中田永一
「花嫁の悪い癖」伊藤たかみ
「ココア」島本理生 〇
「風が持っていった」橋本紡
「会心幕張」宮木あや子 (笑)
「終わりと始まりのあいだの木曜日」柴崎友香
「バンドTシャツと日差しと水分の日」津村記久子
「おしるこ」中島たい子
「とぴんぱらりのぷう」朝倉かすみ
「その男と私」藤谷治
「トロフィー」西加奈子
「はじまりのものがたり」中島桃果子
「魔コごろし」万城目学
「パパミルク」小川糸 〇
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久しぶりに故郷に戻り『ベッチャー』を見る「帰省」/光原百合
離婚した夫が望んだ大きな風呂で息子に恋愛相談をする「1620」/三羽省吾
別れようとする彼を引きとめ喫茶店で向かい合う「柔らかな女の記憶」/金原ひとみ
島にカヤックで来た女は椰子の実から生まれたと言う「海辺の別荘で」/恒川光太郎
始めてきた街なのに自分がそこに住んでいたように感じる「街の記憶」/三崎亜記
渋谷の交差点で手をつなぐと必ずトンネル効果が起こる「恋する交差点」/中田永一
十年以上前に別れた彼女と男女の友情について語る「花嫁の悪い癖」/伊藤たかみ
入籍した直後、一人で結婚をじわじわと実感する「ココア」/島本理生
公園でお弁当を食べながら高校時代の彼を思い出す「風が持っていった」/橋本紡
会社勤めの傍らのバンドのライブ後に可愛い子に声をかけられる「会心幕張」/宮木あや子
彼氏と別れた友達の新しい部屋を探す「終わりと始まりのあいだの木曜日」/柴崎友香
ロックフェスに向かう電車の中の女2人連れ「バンドTシャツと日差しと水分の日」/津村記久子
夫の墓参り帰りに近くの喫茶店でおしるこを頼み夫を思い出す「おしるこ」/中島たい子
81歳の自分から12歳の自分へのことづてを妄想する「とっぴんぱらりのぷう」/朝倉かすみ
独身最後の一人旅で小説を書く決心をする「その男と私」/藤谷治
泥棒を、警察を、立派なトロフィーで殴りつける「トロフィー」/西加奈子
母だった私が娘の息子のお嫁さんのお腹に宿る「はじまりのものがたり」/中島桃果子
二つの村の長になるために魔コを殺して食べなければならない「魔コごろし」/万城目学
飲み屋を経営する父の再婚話に先を越される「パパミルク」/小川糸
カバーデザイン:山本知香子
今をときめく作家さんたちを詰め込んだ超短編集。
しかし220ページに19作も収録しているから1話が本当に短くて
せっかく豪華なメンバーなのに活かしきれていない気がします。もったいない。
バツイチママと息子の会話が面白い「1620」
短いストーリーの中で殺人を犯した椰子の実が登場する「海辺の別荘で」
他の作品とつながりのある「街の記憶」
めまぐるしく変化する感情をユーモラスに描いた「おしるこ」
がよかったです。
「魔コごろし」は途中で読めちゃったけど
あまり万城目さんにこういう作品のイメージなかったから新鮮でした。
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ん、短すぎ。
まったく気分に浸れないまま、さっと終わってしまう。
あ、そ。そんな感じの話が多い。
もうちょっとボリュームが欲しい。
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とても短い短編集
“始まりをめぐる物語”なんだが
読んでいるうちに
あらためて終わりと始まりはニコイチなんだなと実感
作品によって当たり外れがあったが
結構好きな話もあった