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おとぎ話のゆくえ みんなのレビュー

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みんなのレビュー16件

みんなの評価3.9

評価内訳

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  • 星 3 (3件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
13 件中 1 件~ 13 件を表示

紙の本

おとぎ話の先には何が見える?

2010/07/27 00:12

10人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:はぴえだ - この投稿者のレビュー一覧を見る

作者の作品には、いつもふわふわとしたやさしさがあった。
しかし今作品では、それらが大分なりを潜めていて、シビアで、ストイックな印象を強く感じた。

今までの作品にはなかったキャラクター設定。どこか似ているふたりではない、まるっきり正反対の二人。はっきりとした光と影。
ストーリー展開的には、はっきりくっきりというよりも、あいまい。ささいなことが積み重なっていき、いつしかというようなパターン。
題材的には、物語の世界でよく使用されるもの、身分違いの恋――おとぎ話。それらのほとんどはラストでハッピィエンドを迎える。

もともとこの作品は、BLというジャンルの中にあるので、ラストは決まっているも同然。それにも関わらず読んでいて、本当にこの作品はハッピィエンドになるのか?という怖さがあり、事実、読み終えた今でも実のところ、幸せな未来が想像できずにいたりする。
BL=ファンタジーという図式が私の中では確立しているのだが、この作品はその図式に当てはまらないような気がしてならない。
ストーリーが現実に寄り添っているように感じられてならないのだ。


たとえ魂が上等であっても、生まれや育ちは選べない。
世の中には、両方上等なものを持って、生まれてくることもある。
理不尽だが、それこそが事実で現実。
けれども、それを打破する力は誰の中にも眠っているし、誰にでも平等に未来はある。
大っぴらには書いてあるわけではないけれど、物語の端々からそれらが感じられる。
失礼ながら、BL作品を読んでいて、このようなメッセージが伝わってくる小説はそうそうあるものではなく、とても稀有だ。


「おとぎ話のゆくえ」では、モラトリアムが描かれている。
主人公の片割れ、来杉。人と、自分側から関わることを徹底的に避けて生きている。流れに逆らわず、飄々と日々を過ごしている。自分以外には責任を負わず、何も選ばず、ただ流されるがままに。
それがもう一人の主人公・若様(湊)と日々を過ごしていく内に、変わっていく。来杉だけではなく、若もまた変わっていく。
必然的に惹かれあい、そして選ぶのだ、いつか壊れてしまう日がくるかもしれないとおびえつつも。
生まれや育ちは選べなくても、これからの未来は自分自身で選ぶことが出来るからこそ。確かに、自分で何かを選ぶということは責任を伴う。それでも覚悟を決めて選び取り、モラトリアムにピリオドを打つのだ。二人の選んだ関係は、それはそれはおとぎ話の結末のよう。先がどうなっていくかは、これから。モラトリアムの終焉をおとぎ話に乗せて描き切っている。

「ハッピーエンドのゆくえ」は、日常(現実)への回帰を語っている。
モラトリアム後、普通の日常に埋もれていく息苦しさ。ただそれこそが本来、誰かと繋がって生きていくという姿。自由ではなくなった苦しみ。それと引き換えに手に入れた温かいぬくもり。幸せと苦しみというのは、本当に半分ずつなんだということを描き出している。
選び取って、育てていき、普通に変換していく。その積み重ねが、おとぎ話を現実に塗り替えていくということ。幸せに浮かれている部分だけをではなく、苦しみさえも、対比をつけて両方をきちんと、冷静な視線で描き出している。

「共犯者のゆくえ」は、主人公二人を見守る話。
ここでの主人公(本編主人公の友人であり幼馴染)は、普通さを嫌悪しているが、普通に生きるということは、実は案外難しいことだと思う。
自分自身で選び取った、彼らとの共犯者という立場。
今の関係が変わってしまったとしても、それを受け入れる覚悟はできている。意外なまでの強さと、優しさ。
作品の終わりに、世界は閉じ切っているわけではないと教えてくれた。


BLは本来、恋愛小説なわけだから、激情だってもちろんある。
けれども、恋愛の熱だけではない、現実をもかすめていく。
それがこの作品の真骨頂なのではないだろうか。

物語は、自由だ。
読者がすきに選び取ればいい。

私は、今回はこういう風に感じ取った。

この書評だけ読むと、硬さを想像されるかもしれない。
けれども、作品中の文章の連なりには、ユーモアも散りばめられていて、読みやすく作られている。絶妙な匙加減。
言葉の選び方や、文章の運び方にも以前からセンスを感じてはいたが、今作品ではそれがさらに研ぎ澄まされていたような印象を受けたし、一歩踏み込んで作品を描き切ったことにより、深みを増しているように感じた。作者は新境地――新たなるステージを迎えたのではないだろうか。

純粋に、心から良い作品だと思う。

一人でも多くの人に、この作品が届いてほしいと、願ってやまない。

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おとぎ話とは・・・

2022/06/12 05:49

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:やじやじ - この投稿者のレビュー一覧を見る

ネタバレあり

まさにおとぎ話のようで
(優しいだけでなく、痛みもある)
作者さんのすごさを改めて知らされた作品

お殿様とか若様とかの存在をするりと認めさせ
視点が変化や
そのときのそれぞれの感情のゆらぎの描き方
散漫な風に見えて計算されているのだろう
するりと世界に入り込ませてしまう文章の秀逸さ
まさにおとぎ話のよう
でも、現実の痛みや生きづらさや葛藤を鮮やかに描きだしている。
そして、人は変われるのだということも
出会いで変わってしまうのだということも

若様の野衣湊は想定な感じだったけど
来杉隼人が思っていた以上にアウトローだった。
自分の周りから色々なものを削れるだけ削って生きている。
性質もあるのだろうけれど、そうしなければ生きていけなかったのだろう。
ある意味ストイックですらある。
まさに生まれも育ちも違う、「世が世なら」出会うこともなかっただろう二人
「身分違い」なのだ。
自分の生まれのために背負わされたものの「重さ」や「つらさ」を
するりと投げ捨てるように取り去ってしまう。
(しがらみや建前を持っていないからこその部分も含めて)
あるいは、自分の持ち得なかったものを「持っている」ことを「良かった」と思えたこと。

吾川から去るときの隼人のシーンでは涙がじわっときます。
それを選ばざるを得なかった隼人の気持ちも。
慎の連絡先はいつものごとく捨てたのに
プラスチックケースを捨てられなかった隼人の気持ちが痛いです。
さらにその後の隼人の舌の具合にはとても深いものを感じました。

おとぎ話の続きは・・・
隼人が今まで削ってきたものが捨てられなくなっていく様とか
若様が思った以上にやきもち焼きなのだとか
現実の澱もそれはそれで二人が続いていくのだという余韻とともに身に染みます
(大学卒業したらどうなるのかなぁって気になる)

余談ですが、慎と桜と喬雄の聖三角形のような関係は
作者さんのテーマのひとつがすでに存在していたのだなと
ひそやかに思ったしだいです。

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2011/03/30 02:10

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2011/08/31 18:04

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2013/04/15 21:34

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2014/01/25 12:25

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2020/06/03 22:56

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2024/01/23 00:18

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