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浮世袋(小学館文庫)

浮世袋 みんなのレビュー

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みんなのレビュー2件

みんなの評価4.9

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紙の本

藤の香の浮世袋

2010/12/02 14:39

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る

登鯉が、九紋龍史進を演じる坂東しうかのために「四紋龍」の絵を背中に描く話から始まり、登鯉が、坂東しうかから藤の香の浮世袋を貰って一緒に藤の花を見に行く約束をしたが、彼が亡くなったのでひとりで見に行く話で終わる。

それらの話の間に、登鯉は結核にかかったことがわかり、高野長英が潜伏先で役人に踏み込まれて連行される途中で不慮の死を遂げ、背中に鯉の彫りもののある夜鷹が評判になって、国芳と「御奉行」が探し回る。

この『国芳一門浮世絵草紙』シリーズは、登鯉が「御奉行」に送られて賭場から帰って来る場面から始まった。そして、この『浮世袋』でも、「御奉行」は、いつかのように、登鯉を賭場から国芳の家に送ってくれる。登鯉は「御奉行」に結核になったと打ち明け、国芳が聞けば大泣きするから内緒に、と言う。すると横笛を取り出して奏で始めた「御奉行」……

大泣きするかわりだったのかしら……と、私は思う。

登鯉は、聞き出したいことがあるような、聞きたくないような気がしたけれど、「御奉行」とお互いに、何も言わない。内緒にする約束で指きりげんまんするとき、「御奉行」のさしだした小指は震えていた。

国芳のもとには、幾次郎、米次郎、小円太という、三人の少年が弟子入りした。この小説には明治以後のことは書かれていないけど、幾次郎は落合芳幾に、米次郎は月岡芳年に、小円太は三遊亭円朝になるのですね……すごいね、みんな、お化けの絵とか話とかで有名になる人ばっかり。

国芳一門の年長の弟子たちが見ている「辻君細見」で、五十七才の、背中に鯉の彫りものがある夜鷹が、「上」とされていると聞き、それまで夜鷹の絵を描いたことのない国芳が奪い取って食い入るように見つめる。

おりしも、不忍池の鯉を取って食おうとした男たちが、背中に鯉の彫りものがある夜鷹に頼まれて鯉を逃がしたものの、傷を負った鯉は死んでしまい、そのたたりで彼らが死んだ、という怪談が広まっていた。

そして、国芳一家一門皆が、たたりで死んだ連中と同じ症状で病の床に!からだの節々が痛い、頭痛と鼻水が止まらない……って、これ、インフルエンザじゃん。

国芳たちも、これはたたりじゃなくて、流行病(はやりやまい)だと気づいた。国芳から先に治っていった。

ある夜、お使いに出た米次郎と小円太が、鯉の彫りもののある夜鷹に会ったと話した。国芳は飛び出していき、登鯉も追いかけていき、探し回ったけれど、会えなかった。登鯉に向かって、そして暗闇に向かって、国芳は、昔の話をした。

翌朝、鯉の彫りものがある夜鷹の死体が川で見つかった。死体はそのまま流された。

なんて寂しい話だろう。登鯉も、国芳も、「御奉行」も、そんな寂しいことにしたくなかったのに。どうしてそんな寂しい最期にならなくちゃならないの。いくら潔いったって、寂しすぎるよ。

浦賀に黒船がやってきた。この小説のなかにペリーの名は出てこないけれど、ペリーの艦隊である。押し寄せる見物人を乗せて漁船が出払ってしまって、魚河岸が困った。ここで新場の若親分の小安が大活躍、かっこいい。

登鯉は、小安に、国芳は実の父親ではなく、おとっつぁんが一番好きだから、一生、嫁には行かない、と話す。そして、病気を悟られないように急いで離れる。ひとりで立ち向かっていけるように、孤独に負けないように、と願いながら。

彼女は、背中に彫りもののある夜鷹のように潔く寂しく、死ぬつもりなんだろうか?

国芳は「七浦大漁繁昌之図」という、三枚続きの大鯨の絵を描いた。鯨に群がる捕鯨船の小舟を、娘たちが見物しているようすが、まるで黒船見物のように見える絵であった。

> 日本近海に黒船という異国の船が出没するようになって、それを人々は迷い込んだ鯨のような呑気さで見物に出かけたが、なにかがねじれていくような不安を……国芳の絵を求める人々は感じはじめていたのかもしれない。

黒船が去った後、国芳は「七つ伊呂波東都不二尽」という続き物の役者絵を描き、登鯉に、富士の絵を描けと言った。そのうちの一枚の「ろ」の絵が、この『浮世袋』の最後の章の『兵端』の扉に載っている。それも含めて「七つ伊呂波東都不二尽」は、["立命館大学の浮世絵検索システム","http://www.dh-jac.net/db/arcnishikie/default.htm
"]で見ることができる。検索画面で所蔵機関を「国会図書館」とし、絵師を「国芳、登里女」とするとヒットする。画題は、「七ツ」「七津」などいろいろなので、記入しないほうがいい。

当代の人気役者、九代目団十郎が亡くなり、続いて、坂東しうかも亡くなった。登鯉の描いた役者の死絵(しにえ)は評判が良かった。登鯉は絵ばかり描くようになる。その瞬間はつらいことを忘れられる。ふと、しうかとの約束を思い出して、ひとりで藤の花を見に行った。探しに来た小安が、ずっとおとっつぁんのそばで絵を描いていていいから、と言ってくれた。国芳たちも探しに来た。皆で楽しく騒ぎながら帰っていく。

ひとりじゃないよ、登鯉。寂しくなんかなるもんか。

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2015/07/13 16:36

投稿元:ブクログ

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