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思ったより面白く読みやすかった。
お父さんが神職で、長尾氏も年取られてから後を継ぐことを考えたくだりなど、へえ~と思うエピソードもある。
今も(近年特に?)バリバリ活躍している著者だが、若い頃から、やると決めたことは必ず実現する、時には力業ででも、というのがわかって、なるほどね~と思う。だって、60過ぎて、太ってきたから10キロやせよう、と決意して、そんなことまでホントに実現してしまうのだ。すごい・・・。
国立大学の法人化などは功罪あるところだろうが、学者としても一流で(しかも理系だが文系センスもあわせもつ)、ヘンな政治力だけじゃない、組織の長としての実行力も持つ人ってなかなかいないんではなかろうか、と思わせる。
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長尾先生の自伝です。幼少期から、学生時代、そして研究者としての40年間について、研究内容はもちろん、研究に対する考え方などが述べられています。研究者としてのあり方を考える上でも、大きな参考になります。
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戦前、神社は内務省の末端に属していたから、神主は今でいう国家公務員だった。
人間は倫理的には曖昧模糊とした世界に生きていて、そこに問題を発見し、解決している。自分もそういう世界を開拓し、これを学問として体系づけること、そういった世界を論理的に明確な構造の世界に持ってくること、そういう研究が大切なのではないかと考えた。
図書館は本という単位で知識を整理するところから、もっと小さな単位で知識を整理するところに向かってゆくのが電子図書館時代であり、これによってより人間頭脳に近い知識の組織化ができるのである。
情報は人間が作り出し、人間が利用するものである。従って人間の頭脳が情報を創り出すメカニズム、さらに情報が人間にどのように理解されているかということに深く究明すること。
情報通信研究機構の名前が示すように、これからは情報の研究、人と人、人と機械の間のコミュニケーションを円滑に行えるようにする各種の情報技術を研究すること、またそれを支える情報コンテンツに関する研究ウも行わねばならないし、コミュニケーションをする時の人間の心理的、頭脳的側面についても探究が必要というように新しい研究分野が広がり始めていた。
これからの図書館が力を入れるべきことは相談業務であろう、利用者がどのような資料を調べれば自分の課題が解決するかについてのガイドする仕事。
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2010 11/30読了。筑波大学図書館情報学図書館で借りた。
現国立国会図書館長・長尾真先生の自伝。
長尾先生がどのようなバックグラウンドと考え方に基づいて現在のようなプレゼンスを発揮されているか、というのに興味があって借りてきた。
思った以上に「自伝」であったが、面白かった。
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日本を代表する情報工学者である長尾真による自伝。本の帯には著者の反骨の人生と銘打たれているが、読後の素直な感想は、反骨というよりはむしろ雄大な大河のような著者の人生である。学者らしい恬淡とした筆致で描かれる、決断を迫られた際の著者の思考プロセスは、後進への指針となろう。著者は画像処理、自然言語処理などの分野に特に大きな足跡を残している。著者と同分野の研究者、学生のみならず、広く一般に薦めたい。
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この10月から大学の図書館長になったのを機に、前から気になっていた長尾さんの本を読んでみた。長尾さんは、画像処理、機械翻訳、電子図書館といった情報学の先端をリードしてきただけでなく、京大の総長、付属図書館をつとめ、そのあとは国会図書の館長を現在もつとめている人である。本人は「盲チョウ」以外の「チョウ」にはならないと言っていたようだが、学問だけでなく、行政においてもすぐれた能力をもった長尾さんのような人は希有である。おそらく、強引だとも思われたかもしれないが、長尾さんが先輩から教えられた「長と名のつく地位にいる人は」決断ができなくてはいけないということばを自ら実践してきたのだろう。ぼくも肝に銘じたい。長尾さんは情報学の先端を歩んできた人で、ほぼ10年おきにテーマを変えているという。そのテーマの選び方は、必死の思いで探すのだろうが、そのテーマに取り組み、それが熟成してきたら、その期間につぎのテーマを考え、新しいテーマに移るのだという。要するに流行にのるのでなく、流行をつくって、熟成させたあとは、あらたに流行をつくるのである。いわば開発型の学問ができる人である。本書で特に印象深いのは、「書物の解体」である。わたしたちは学生がコピペをやることを非難するが、わたしたちの知識が多くの先人のコピペではないかという。これまでの図書館は、本という単位をあつかっていたが、それが電子化されると、より小さな単位で知識を与えるようになるというのである。ぼくはこれを読んで、電子辞書を思い出した。電子辞書も個性をなくして、単に情報だけを与える装置になるのではないかと以前書いたことがあるが、それに似ているような気がした。
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文章からは、夕日の射しこむ部屋で一人回想と思索に耽る研究者の姿が連想された。つまり、長尾先生の本当の日々の姿は行間に捨象されてしまっている。長尾先生の人となりが文章に現れているのだろうが、同業者としては、捨象されてしまった部分こそ、実は知りたいところだったりする。前半を読み通すには、自然言語処理に関する知識がある程度必要か。
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【きっかけ】
「ベンチャー法務の部屋」さんの6月1日のブログで紹介されていて興味を持った。
http://www.ymmlaw.jp/cgi-bin/wp/?p=841
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まさに情報を読む力、日本の情報工学の礎を築いてこられた著者の思想に触れられる一冊。また、元日本図書館協会会長、前国立国会図書館長の推薦図書でもあられる著者の推薦図書にも出逢えるという意味ではお得感満載。
万博へ出展された顔写真データの取り込み技術や、顔認識、航空写真認識、翻訳技術、郵便番号読み取り技術、電子図書館システムなど、まさに今日のICTに至る半世紀強の変遷がそのまま著者の研究テーマとなっていたことに驚く。
個人的に興味深かったのは、航空写真認識において論文発表された「黒板モデル」。あるデータと別のデータの境界線における矛盾を認識し、全体として最適な意味付へ調整していくという方式は、まさに著者が幼少期から持っていたと考えられる、情報全体の調和に対する感覚の集大成といえると思うし、後の翻訳技術の基盤になっていると感じた。