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紙の本

外国人が日本に魅せられる場合、その核にはなにがあるのか

2011/04/30 01:21

11人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:佐伯洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 東日本大震災で心痛める日本人が、再認識させられたのは、どれだけ日本の過去とその時代に生きた日本人たちが優秀だったか。そして、その遺産で食いつないでいるのが今の日本である、ということだった。少なくとも私にはそうだった。いささか逆説的なイントロだが、この素晴らしい本の著者であるドナルドキーン氏、日本へ帰化という話を聞いてそう感ぜずにはいられなかった。

 キーン氏は、コロンビア大学で日本文学を教える日本研究についての第一人者であるとともに、おそらく最高の権威者であった。それはキーン氏がアメリカ人であることと、コロンビア大学教授ということに由来するかもしれない。

 本書はキーン氏が日本にあこがれた経緯からはじまり、いわばエッセイ的に自身の日本観的なるものを綴ったものである。その任意の2ページを読むだけで、いかに彼が日本を知ろうとしているか、またそれを動機づける打ち震えるほどの日本への愛情に満ち溢れている。
 それこそが88歳にして人生の最後を日本人として日本で過ごすことに決めさせたといえるし、本人もそういっている。地震で苦しむ愛する日本とともに最後を迎えたい。私は、その愛情がなによりもうれしく、最も琴線に触れる。と同時に、本書を読みなおしたところ、ひとつの恐怖が頭をよぎるのだ。大体いつもそうで、読む前から分かっていたことではあるが。

 つまり、これからドナルドキーンが新たに出てくるかということである。残念ながら今後の日本がこのまま推移するならば出てくるわけない。一部のアニメファンやモー娘ファンみたいなオタク連中だけになってしまう恐れが十分にある。
 キーンがあこがれ愛情を抱く日本とは、残念ながら過去のものになりつつある。キーンが憧憬する日本を突き詰めると(それは海外の日本ファンに共通であるが)、それはやはり武士道と天皇に行きつくと思う。日本という物体を切り刻んでいけば、おそらく最後の核に残っているのはこの2つであろう。それは各国異なるが、なにもないような国が実は殆どというのが真相である。ほぼすべての国は、国民がその大地から消えてなくなれば核には取りたてて指摘するものはない。というのは、それは民主主義だったり、独特の政治体制だったり、歴史だったりするが、そのほとんどは必ず類似品が存在する。例えば核を間違いなく持つのは、結婚報道にわくイギリスである。かの国は何と言っても英国王室である。確かに天皇家に比べるとその王政の歴史は極端に浅いのだが、それでも大英帝国は王を中心に世界に影響を及ぼしてきたのであり、あれはまさに英国独自独特あるいは起源といってもいいほどの根源性を持つ。
 日本というのは、何といってもまず天皇陛下の存在が大きい。キーンの天皇観については本書よりも別書に滅茶苦茶詳しいが、キーンの語る文学や能の世界、茶、花・・これらすべては世界にある文化の一形態にすぎないといえばすぎないのだが、そのすべての底流に流れるのが、武士道だと分析することが多い。李登輝や国家の品格の作者ももちろんそうだが、リクワンユーなども同様の見解であった。これは日本人にはむしろ分かりづらいのが、その底流にはやはり武士道がある。武士道の内容については、新渡戸稲造の「武士道」にそのエッセンスが書いてある。ルーズベルト大統領はあれに魅せられ子供たちに配ったほどの大名著である。

 本書やこの書評は文化論を詳細に語る場面ではないのでこれ以上は控えるが、要は武士道という過去の遺産が日本の今の支えになっていることは間違いない。多くの日本信奉者を生み、尊敬され、それが電化製品などの背後のブランド力に大いにつながっている。そして、戦艦大和の技術は造船やら電車・カメラなどに大いに役立っている。当時の日本というのは、優しさの中に厳しさがあり、「世界で最も誇り高い民族」とアメリカに感嘆された国民だったのである。竹之内豊主演の太平洋の奇跡だったかなんかの映画でそのことが紹介されている。
 それが今はどうだ。悲観論は好きではないが、日本人の精神は真に貧弱そのものになってしまった。スピリットの消滅だと思うが、それは要は武士道の消滅ということである。日本人らしさを失ってしまったのだろう。

 もし若き日、キーンがみた日本が今の日本そのものだったらどうだろう。おそらく素通りしていたと思えてならない。そのことを100年前に日本の医学の基礎を作ってくれたドイツ人医師ベルツは大好きな日本への深い愛情を込めてこう的中させている。「日本人が日本人らしさを失えば、そのときは日本よ、さようならである」とこんな感じに。そういえば、アインシュタインも同じような趣旨の発言をしているし、もっといえば小泉八雲もそうだ。
 最後に、私の専門分野である法学の分野では、ボアソナードという日本民法の基礎を構築しようとした人物がいる。この人は、その後日本に魅せられ、その希望ある生涯を日本の国際法顧問として日清戦争などでも本当にまじめな日本のために法学者として大いに費やしてくれた日本の弁護人であった。日本は彼に感謝し、パリに帰った彼にかなりの金額を毎年給付し続けていた。その彼も、やはり同じような見解である。
 じゃあどうすればいいと言われれば、要はまさに答えは本書にある。本書からは日本的とはなにか。そして、それを失うならば、そもそも本書は生まれない。日本は日本らしさを大ナタを振るい、取り戻す時期に来ている。本書を読み、素直に喜ぶだけの浅慮な方はそういないと思う。
 

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紙の本

日本文学研究に生涯をかけたドナルド・キーン氏の興味深いエッセイ集です!

2020/08/20 10:58

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

本書は、アメリカ生まれで、日本文化・文学をこよなく愛され、生涯において日本文学を研究してこられたドナルド・キーン氏のエッセイ集です。同書では、はじめて日本を訪れたときから60年の歳月が流れ、ヨーロッパに憧れていたニューヨークの少年にとって、いつしか日本は第二の故郷となったことが語られます。京都や東京の思い出の場所、そして大切な友人たちの思い出などです。日本文学研究に人生を捧げた著者による、変わらないものへの愛情にあふれた自伝的エッセイ集です。同書は、「私の大事な年」、「光と影のスペイン」、「北京の春」、「ポーランドにリラが咲く頃」、「五十三年ぶりのウィーン」、「清き水上尋ねてや…―京都・鴨川」、「わが街、東京」、「かけ橋としての人生」、「ニューヨークの近松門左衛門」、「私の自己証明」、「定説と自説の間で」、「文学と歴史の境界線を越えて」、「東北に対する私の偏見」、「漢字が消える日は来るか」、「学者の苦労」、「私という濾過器」、「作品で世界と会話―安部公房を悼む」、「御堂筋を歩いた思い出―司馬遼太郎氏を悼む」、「友人であり恩人―嶋中鵬二氏を悼む」、「良い友達を失ってしまった―永井道雄氏を悼む」、「私の好きな空間―歌劇場」、「ケンブリッジのキャスリン・フェリアー」、「わがマリア・カラス―『トスカ』第二幕LD化に寄せて」、「メトロポリタンに<還暦のドミンゴ>を聴く」というテーマで興味深い話が次々に語られます!

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紙の本

読んで良かったです。

2023/09/21 17:44

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:satonoaki - この投稿者のレビュー一覧を見る

キーンさんは、さまざまな著書で外国から見た日本にも触れ、外国と日本との「かけ橋」だと強く感じていました。
この本にも「かけ橋」が出てきます。
それとともに、私と日本文学史との「かけ橋」でいてくださるのだと思います。
これまでの素晴らしい日本文学のうち、私が読んだのはほんの一握りにすぎません。
外国文学までなかなか及びませんが、日本文学はもっと読まなくては!
残念ながら、オペラは、よくわかりません。

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2012/03/06 19:48

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2012/03/19 01:12

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2014/10/22 17:48

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