紙の本
被害者が微笑んで死んでいた理由がいい
2010/10/21 17:34
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
1歳の幼児誘拐事件から始まる連作短編集。
1ヶ月たっても誘拐された娘が帰らないまま
母親の千賀は仕事に復帰します。
しかし「おたくの真由ちゃんが死体で発見されました」
といういたずら電話に悩まされる「談合」。
次に、幼児誘拐事件の目撃者である鈴木航介が殺されます。
その同僚で、小学校時代からの友人である久保和弘は
彼に、会社の金を着服していることを突き止められていました。
死ぬ前に、支店長に内部告発されたのではないかと
疑念を抱く「追悼」。
この2話はそれぞれにミステリーをはらんでいます。
さらに次の「波紋」では、真由ちゃん誘拐事件担当の女刑事、
渡亜矢子が、このふたつの事件の繋がりと犯人を捜し当てます。
しかし、第4話「再現」で大どんでん返しが待っています。
真由に関しては突っ込みどころ満載なんですが
ストーリーはよくできています。
元刑事が上手に登場して、伏線になっていますし
千賀夫婦も精一杯生きようとしています。
和弘も生きなおそうとしています。
特に、亜矢子の存在が切なくていい。
恋する女は馬鹿だね。でもそれがいい。
そして、殺された被害者が微笑んでいた理由が
最期に明らかになります。
フィニッシングストロークではないですが
同じくらいの印象深さを残します。
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一人娘・真由が誘拐されて一か月、安否のわからないまま、白石千賀は役場の仕事に復帰、溜池工事の請負業者決定を控えていた。そんな千賀にかかってくる「おたくの真由ちゃんが死体で発見されました」といういたずら電話の主とは・・・・(第一話「談合」)。真由ちゃん誘拐事件から2か月後、同じ町内に住む24歳の会社員・鈴木航介が死体で発見された。同僚の久保和弘はその1週間前、経理部員である航介から不正を指摘されていた。そして、航介の携帯にいまも届くメールの中に衝撃的な一文を発見する(第二話「追悼」)。渡亜矢子は真由ちゃん事件の犯人を追っている刑事。無事に戻ってきた幼児から証言を引き出すのは容易ではなかったが、工夫を重ねて聞き出した犯人像に近い人物を探し当て、ついに逮捕にこぎ着けるが・・・・(第三話「波紋」)。そして最終話、すべてのエピソードが1つの線になり、事件の背景にさまざまな「救い」があったことを知る(「再現」)。一つの事件が起こした波紋は「別の新しい事件を引き起こし、その新しい事件がまた波を立てる。波は当事者のみならず、周りの人々までをも飲み込み、翻弄していく」──
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何か事件があると、必ずそこには「何かをまたは誰かを守ろうとして動く人がいる」ということで、事件を違う側面からながめてみた小説である。
確かに世の中は単純ではないんだよな。いろいろな人が関わっているから、いろいろな思惑があって思わぬ方向に進んでいってしまうことも多い。
読み終わったときには、東野圭吾の「新参者」とちょっと似た感じを受けた。とはいうものの、あのおばさんがあれだけ頭が働くというところにちょっと違和感を感じたけれど、まあ母の強さということで受け入れるか。
主人公の女刑事は、いい味出しているなぁ。異動で他の地区に行って、また何か他の事件解決に登場して欲しいような魅力あり。
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一つの誘拐事件と一つの殺人事件を様々な関係者の視点から描く連作短編集。エピローグまで、引き込まれるように一気読みしたが、エピローグで物語の真相が分からなくなり、残念ながら、消化不良。
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「傍聞き」で日本推理作家協会賞を受賞し注目を
浴びる作家さんの受賞後の作品は短編連作のスタイルを
とったひとつの作品と言える秀作。
幼女の誘拐事件を発端に、その事件を多角面から描きつつ、
その面に接した人間をそれぞれの視点で描く事で
この波紋という言葉通りに、周りの人間が
巻き込まれていく様を描いています。何とも言えない
物悲しさを含んだストーリーと人物描写が非常に上手い。
バタフライ・エフェクトの様に一つの事件が引き起こした
結果の裏では、その事件によって起きたまた別の物語が
潜んでおり、その物語の裏にも...と言ったようにまさに
「波紋」のように広がっていくのは、こうした小説だけでなく
実際の事件に於いてもそうなのかもしれないだけに、リアルに
感じられる作品でした。
このどんより感は前作でもそうですが、決して後味の
良い読後ではないですが、やはりこれで良かったんだ...
という哀しいけれど正しい結末なのも逆に後を引く作品。
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まさしく波紋。ひとつの事件から派生するさまざまな出来事。ある話で端役と思われた人物が次の話では主人公となる。どの話も人を思う・守る気持ちでいっぱい。よくもわるくも。
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誰かが誰かを傷つける・・・そんな事件の裏側には、ときに誰かが誰かを守ろうとする物語が潜んでいる・・・
この言葉を頭に入れながら読み進めていきました。
1つの事件が起こした波紋によって、別の事件が起こるその理由は切なくて物悲しいけれど、それがメインになってしまって、肝心の事件の真相がわからなかったことがちょっと残念でした。
亜矢子の心情を思うと、なんともやるせない気持ちになりますね。
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最初はあれ、これで終わり?と思ったけど連作なんだね。
上手く繫がっていく様は線だけれど静かに広がっていくのはまさに波というよりも波紋。
おじさんおばさんの入れ替えはお見事でした。
実際には無理だと思うけど(苦笑)女刑事さん、まんまと罠にはまってしまいすぎと言うか、男を見る目がなさすぎと言うか。
まぁコンビ的にはいい感じなので続編が出たら読んでみたいかも。
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連作短編。うまい具合につながっている。でも、おばさんの仕掛けはないな~
2011.10.7
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一つの事件が起こした波紋は、別の新しい事件を引き起こし、その事件がまた波を立てる。波は当事者のみならず、周りの人々までをも飲み込み、翻弄していく-。期待の俊英が紡ぐ「救い」の物語。
「スラスラ読ませてしまう筆力はただ者ではない」と感じる一方で、連作短編集のような作りの本作は「ちょっとご都合主義的過ぎるのでは」とも思われた。不思議な魅力のある作者には違いないが…。
(B)
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連作短編。
同期のアイツは、横領のことをうたってしまったのかーヒヤリと汗が落ちる「談合」。娘が消えた両親の苦悩を描く「追悼」。一見バラバラな話が、女刑事・渡という共通点を見出す。渡は付き合い始めたばかりの、年下の彼に夢中。が、女児失踪事件を追ううち、彼に辿りついてしまうー。
欠片を集めたら、最後はドカン!と大オチをつけて欲しいのだが、そこは物足りない。短編ごとの小オチのほうが小気味良いので、長編には向かない作家さんなのかもしれない。それでも最近流行りの作家よりよほど読ませるので、ハマれる。
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ずっと暗くて重い雰囲気。でも嫌な感じではない。なんでかな。何章かに分かれて、それぞれ違う視点でのお話になってるからかな。
しっかり書きこまれて練られたミステリー。久しぶりの感覚でした。最近ちょっとかるい本が続いてたので。。。
初めて読んだ作家さんです。知人のおすすめで。機会があったら次も読んでみたいです。
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ある幼女誘拐事件をめぐった、連作短編、っぽいかと思いましたが、長編ですよね。最初はあまり深く考えずに、なんとなーく納得していたのが、最後にするするっとまとまって、なんだか満足感のある読書でした。
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「傍聞き」が、書店で好評で、読んでみて短編としての完成度が高かった長岡弘樹。
今回は最新の(というか3冊しかまだ出ていない模様)短編集。
「愛しい人を守りたい」人たちの物語。
今回は、「傍聞き」と違い、連作短編集。登場人物が重なり合う。
最後に「微笑」ながら死んでいた人の謎も解き明かされる。
他の人が書いていたように、女性刑事と男性が恋人になることに違和感があるが、それ以外は引っかかるところも無く、暖かい、読後感の良い短編が多かった。
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面白いし、伏線がどうつながるのか興味深く読めた。
ただ文章がわかりにくい。結論も流れからおおまかにはわかるけど、細かくはどうなったの??と思ってしまう。
うーん。。。