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うまい。日本推理作家協会賞を取っただけあり、ホラーと推理小説の上手いクロスオーバーである。
読者は文章を時間を追って読まねばならないところを逆手に取った作品。最初の状況からよもやこんな結末になってくるとは予想だにできない展開である。
女性との関係、女性自身の姉妹関係、性交関係、殺人関係 等々。これでもかこれでもかというどんでん返し。
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この短さでここまで秀逸なミステリー・ホラーはなかなかお目にかかれないのでは。
不条理過ぎない設定が絶妙。
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表題作は日本推理作家協会賞受賞のわりにはさしてインパクトなし。近未来老人社会モノの「あげくの果てに」はそこそこ。でもゾンビものの「最後の言い訳」が絶妙。
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曽根圭介の特徴のひとつに短編という限られた紙幅では控えられることが多い視点や場面、時系列のシャッフルを多用しスピーディーな展開で読者を煙に巻きながら伏線を回収しオチに持って行く構成が挙げられる。本書もその特徴を活かした作品が3つ並んでいる。
『熱帯夜』
表題作。日本推理作家協会賞短編賞受賞。
ヤミ金に手を出しやくざに捕まった夫婦と、二人の別荘にたまたま遊びに来ていた主人公の三人とが遭遇する一夜の恐怖と、峠道で見知らぬ男を轢き彼が持っていた大金を着服しようとする女の話とがクロスしながら、最後は一本の線となって収束する。
“タイムリミットは2時間。美鈴とボクをヤクザの人質にして金策に走った美鈴の夫は戻ってくるのか?ボクは愛する美鈴を守れるのか!?緊迫の展開、衝撃のラスト。”
このあらすじは狡いな。
『あげくの果てに』
近未来日本小説。少子高齢化が進んだ日本では老人徴兵制が敷かれ、外国との戦争に送り出していた。老人を保護せよという団体、老人にばかり利権が集中して若者は仕事もないと暴動を起こす団体。時代の中で翻弄される老人、中年、少年の三人が語り部となりながら、それぞれの物語が最後に辿る結末は……。
一種のディストピア物でもあるSF小説。ただページ数の関係と語り部によるドラマ部分に筆を割いているため、社会背景その他の書き込みは多くない。それが最後でオチにも繋がる情報の伏せ方になってるんだけど。
『最後の言い訳』
これ笑った。
蘇生者(ゾンビ)が闊歩する近未来日本を舞台に、役所で働く主人公が語り部となり現代、蘇生者が誕生する以前の回想、蘇生者が人を襲うようになってからの回想の三パートで構成される。
前二作が語り部を二人ないし三人設定したのに対し、こちらは一人だがその分、話を三つに分け一人の口から語らせる。時系列で考えると「おかしいな?」と思ってた部分が最後きっちり回収される。
この作品のツボはタイトルにもなってる言い訳ですね。
主人公は小学生時代に愛ちゃんという女の子に恋をします。初恋です。愛ちゃんは背が小さいけど、そのコンプレックスを撥ね除けるため空手に勤しみ、男子と喧嘩しても蹴り飛ばしてしまう元気な女の子。主人公はデブで気弱ですぐ言い訳を考えては愛ちゃんに怒られていました。
幼い言い訳の他、現代パートでの言い訳、蘇生者誕生以後の世界で繰り返される言い訳も絡んできます。
特に蘇生者誕生以後の世界で繰り返される言い訳は著者のブラックユーモアが利いた風刺的な物で、実在の問題や団体、個人を思い起こさせます。
蘇生パンダが生パンダを食い殺した事件について中国政府は「中国を出たときは問題なかった。日本でゾンビ化したんだ」と言う。確か毒餃子事件の時、そんなこと言ってたような。他にも読めばあの事件かってのがあります。
新聞記事やインタビューの体裁でときおり挟まれるそれら「言い訳」がラスト四行の言い訳に繋がってオチる。
『熱帯夜』と『あげくの果てに』は少し技巧に走���すぎて上滑りしてる感もある。技巧に走ってると言えば『最後の言い訳』もそうなんだけど、これは読んだ後また読み返したくなった。最近こういう話に弱くなって駄目っすわ。
初恋の味は遠くなりにけり。
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藤子・F・不二雄のSF作品を彷彿とさせるような切り口は悪くないし、構成力も水準以上だとは思うが、いかんせん展開、オチが普通。
もしかしたら期待値が高過ぎるのかもしれないが、ミステリーを標榜する(してなかったらごめんなさい)エンターテインメント作品としては、もうひと頑張りしてほしい。
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たまにはホラーでも読むか、と表題に惹かれて借りてみたけど、ホラーというよりはブラックでした・・・短編にしては面白かったけど。もっとゾクゾクするようなホラーが読みたかったなーw
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久しぶりに、曽根圭介はヒット。3編の短編集だが、はずれなし。
■熱帯夜
どんでん返しの回数にびっくりしました。
もうね、どん底とスッキリが繰り返しすぎて…
■あげくの果て
高齢者問題。ラストはまぁ、続いてもいいんじゃない?とか思うが…設定のディテールがすごい
こんなことにならないように、みなさん政治に参加しようね。
■最後の言い訳
壮大な夢オチばりに、そこまでひっぱってそんな言い訳すんなよって、大、大、どんでん返しおち。
すぐ読み返しますよこれは。
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この筆者の時系列や人物の視点を書き分ける技術は秀逸だと思う。
また、ラストに必ずひと仕掛けけあって読んでいて飽きがこない。
そして、何よりも素晴らしいのがアイデアの意外性。単に荒唐無稽なだけでは終わらず、リアルな情報をちりばめることで現実味を持たせることに成功している。多少グロテスクな部分はあるものの、辟易するほどではない。
どんな人にでも心から勧めたい一冊。
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単行本「あげくの果て」が読みたくて読みたくてでも我慢していたらぴょろっと文庫で出ていた。タイトルが変わっていたから気がつかなかった!
「最後の言い訳」が好き。おまえなーって思う。
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エゲつない表紙でお馴染み(?)の「あげくの果て」を「熱帯夜」と改題し文庫化したもの。内容は「熱帯夜」「あげくの果て」「最後の言い訳」の三篇。
なかでも、近未来SF「あげくの果て」がずば抜けて良かったが、個人的(年齢的)にシャレにならない題材で、その強烈なブラックコメディっぷりにくくく、と笑いながらも背中に汗したりして…(苦笑)
もちろん、小説ならではの展開が冴えるサイコミステリ「熱帯夜」も、世相をパロったゾンビギャグが炸裂する「最後の言い訳」も構成・物語共々ハイクオリティなブラックコメディで大満足の一冊。
ああしかし、俺もいずれは「難局二号」で東シナ海に投入されるんだろか…生ける軍神…おおヤダヤダ(笑)
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ミステリというより、ブラックユーモア・エンタテイメント。話の展開にスリルとスピードがあって面白い。ゾンビの話も気持ち悪いが、いいところでエンタテイメントに仕上げている。ホラー小説を得意とする作家の本領発揮。
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ホラーとミステリの融合。その言葉通りなのですが、やはり曽根圭介の作品群は、ホラーの色が濃い気がする。しかし、真っ当なホラーではなく、こう、ぞわぞわっとさせるのではなく、ぬめぬめっと背筋を這い回る半透明の温いスライムみたいな作品群というべきか……。気持ち悪いけど気持ち良い……そんな感慨を抱く。本書に収められた三編も、それぞれが、ぬめぬめっとした柔らかくて気持ちの悪い味をした物語。だけど、凄くそれが良い! なんてなってしまった私は既に曽根中毒に陥っているのでしょう。
表題作の『熱帯夜』にはやられました。ここまでスパーンと上手いこと書き切ってくれると、本当に清々しい気持ちになります。クスリと笑わせながら、不条理の味が滲み出ており、また悉く予想を裏切ってくれる展開は「最高っ!」の一言。もう、読んでて何度ニヤついてしまったことか。ホラーなんですよ? ミステリーなんですよ? なんでこんなにニヤニヤしてしまうんだ……不思議。だけど、それが曽根圭介の魅力なんでしょう。多くは語りませんが、本書は絶対に多くの方に読まれるべきです。『あげくの果て』と『最後の言い訳』の後味の悪さも何ともいえない。もう作風がバッドエンドだから、暗雲立ち込める方向へとどんどん突き進んでいくんですけど――どういう結末を迎えるのか気になって、どんどん読み進めてしまうんですよねえ……。凄いです。【263P】
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3本の短編集が掲載されていますが、もう少し練ってから掲載してほしかったです。賞を取った短編も、あっさりしすぎて読み応えがいまいちでした。オチが読めてしまうトリックを「常識を覆すトリック!」などと帯で煽らないでいただきたいです…
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わしゃこの人好きなんじゃー。話が黒い、面白い。でも地味。立ち位置も地味。あ、中身に触れてないや。3つの短編です。
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どの作品も、意外性のあるオチが楽しめた。
特に、代表作の「熱帯夜」は、オチの意外性だけではなく、無駄と破綻のない騙りのテクニックがとても秀逸だった。
「あげくの果て」はオチの予想がついていたが、個々の決断が皮肉な結果を生む過程と、各所にちりばめられたブラックユーモアが面白かった。ただ、もう少しコンパクトにまとまっているほうが読みやすいように思えた。
「最後の言い訳」は、「あげくの果て」以上のブラックユーモアが楽しめた。特に、タイトルが良かった。